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● Report No285 / 08月29日


コンパウンドの合奏

小澤征爾氏の中国でのオーケストラ育成指導TVドキュメントを見た。オーディションの段階からソロ演奏能力は極めて高く、これはと期待されるも、合奏となるとバラバラの有様。そこで指導 他者の音をよく聴け・指揮者をよく見よ・舞台声優の声を耳に入れよ・そして曲の真の理解を、と。ひるがえって自身、ベンチャー企業での若き研究者時代、テーマの機能性配合組成物はラボに於て特性値さえ優れているものならばそれは商品と心得違い、その結果は、惨め。

  • アルミニウムチューブの成型時の付着滑剤と反応して商品寿命が短くなってしまった。
  • 貨物船の船艙せんそう温度を考慮に入れていなかった為、変質ゲル化。
  • 20L缶に熱間充填した為、含有充填剤沈降を招き、顧客側での再撹拌工程を設ける破目に。
  • 大衆商品型の自動車エアゾール品をブリキ缶仕様にて上市するも盛夏期の車内の最高温度に耐えず、アルミシームレス缶に全面転換。
  • エマルジョン系組成物の量産工程で造膜溶剤の添加速度を軽んじていた為、フロック発生。発売延期の破目に。
  • 反応性オリゴマー型組成物が、ポリ容器から浸み出る不都合が外国にて発生。容器のホットスタンプ文字部より滲み出、始末に苦労。
  • チクソトロピック性の光硬化性組成物に微細な空気泡が残溜。チップボンディング工程での空打ちにつながる大不良品に。

商品は内味さえ良ければ、との無理解。内味の量産製造工程・包装材と包装方法・輸送方法に至る迄目くばり心くばりが肝要なることは当然。テクノロジーで花を咲かせたつもりでも、まとめるエンジニアリングの形が欠けていたので、素晴しい合奏にならなかった次第。でも、これらが経験に・・・・・。

 

● Report No284 / 08月22日


セルフヒーリング

No.79、87項でセルフヒーリングに触れました。生物の自己治癒能を非生物の複合材料などに付加できないものかとの研究が過去から為されている。 1992年頃のコンクリート自己修復能の日本の研究では、繊維束にアルカリを含浸せしめポリマー表皮を形成せしめた後細片化してコンクリートに混和したり、又 多孔質のスフィア粒にアルカリを吸着せしめワックスにて表皮を形成せしめたマイクロカプセルの混和、アルカリの代りに硬化遅延剤を吸着せしめる方法等々があった。 最近、英国BRISTOL大学から、「FRP部材のセルフヒーリングの可能性」レポートが(2006,1月)上梓じょうしされ、ベースコンセプトではかなり上述のコンクリートの事例に似ているものであったが、工夫も数々。細管状(外径35μm)ガラス繊維の中空部に修理用薬剤を内包せしめる方法で、一液性レジンや主剤・硬化剤を別々のファイバーに収めるとか。又、マイクロカプセルに硬化性オリゴマーの内包も部材の強度繊維に有効と。このレポートでは基礎的可能性を示したのみであるが、真の生物はその自己治癒性の機構の主体を血液を修理液と見るとき、不離の関係にある血管と血脈、更には修理液を送り出す心臓に相当するマイクロポンプ機構も必要かな、と。 巨大システムも部材の僅かな欠陥で不能に至った事例は多く、更には資源有限の時代、無駄を出さない技術研究も重要さを増している。 いつの日か、病院の種々の治療器の如く、電磁波(X線、ガンマ線、IRなど)はもとより超音波なども内包薬剤と相俟あいまって作用する・・・・・などのコンセプトに立脚した研究テーマも現れてくるかも・・・・・。

 

● Report No283 / 08月03日


新合金を求めて

別項で金属ガラスに触れました。それは特定の金属元素を2-3種配合して冷却速度を調整して得られるアモルファス型合金でした。合金の世界では既存の金属元素を混ぜればとの素人発言には、合金研究者から一喝を喰らった。例えば高温になる程強度を増す金属間化合物(Ni3Al、MoSi、TiAl)など。発見当初は常識外れの成果であった。この様な多元素系では成分濃度、第3・第4成分の配合系によって千変万化いや万変億化と。配合のみならず処理温度・重力等も絡み、固溶体か、金属間化合物か析出体か更には、極微細結晶か、アモルファスか、準結晶か、とめまぐるしい。研究者たちは新しい機能を求めて、あれやこれやの工夫の数々の結果、金属ガラス・金属ゴム的形状記憶合金・制振機能の高減衰機・磁石・超電導材・水素吸蔵材等々と驚くばかり。そこで効率的合金開発のコツはと問えば、犬も歩けば棒に当る式のセレンディピティー(偶然的発見)とその研究者自身の経験則と原理計算による予測、に尽きると。

ゲノムマップ作りの如き絨緞じゅうたん爆撃的処方実験で新発見の可能性が大となると、人海戦術の得意な中国・韓国あたりも熱心とか。

有機化学の重合・合成の世界に比べて、研究アプローチの型が、かなり異なるのが興味深い。やがては溶湯中で有機金属の重合なども始まるかも。いや既にあるのかな・・・・・。

 

● Report No282 / 07月27日


CFRP(炭素繊維強化プラスチック)は今や主役

4月の新聞紙上に大きく掲載されたのは「東レ・ボーイングより7000億円受注、ボーイングB787の主翼・尾翼のみならず胴体にも適用され一機当り30トンのプリプレグ」と。身近にも、ゴルフクラブのシャフト・テニスラケット・釣竿などスポーツ品、更にはF-1レース車、レントゲン装置の寝床板などは、人々の目に付く利用分野。目方(重量)当りは高価格なれど、その効果性から経済ベースと認められ、コンクリートの補強ライニングで、例えば高速道路のRC梁や支柱などに貼りつける工法や、ジョイント部に埋め込んだりと。又、エネルギー分野でも電力貯蔵の高速回転フライホイールや燃料電池車の水素ガス用高圧タンクにも(ホンダFCX用タンクは35MPa・137lで315Kmの走行距離)。比強さ比剛性・疲労特性・振動減衰性・耐熱・導電性・X線透過性などに優れるとなるとその利用範囲は無限大。利用可能性はバラ色であっても、実際の成型プロセスは生産性が低いのが問題。そこで官民プロジェクトで克服せんと自動車用高速成型システムの開発(H15〜)が進行、

@成型サイクルの短縮(RTMで160分→10分以内に)
A金属(Al、SS)との接合技術
B衝撃吸収性付与
Cリサイクル技術

を目標に。既に米国ではトウ(tow)を貼りつけながらEB(電子線)束が追いかけ照射方式を開発中とか。UD方向で熱膨張係数が僅かにマイナスのCFと結束剤のエポキシ・ポリイミド 等の組合せは、設計次第で超精密な光学機器の部材にも可能性ありと、無電解ニッケルメッキを施した反射鏡の開発も見られる。名馬ほど、若駒時代はジャジャ馬と。どう馴らすか。既にCFRPは名馬と判定されているのだから・・・・・

 

● Report No281 / 07月19日


金型内で組立・複合化

1980年頃自動車エンジンのオイルパンのプラスチック化検討に於て、プラ/鋳物金属の接面のFIPGは膨張係数の差から不可と判断されたので、それではプラ射出成形時に金型内でシリコーンゴムシール層を形成してしまおうと、Injection/LIM 系の2色成型を開発したことがあった。同時期米国バッテル研究所ではIn-Mold-Platingと称する金型内で成型プラにメッキする技術を発表。以来 Mold in Assembly のコンセプトが気になっていたので、現況は?と覗いてみた。

  • 印刷フィルムを型内に自動供給してプラ成型物に転写する インモールドデコレーション
  • 射出成形後、型を少々ゆるめて隙間に塗料を流し込む インモールドコーティング
  • 同上コンセプトでUV硬化レジンでカバーコートする 光ディスク類

さすれば

  • 金属部品を型内に予めセットしてレジン成型する インサート成型のいろいろ。
  • 大型金属品の一部分に射出成型を施す アウトサート成型のいろいろ。

これらも

  • 金属/プラの接着力を高めんとトリアジンチオール処理(岩手大)、金属表面を多孔質化してアンカー効果を計る(大成プラス)金属カラー(つば)篏合方式を採る(BASF)

と 工夫の数々。

当然のこと乍ら、 EMI、RFIシールド処理成形物、立体(3D)プリント基板、光導波路/光コンポ内蔵型性型物 等々も多々。

  • 更には、射出成型もガス発泡型となり上述のデコレーション、コーティングとの組合せ(宇部興産)
  • 2色成型に加えてスパッター成膜、端子の組付融着(大嶋電機S/S)

等の新技術も上市され、果ては複雑なモジュールすらイン(アウト)サート成型で可となる気配。組立人件費の安い国への移行はなくなって行くか・・・?高賃金・少子化時代の切札になればと。

 

● Report No280 / 07月13日


接着・接合/あの手この手(二)

接着剤や塗料、メッキ膜などの駆体への密着力は、駆体(被着体)自身の表面状態に因るところ大。 サンドブラスト処理、プライマー(カップリング剤 含む)加工 等が主流であったが、より高度技法が求められ、高エネルギー照射の方式が開発され、被着体のダメージの少なくかつ照射後の保持時間が長いプラズマ方式、と大気中でも装作出来るのでインライン化が可能となる低圧水銀灯による紫外線照射方式が普及。 更に接着剤レス方式の接合技術を求めて難溶接材料でも可とする電子ビーム接合方式。又、UV方式と同様に大気中で利用できるレーザー加工も、エネルギー収束は中レベルゆえにプラスチックには好便で、更にはレーザーの分岐・反射を組み込み同時多接合点を可とする技術も現れた。 又、色素のエネルギー吸収特性による温度上昇を利用するレーザー溶着も、透過と吸収の両方を持たせて三次元溶着も出来るようになった。 一方YAGレーザー照射による、被着体の表面ミクロ凹凸へのアンカー効果を効果的に利用した異種材料同士の接合に脚光。又、イオンビーム照射によるウエハー等の常温下接合も魅力的。ウエハー表面の酸化・吸着不純物層の、清浄化による表面活性で合わせるだけで接着。 熱・圧力・電気 等不要ゆえに、微細かつ低強度部材 等の接合に好適。

30年以上前、米国の技術文献ハイライトで同種の技術成果を見て少々驚くも、ポリマー屋からすれば物理エネルギー雰囲気の領域は別世界として、流してしまっていたことを思い出した。 嗚呼、こんなものですね。

 

● Report No279 / 07月06日


洗ひ出し

多孔質材料それも微孔質となると精密フィルター、透過膜、浄水チューブ、電池用セパレータ、等ハイテク材料としてその利用は広範囲に亘っておるが、その製法でもマイクロ相分離法・熔融急冷法・延伸法・電子線エッチング法等々専門外の者にはあまり親しめない技術で、もっと判り易い?技法はと見ると粉粒の焼結法があった。ポリマー等の粉粒を一定の熱雰囲気下で粒表面のみを熔融ブロック化せしめる方法。しかし乍ら、熱コントロールの難しさから、薄膜シートや厚膜ブロック等が均質状態になり難く、そこで人々は或る工夫を施した。即ち熱可塑性ポリマー(塩化ビニール、ポリエチレン 等)に塩(NaCl)の粉を練り込み後 成型(フィルム、ブロック)し、次工程で塩を水洗によって溶出させてしまおうと。塩は熱に強くかつ易水溶性で好都合。塩の代わりに砂糖を用いたらどうなるか、は宿題になりましょう。か様に生きた塩抜きポリマー成型物は、インクを抱けばスタンプ材となるし、又 ロール形にすれば、水切り(水吸収)ロールになる。別項でも触れたが、角砂糖をポリパラキシリレンによるCVD(化学的気相沈着重合)加工後、 熱水にて砂糖分を抽出すれば逆相の多孔質材が得られるのも似た様なコンセプト。

そう言えば、水溶性の青花液で輪郭りんかく線のトレースとその上に防染様の糸目糊を置いた技法の江戸手描友禅、もち米に油煙(すす)を加えた防染用の糊を用いた江戸中絞染ゆかた、など 川の流水による洗ひ出しでした。いにしえよりレジストのコンセプトは随所に有ったのですね。

 

● Report No278 / 06月24日


金属ガラス

金属ガラスの時代が始まり出した、と。

単語からすると、ガラスの金属化の様に聞こえるも、さにあらず、ガラス状(を示す)金属のこと、と。更に詳しくは、従来型のアモルファス金属と異なって、比較的遅い冷却速度でもガラス化し、結晶化し難くガラス転移を示し、過冷却液体状態を実現するもの。特定の金属元素を2-3種配合して冷却速度を調節して得られる金属、何と言っても、非腐蝕性、高強度、弾力性、耐摩耗性などに優れているのみならず、加工性に富んでいるので、あらゆる産業技術分野で新規材料として開発が進められ既に、ゴルフクラブヘッド材、ケイタイのケーシング材が実用化、続いて自動車用燃料電池 DDS、人工骨組織、航空機部材 等限りなき拡大へ。学術的研究では文部科学省が特定領域研究(〜H19)として強化しつつある。

一方具体的な利用・応用面での特許を眺めると成程・なーるほど でした。燃料電池用セパレータ(導電性・耐蝕性)、電磁アクチュエーター(高磁性)、光学素子用成型金属材(精密転写)、電磁弁用弁、インクジェットノズルヘッド、プローブ(探針)、スピーカー材料、電磁波遮蔽しゃへい材 等々。当方としては、これらの中のいくつかの利用・応用については、別種の技法での経験・知識であっただけに、改めて俯瞰ふかんを迫られる破目に。

ハイテク材料の時代に又一つのスターが舞台に立った。ファンクラブにも入って触れたいところ。さしづめマイクロパーツあたりが楽屋口かな・・・。

 

● Report No277 / 06月03日


粉の成型ダイジェスト観

本欄では、これ迄「粉」に関わる記述が意外に多いので改めてびっくり。粉まみれ・導電性粉粒・粉の経験・落雁・ナノカーボン・ナノ粉の毒性・泥んこ遊び・セラミックは粉・粉砕・傾斜材・ナノ粉を配合すれば・フレーク・粉の時代・微粒子の配剤 等々。材料の分野では如何に、粉は重要なポジションに在るのかの証明か。身近なところにも、石油時代の以前には石灰粉を固めた練炭・タドンは台所燃料の主役。今では木炭の成形品がレジャー用バーベキュー燃料。仏壇用お線香・蚊取線香も杉の葉の粉製品。砥石や鉛筆の芯等々、小学校の理科の領域になりそう。それにしても、少しの驚きと印象にある技術が、粉がらみでありましたので一寸ご紹介。

  • 放電プラズマ焼結(SPSシンテックス社) ― 金属・セラミックス・ポリマー・複合材料 等の放電プラズマプロセスによって焼結したり、接合したり、表面処理したり、特定の合成をしたりする新規性の固体圧縮法で、従来のホットプレスに比し特徴多々。(http://www.scm-sps.com/)
  • 光硬化性粉体塗料 ― 30年ほど前に米国の発明者と触れ合い驚いた技術。UV光を照射(重合)する前工程で熱(IR(InfraRed)で1分)で熔融造膜すると言うコロンブスの卵的。最近、市場に出まわり、木材への塗装にはポリエステル系。ビスフェノールエポキシ系。金属にはフェノールエポキシ系が多い様。
  • 揺動成型 ― 土のもつ自己組織化現象を利用して、省エネ型でかつ高強度を短時間で得られる技術で、流動性ある粉体ならばなんでも固化出来ると。殊に。必ずしもバインダーを添加する必要が無いユニークさには注目。

食いしん坊の筆者にすれば、粉状食材を上記技術プロセスにかけたらどうなるのかなと思い乍ら、小布施の栗落雁を、味わっているところ。