● Report No021
/ 11月24日
『色素』
新二千円札の偽造防止インクに使われたのは二酸化チタンで被膜された雲母や有機溶剤に溶解するラテント顔料だ。これが情報機器、印刷などの分野で欠かせないキーマテリアルの機能性色素である。例えば他に
近赤外吸収色素あっての 光ディスク CD−R カラーフィルターあってのLCD 有機ECあっての ELD がある。こうやって眺めてみても、ハイテク時代の陰(?)の主役だと分かる。かつて色素はあくまでも色づけの為であり、端役に過ぎなかったが、自ら特徴を主張すると主役にもなり得る時代なのだろうか。
人にも言えそうなことで耳が痛い。。
『 海洋深層水
』
水深250m以上の深さでは、その海水は表層水に比べて、低温性、富栄養性、清浄性の特徴を持ち、殊にその栄養分を利用する養魚システムや食品原料にその成果が見られる。とは言うものの、既存の技術による分析では富栄養成分となる真の溶解組成物の姿はつかみ切れていない。あまりにも複雑、複合成分ゆえに判然としないからだ。海水成分の研究も旧日本専売公社が昭和47年を最後に止めてしまい途切れてしまった。平成8年に、科学技術庁海洋開発センター主導で、官民挙げての深層水利用研究会が組織され、当初の中心テーマは“成分分析”だった。
メンデレーエフの周期率表の全元素が海水に溶解しているし、それも有機・無機の形で複合しているとなると分析は困難だろう。テーマ設定はもっともだ。生物は何億年もこの海水中で暮らしてきたのをみれば、その重要性は容易に判別できる。
● Report No020
/ 11月17日
『ソフト技術』
ソフトアイスクリーム、コンピュータソフトに使われているソフトは、これらとは別に人に優しい、と言うニュアンスもあります。環境問題の高まりと共にソフトの重要度はハードに上昇中。ここに二つのソフト型プロセス技術を紹介します。
・ソフトリソグラフィー
事故組成化膜(SAM)で既報の如く、シリコンゴム(PDMS)を、版や型材として利用する技法はマイクロパターン(金属、ポリマー、セラミック)の形成や、マイクロ成型物を低エネルギー消費プロセスで得られ、μ(ミクロン)、ナノテク時代に好都合であります。
・ソフト溶液プロセス
従来までは、高機能セラミック材を作るには、焼成という膨大なエネルギーを必要としていたが、生物の反応体系を模倣した常温、常圧、水溶液系を基本とする水熱プロセス、水熱電気化学プロセス等の研究が進み、機能性セラミックの創出が始まっている。
上記、二種のソフトを組み合わせたダブルソフトプロセスによって何か生まれそうに感じますが、如何でしょうか。
『 プラスチック的木材
』
プラスチック木材粉を融合することは古くからあったが、近年、環境問題、強度、耐水性の点から再評価され注目されている。最近では木材粉が助剤としてのフィラーの立場(主役)担って、プラスチック成分は成型助剤として扱われるようになってきている。また、中空構造物も押出技術で出来るようになり、リサイクル性も勿論、ポリマー成分に生分解性グレードを用いれば完全に環境に優しい材料となる。木材粉の他に天然繊維として栽培し易く、分離しやすい亜麻繊維を、それもヤーン紡糸工程で出る産業物ショートステープルの活用も、自動車ボディー部材に展開が進んでいる。
さすれば、サトウキビの絞り粕、バガスの利用研究も当然ありましょう。射出成型プロセスでの利用はこれからか?
● Report No019
/ 11月10日
『金属
+ ポリマー系材料』
金属 +
ポリマー系射出成形材に似たコンセプトで低融点合金粉末とポリスチレン粒子として混合し、熱プレスすると条件により特異な性質が顕れてくるとの研究レポート(中国)が出てきた。金属の体積率が同一でも、成型温度によって電気抵抗が大幅に変わってくるとのこと。材料研究の分野では少々盲点だったかもしれない。これを更に発展させてプレス印刷、射出圧縮、成型などの工程にかけた場合はどうなるだろうか。また更に合金系、ポリマー系の種類を変えたときはどうなるか。
既に開発レースは始まっているのだろう。 日本においては(元)東大教授の中川先生の開発で、分散印刷に銅を用いて、0.001Ωp以上の導電性成型物が得られている。
『 光と物質
』
光と物質の関わりを東大の堀江先生は次のように分かり易く説明している。
【光】
1. LIGHT(光)
2. PHOTO(光化学:photochemistry 光物理:photophysics )
→ 光による物質の変化
3. OPTO (光学)
→ 物質による光の変化
事例
光化学・・・感光性レジン、光触媒 など
光物質・・・EL、PC(光導電性)など
光学・・・・光ファイバー、光導波路、液晶 など
これらの機能を複合化したものにフォトニクス材料がある。分子レベルのフォトニクス、ナノパターンの具体化も遅くないだろう。
● Report No018
/ 11月02日
『イオンによる表面改質』
電気化学的には普通ウェット状態で用いられるのがイオンであるが、物理学的には真空中でドライの状態で利用されることを指している。原子や分子をイオン化して真空中で加速すると1万度〜数百万度相当のエネルギーに相当し、これも自由にコントロール出来るので、イオンの持つ電荷効果と併用すると、材料の表面から内部にかけてその性質を変化させられる。原理的にはイオンビーム法、プラズマ法がある。物質に対して、衝突させるイオンのスピードによって表面状態は変わる。
・低スピード・・・物質の表面にイオンが降り積もり、薄膜を形成する。
・中スピード・・・物質の一部の原子と入れ替わり表面改質となる。
・高スピード・・・物質の原子/原子内にイオンが潜り込み、イオン注入の形となる。
一つの物質の選択的部位に、スピードとイオン種を変えて衝突させると、無限の機能的複合材料が出来る。これは、夢のニーズにつながるテクノシーズになるかもしれない。
『 電気石の不思議
』
常温(高温)超伝導セラミックは人工的鉱物の不思議であるが、天然鉱物ではトルマリン通称電気石と言うものがある。組成分は硼硅酸アルミで産地は中国、ブラジル、米国、ロシアなど広く分布してあり、石英より酸、アルカリに強い耐性を持つ。ピエゾ電気(圧電気)とピロ電気(焦電気)の帯電現象を有し、永久電極性結晶構造もあるようだ。このセラミック粉末の抗酸化力、還元力を利用しようとポリマーと組み合わせて様々な健康グッズが市場に出回っている。産業用では水系の衛生保全システムへの応用もある。電気石のつくる界面活性をもつ水は、表面張力が低いだけでなく、氷点が3℃下がったり、水の蒸発速度が10%増加すると言う。また、植物の水の吸上速度も2倍になるという不思議さもある。ナノレベル級超微粉状態では作用秩序がどうなのか知りたいところだ。粒粉とは全く異なる特質がありそうな気はするが・・・。
● Report No017
/ 10月26日
『ポリマーへの電極形成』
ポリマー(テフロン、芳香族ポリイミド)に銅(Cu)をパターン付けする方法として、レーザーメッキ法がある。これは、ポリマー表面の硫酸銅溶液にArFレーザー光を照射することで、無電解メッキの核となるC-O-Cu結合の形成を計ることによって行われるものである。この方法にレンズを組み込んで投影露光すると、金属原子のパターニングが出来る。このような技術は、機能チップの小型化の鍵となるかもしれない。
『 ナノ(nano)パターニング
』
簡単にナノ構造を形成する方法として注目を集めているのは、シリコンゴム(PDMS)で出来た数μのパターン材を位相マスクとして用い、近接場においてリソグラフィーを行うという方法である。この方法を用いると、90ナノクラスレベルのものを得ることが出来る。
ソフトリソグラリフィー方式を利用したエンボス成型では、100nm以下の光学部品が試作されている。また、ファイバーブローブの先端から漏れ出る近接場光エネルギーによって、直径50nmの穴開けが出来るようになる。
この様に、ナノレベルの微細加工の研究は目覚しいものがある。
● Report No016
/ 10月19日
『宙に浮かせる』
ふわふわ宙に浮くのは人工衛星、月、地球、銀河。無重力状態を人工的に作り出せればと、古くは巨大な岩々の目もくらむ頂きに築かれたギリシアのメテオラ修道院群(世界遺産)がある。メテオラとはギリシャ語で「宙に浮く」の意味として、修道士たちは住居も精神も世俗から離れて宙に浮かせようとした。新しくは超電導磁石現象、航空機の急降下−急上昇、また北海道工業試験所の10メートル塔での1,2秒間の無重力状態を作り出したり等々と、市川猿之助の宙乗りに負けじと工夫努力中である。極めつけはスペースシャトル実験室での多種多様な研究であろう。これらは、物質が無重力状態で、本来持っている固有の比重が消えてしまうため、地上では混ざらないもの同士でも混ざるようになる。どんな液滴でも真球に保たれる。半導体用シリコンでも球として得られ、その結果全方向に発光するLEDが出来るかもしれない。また、常温射出成型システムを無重力下で利用すると、マジックのように超複合成型品が作り出せるかもしれない。この場合の成型エネルギーは勿論、宇宙線である。
『 空中成膜方法
』
上では、宙に浮かせる方法について記したが、これとは別に膜を空中に張る(形成)方法を考えるのも面白い。凧作りのために編んだヒゴ棒に紙を貼り、扇子、提灯、団扇、障子造りも古典的な空中成膜法だ。しかしながら、ハイテクの分野では全く別のコンセプトでのアプローチが必要と思い、いくつかを案出してみた。
1.まず膜が先にあり、支持枠(台)を後付けするプロセス
機能性フィルムにレジストシート(剤でも可)をラミネートし、
光処理−現像工程を経て空中膜を得る。
2.レジスト(材)膜に有機CVD(例−ポリパラキシリレン)コートし、
光処理−現像工程を経て空中膜を得る。
レジスト材の代わりに溶解性組成物を利用しても良い。3D膜も可能。
3.高分子LB膜を微細フレーム構造物への転着にする。
4.溶解性ポリマーの曳糸性を利用して枠体の吹き付けによる膜形成。
また、マイクロ・ウェルアレー(マイクロ凹みの羅列チップ)に上蓋の形で薄膜を空中張り(貼り)したものは何に利用出来るかを考えてみるのも面白い。
● Report No015
/ 10月12日
『先端的多孔質材料 3種』
・半導体絶縁膜
これは、世界で初めて超低比誘電率1.5を実現し、また強い膜強度をも実現したもの。 空気が理想の1.0ナノで、シリカゾル溶液から得られるハニカム構造の多孔質膜はまさにぴったり。(ULVAC)
開発途上ではあるが、1.1レベルも公表された(神戸製鋼所)。
・電池用電極
ニッケル微粒子をバインダーと共に発砲ポリウレタンに含浸、乾燥、焼成分解、還元焼結により作られたNi多孔質材料で、IT機器用電池の小型化、軽量化、多負荷使用につながるもの(大阪工業技術研究所)。
・人工骨
レンコン型多孔質構造を持つステンレス、チタン合金、形状記憶合金等を人工骨として利用技術は、計量、高強度のみならず、空孔を使って生体・適合性の薬剤徐放性を持たせることもできる(大阪大学)。
まさに、ハイテク材料、この種のものが続出しましょう。
『 有機メッキ
』
メッキといえば電気メッキで、金属カソード上に金属の析出させる方法であるが、アノードの上にポリマーを形成させる有機(ポリマー)メッキが開発されている。
トリアジンチオールを電気的にFe、SuS、Al上に電解重合膜付けする方法で、この形成された10〜50nm厚の膜はある種の特性を有している。即ち、配向した累方性膜であるため、金属/ゴム接着の介在層に適している。電子、電気、機械部品への応用は広いと言える。例えば、ナイロンに金属インサート成型する際の材破レベル等である。これとは別に、有機メッキ層の表面が、-CH3、
-CF3と言うような表面事由エネルギーの小さい端末分子群に覆われているので、精密成型用金型の汚れ防止効果も期待できる。マイクロマシン時代に陰の主要プロセスになるでしょう。
● Report No014
/ 10月05日
『 マイクロ成型用加工技術たち
』
・レーザー加工材(エキシマ、YAG、CO2)
・放電加工材 ・エッチング装置(ウェット、ドライ)
・紫外線リソグラフィー + 電鋳
・X線リソグラフィー + 電鋳
・ダイヤモンド工具加工材
・マイクロ機械加工材
これらの加工機械で、どんな材料(金属、プラスチック、セラミック)を加工し、そのアスペクト比の程度と試作品としての作り易さや、量産する必要性等に於いて、使い分け、組み合わせがされる。
個々の技術にはそれぞれ専用の装置を必要とすると、幸いなことに専業の加工業者が増えつつあり、研究、設計、能力があれば、製作はアウトソーシングである程度は済ませられるだろうし、製品評価も公的機関で可能でありましょう。
しかして、マイクロモールド、ハイテク商品にも四畳半ベンチャーで出来る時代になってきたようです。チャンス到来!
『 炭酸ガス
』
地球温暖化の悪役とされている炭酸ガス(CO2)もガス体以外に液体、固体があるのはよく知られている。固体のドライアイスは食品の冷却輸送用溶接用に使われ、−80℃で水に触れると[水蒸気
+ CO2ガス]のもやが発生し、空気の1.5倍の比重なのでシャボン玉がふんわりと浮く。 新しい利用法として、微粉砕しながら金属面に吹き付けると超精密洗滌システムとなる。液体炭酸ガスは、深海の超高圧下でシロップ状で存在するのが発見されている。また、特定の有機溶剤と共にエアゾールの噴射剤として利用されたりとその利用範囲は拡がっている。また、CO2はベンゼン、エーテル、ペンタン等の有機材料と共に有機溶剤代替品としての利用もある。
勿論、そのCO2は産業工程で廃出されたものの、リサイクル品である。 さて、ドライアイス粒の表面をゴムコートしてカプセル化し、特定のバインダーと組み合わせると何に使えるでしょうか?
● Report No013
/ 09月28日
『 ガラスの金太郎飴 』
ヨーロッパでのガラス工芸品としてのペーパーウェイトはさしづめ、ガラスの金太郎飴であろう。イタリア語で"千の花"を意味するミルフィオリという装飾パーツで断面がデザインや図柄を表すケーン(ガラスの細棒)で組み合わせて作る。このケーンを作るためには、ハート形、星形、角形等の鋳型を通して作られる。従ってできたペーパーウェイトは大きさ、形、模様(写真風、中小が、花鳥風月など)のいろいろ、まさに工芸品である。用途も花瓶、皿、グラス装飾板に至るまで、カラー写真でお見せしたいくらいだ。
工芸品プロセスは、工業分野に転用利用されて来たが、このミルフィオリを光ファイバー、セラミック材、ポリマー材、低融点合金、またそれらの複合材に置き換えて考えてみると、いろいろとハイテクものが出来そうである…。
『 墨流し 』
昔、墨汁を盥の水面に静かに流した後、和紙を水面において墨の流れを転写して楽しむ遊びがあった。この原理で種々の物質のナノレベル級薄膜を作る研究が幅広く進められている。この膜をLB(ラングミュア・プロジェクト)膜と言う。高分子系LB膜は電子光機能、非線形光学機能(NLD)、電磁活性機能などが期待できる。それは新しい発光ダイオードや光導波路を利用した光スイッチング機能をもつ有機フォトニクス材、超撥水性膜などが想定される。普通高分子薄膜はスピンコート化学蒸着、有機メッキなどがあるが、LB膜法では垂直浸漬、水平付着、回転方法などにより支持体に付着させるものが多い。
このLB膜を、空中成膜させたら、いろいろな素子(デバイス)が出来るのでは?
● Report No012
/ 09月21日
『 蒟蒻料理 』
コンニャクを切るとき、何で切りますか? 刺身コンニャクは当然包丁でしょう。筑前煮などでは指先でちぎりますね。
技術の世界で、定義・分類好きな米国人は包丁型だろうし、議論を避け曖昧さを好む日本人は後者かもしれません。近年、広範囲に利用されている液状エポキシ樹脂の成型(molding)も、専門家ですら注型(casting)くらいの用語で済ませていました。しかし米国では、埋込み(embedding)、封止(encapsulation/sealing/potting)等、樹脂が透明で中の部品が見えるか否か、型を外して用いるのか否か、中の部品が中心にあるのか、一部外に出ているのか、等で区分け(classification)されています。誰もが正確に理解できる仕組みは技術の世界では必須です。
では、指先でちぎったコンニャクは意味がないのでしょうか?
『 みかけ(疑似)固体 』
別項で、100%室温反応液体を紹介しましたが、同様な組成、反応性を有していながら形状は固体であるものを指します。"液状では何かと扱いが不便"な時、その液体を見かけ上固体「(粉末、フィルム、シート、ブロック)にしてしまう方法が種々あり、広く利用されています。ご紹介すると
(1)吸着性フィラーとの組み合わせ
シクロデキストリン + お酒 = 粉末日本酒
シリカ・タルク + エポキシ = 半導体封止用エポキシ錠剤
(2) カプセル化する方法
カプセル + 医薬品 = カプセル薬
マイクロカプセル + 背着剤 = ネジロック剤
(3) 結晶化剤による方法
ワックス + ケロシン = 固形燃料
結晶性ポリマー(PMMA, CAB等)+ 光硬化レジン = 印刷板・PC用レジスト材
(4) 面白い平例
M電器ではワニスをコイル含浸後、紫外線照射して表層に薄膜を形成させ、続いて加熱炉に入れ、効率的硬化を計る技術があり、これは
CNG(圧縮天然ガス)タンクのFW形成時に紫外線照射によりゲル化を促進し、生産効率を向上させています。 これらのコンセプト技法は精密成型分解でも多々利用出来ましょう。
● Report No011
/ 09月14日
『 マイクロカプセル 』
直径300ミクロン以下の球殻(カプセル)の中に種々の物質を封じ込め、必要に応じて取り出して利用するというマイクロカプセル化技術が、工業レベルで広く展開されているのは周知である。
昭和60年代中頃、日本車の故障率の低さは何に原因があるのかと米国当局が調べると、"ネジ"にあることに気がついた。適切な締付管理がなされているのであった。即ち、ゆるめ止め接着剤(ロック剤)を包含したマイクロカプセルがネジ山に予め塗布されたものを用い、ネジ嵌合時の力でカプセルが壊れ、ロック剤がにじみ出て、触れた金属を硬化触媒として速やかに固化−ロック−する仕組みであった。自動車一台当たり、僅か2,3gのカプセルが日本車の評価を静かに、しかし大きく高めていたのは快かった。品質向上は顧客の為ならず自分(企業)の為であることを言うまでもない、という事例だった。
『 射出成型ビジネス 』
"ポリマー粒子を最終製品に溶融加工する"形の射出成型は、単純なプロセスのものほど、付加価値が出にくい状況になってきている。殊に電子、光学、バイオ、精密機械の分野では、超小型・複合型・インテリジェント機能型などの要素を包含する成型品であることが要求され始めている。従って、材料も固形ポリマーのみならず、反応性オリゴマー、金属、セラミック、と特殊バインダー等を駆使し、加工プロセスも熱溶融のみならず、他の固形化技法を広く知り、用いて顧客のニーズに適合するように自社の得意技の幅を拡げる努力が肝要と言える。
● Report No010
/ 09月07日
『 うどん作り 』
小麦粉と水。シンプルなこの二つを用いただけで、数多くの麺類が作られることはよく知られている。粉の方は多少種類はあるものの、水は日本の天然水のみ。混ぜ方、伸ばし方、切り、茹で、とそれぞれの工程で水を加えるタイミング、時間、湿度、切り寸法、熟成期間等々の要素が複雑微妙に絡み合う。前田建設の会長は、うどんを趣味で打つうちに、粉と水の混じり具合に秘密があることを知り、それを混ぜる機械と理論まで構築し、東大の工学博士号を得たとのことだ。秋田の稲越、讃岐のかなにわ、ソーメン、きしめんなどの違いに加えてつけ汁、かけ汁、具に至るまで変わるとなると、毎日一種食しても一生のうち食べきれない程グレードがあるかもしれない。
ハイテク分野の機能性微細粒子(多孔性セラミック)の孔内に液体の化学触媒を付着させるにはこうしたらよい、とアドバイスしてくれたのは、友人でそば打ち趣味を持つ技術屋であった。
『 サブミクロン級の形状転写 』
前報では自己組織化膜(SAM)を用いてマイクロコンタクトプリントによる形状転写について記したが、別の技法もあるので更に付け加えると、メッキ加工による成形金型の製作と、高精細度(10ナノレベル)を実現するナノ・インプリント法がある。前者は俗に電鋳と呼ばれ、フォトリソグラフにて得られた構造体にメッキを施し、元の構造体を除くことにより雌型が得られ、射出成型等の型として用いられる技法である。現在ではCD、DVD等で広く利用され、0.4μの転写を可能にしている。
後者はEBリソグラフィーなどで得られた10ナノレベルの原型をSiウエハー上のポリマー薄膜に加熱下でプレスすることにより、大容量光ディスクや電極ドットアレーが得られる、IT時代の重要な技術である。ナノ・レベルの転写はまず、原型(製作型)をどのようにして得るかがポイントである。8月27日のNHK特集はそれらを見せて圧巻であった。
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