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Report No082 / 02月28日
『 バイオ繊維
』
昔、絹を凌ぐ強度を持つ合繊繊維ナイロンが、石炭と空気と水から作られたと聞かされた時の驚きが今またあった。米科学誌「サイエンス」によると、カナダのバイオテクノロジー社と米軍研究所は蜘蛛の糸の遺伝子をハムスターの腎臓と牛の細胞に組み入れて蛋白質を生成せしめ、この水溶液から20ミクロン径の糸を紡ぎだしたとのことだ。その強度は現代最強の芳香族ポリアミドより優れていると言う。量産には体細胞クローン技術で生まれた山羊に蜘蛛の糸の遺伝子を導入して蛋白質含有の山羊乳を搾り、そこから糸を得ると言う。その名もバイオスチールと称し、インドのカンダタがよじ登った蜘蛛の糸(No.54)がこれであったらお釈迦様も戸惑ったかも知れない。況や合成ポリマー技術者たちにとっては山の向こうからミサイルを撃ち込まれた思いであろう。
そう言えば、これは防弾チョッキにもなるのであった。
素朴な疑問あり−この糸の生分解性はどの程度かな?
『 可視化
』
人間、自分の目で見えるものが一番理解し易い。従って目に見えない科学現象を見えるようにする技術開発も盛んだ。目に見えない代表は流体だ。水流にはアルミ粉やポリスチレン発泡粒をふりかけてやれば簡単。空気流には、風洞テストなどは、物体にヒラヒラ片を多数貼りつけたり、流す空気に白色スモークを混ぜたり、物体表面にコレステリック液晶のマイクロカプセルを塗付して層流ー乱流の温度分布を可視化したり※。また、構造材の締結圧力ともなると間接的に締付ボルトのトルク/接触面の積から割り出していたが、直接的に圧力で潰れるマイクロカプセルの発色度合いによる手法が開発されている。点から線、線から面、果ては立体ものの可視化へと、機械、化学、電気、電子、光学、生化学と広い分野技術の融合が求められている。そう言えば、DNAの「二重らせん構造」の分子模型を見てやっと理解出来た方も多いことでしょう。嘘発見器は心の状態の可視化道具と言えるかも知れません。ホログラフも究極の技法の一つか。
※表面の変形度合いによって変色を来すところの光干渉の角度依存性を利用したものもある。
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Report No081 / 02月21日
『 狸寝入り
』
CGF(クロレラ成長因子)は腸内細菌ビフィズス菌の一番の御馳走だ。人がそのまま飲めば胃酸で分解してしまうのでpH1〜2では溶解・崩壊せず、腸の弱アルカリで溶ける様なマイクロカプセル殻を形成せんと、乳糖を基材に試作するも粒径2ミリ以上のサイズしか出来ず、技法を変えてCa(カルシウム)の沈着膜形成法でトライするも形成膜のバリア性の不備で現在棚上げ状態。即ちある条件下ではおとなしく(言い換えれば鈍感)、特定条件下で目が覚めて(感応)変化する現象は自然界には満ちている。これらの現象をうまく掴んで仲良くすることがテーマとなり、新技術開発となり、新商品につながっていく事例は多い。とは言っても、反面、全天候型技術もそれなりに狸寝入り−死んだふりなしの元気印技術と言えましょう。
『 光で動く分子
』
LCDは液晶物質に電界をかけて配向を変化させ、屈折率異方性を利用する仕組みだが、電界以外の光、磁界でも感応する液晶のあることが判って来た、とのレポートがあった(東工大資源化学研究所)。これによるとアゾベンゼン液晶を合成し、高分子化のナノレベル薄膜にレーザーパルス照射すると直後に等方相を示し、やがて別種の相に変態するとのこと。これはナノ秒クラスの高速光スイッチング材料の可能性を示している。また、Tg以下の温度でマスクを通して光照射すると像を形成することから光記録材料になるであろうと。三次元のホログラフィーも考えられるとか。LCDと言うディスプレー(表示)市場ですら何兆円と言われる中、[光エネルギー/液晶]応用商品はどこまで拡がって行くであろうか。ネット裏から応援観戦したいゲームだ。
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Report No080 / 02月14日
『 電池切れ
』
電池は生活に広く組み込まれているだけに、一旦切れてしまうと面倒なもの。時計、携帯電話、ビデオカメラ、果ては心臓のペースメーカーなど。切れて判る電池の有り難さ。10年以上前に英国の発明家が、電池の入手困難な地域、国のために手回しハンドル型発電器付ラジオを開発したとの記事を見たことがあったが、最近、文明国も含めての市場想定で、手回し型充電器が開発されたとのこと。これは手を使うものだが、足による方式即ち歩行中の靴底に圧電シートを組み込んで発電したり、踵の部分に衝撃性発電具を組み込んだりの歩行エネルギーの利用を考えたり、更には人体温度で発電する体内埋込型超小型バッテリーなどなど驚くばかり。言うなれば、食物が電力源、これこそクリーンエネルギーの究極の例。そのうち誰かが歩行中の衣類の摩擦による静電気を利用するかも。
『 撥水性
』
衣類用の撥水スプレー、自動車のフロントガラスや雪害対策での利用、最近ではハイテク触媒類の撥水加工、更には機能性金属メッキから電池、電極、プリント基板、光学素子に至るまで、撥水剤の用途は拡大一途。材料的にはシリコン系、フッ素系が主体。もっとも、最近は今をときめく光触媒、酸化チタンもこの領域に進出。水膜の形成を妨げる様に、-CF3の葉をカリフラワーの花の如く高密度に並べる技術が多い。撥水効果はひいては防汚、曇り止め、透水性向上、防水性などの付与に通じているだけに有難い材料だと言える。
とは言っても、フッ素材料ともなると、熱分解による大気中の酸素水分との反応によるトリフルオロ酢酸の生成は環境毒の原因となるだけに便利とばかり喜んでいる訳には行かない。フロンガスの二の舞にならぬ様、ガスには気配りしよう。
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Report No079 / 02月07日
『 鍛金(たんきん)
』
ロマ(かつてはジプシーと言われた流浪の民)の特技は屑鉄から鎚(かなづち)、叩き出しの盥、鍋、フライパン作りだ。日本では鍛金と称し、別に打物、鍛造(刀作りなど)、板金、絞りなどの呼称もある。
正倉院宝物の中にも武具、酒器、花器、茶器、仏具など数多くの鍛金加工物が見える。金槌だけの加工なのに造形の繊細さは目を見るばかり。金属の種類も金、銀、銅、鉄、赤銅と幅広い。現代では人間国宝制度によって名士たちが技を競い、ことに至難は蝋付(ローヅケ)接合技術の研究による工芸品までみられる。金属系接着技術はハイテクの中でも高度なもの。
・人間国宝の鍛金工芸品
・ロマ人のリサイクル型手作り日用品
・鍛金工業技術による量産品
これら三つのうちどれが一番長く生き残るかなあ−などと自問自答しながら、テフロンコートのフライパンでチャーハンを作った。
『 セルフ・ヒーリング
』
生物の特質たる自己治癒能とでも訳せよう。人の皮膚や骨が損傷を受けても、やがて元に復したり、樹木の皮が剥がれてしまうと樹脂が流れ出てかさぶたを形成して保護層となったり生物体ではごく当たり前の事であるが、非生物にもこの種の自己修復機能を付与しようとの研究が進められている。一旦損傷を受けても強度維持が図られる様は組成構造を組み込もうとの発想だ。数年前に大学/土木会社と共同で、アルカリ包含のマイクロカプセルを分散させたコンクリート劣化防止技術に関わったが、最近、同じコンセプトでポリマー系複合材料のセルフヒーリングに硬化性レジンのマイクロカプセルと効果触媒を分散させた技法の報があった。
マイクロクラック発生時に早期に反応固化して、補強(治癒)してしまうもの。航空材分野で注目を集めよう。
非生物にセルフ・ヒーリング性付与のインテリジェント化は市場も広く注目ハイテクだ。
セルフ・ヒール型導電回路あれば大ヒット間違いなし。
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Report No078 / 01月31日
『 MID(成型回路部品)
』
最近所謂“配線回路付プラスチック成型品”なる技術の利用が拡がり出している。その代表的なプロセスとして無電解メッキを用いる2段階成型法がある。この場合、2種類の金型を必要とし成型プロセスも2回の射出となり、その前後あるいは中間にメッキ工程が入るという煩雑さ。当然ワンショットプロセスの開発も進んでいることであろう。例えば、成型液晶ポリマーの部分的な表面メッキ性化処理法、薄膜回路の3D転写貼付法、導電性材料の選択的気相沈着法等々。そう言えば、20年程前米国バッテル研究所のインモールドプレーティング法(射出成型物を金型内でメッキする技法)に触発されて、光硬化性プリプレグに極細の導線をNC縫い込んだり、パターン銅箔を転着したりしてのち変形させ、紫外線硬化せしめて立体回路を得る開発をしたが、実用化に至らずであった。少量多品種の時代、高価な金型を用いないRP(ラピッド・プロト)と無電解メッキを組み合わせたシステムは注目されよう。RPは最終製品でもあるし、成型型にもなれるし選択的表面不活性化技術もいくつかあるから……。
『 マイクロ波による硬化
』
導電性回路や接着剤に広く利用されているポリマーベースの銀ペースト(ECA)を硬化させるにはオーブン加熱が一般的だが、可変周波数マイクロ波装置(VFMW)でも出来ることが判った。普通では、ペースト内部の分散銀粒同士が、マイクロ波にはアーク現象を起こしてしまうのにVFMWではそれがない。とは言ってもAg粒のサイズ、配合量によって硬化条件は変わるが、従来のオーブンプロセスに比べて実装工程が簡便になりましょう。また、2D(平面)のみならず3Dでも可となると別項で記述のMIDへの新技術としても考えられる。また、非極性フィルム同士の層間硬化による多層配線板への応用もあろう。ひょっとして、ECA自身がキャリア材へのセルフエッチング性を発揮したらどうなるだろう。また、金属粉の種類を変えれば、電磁シールドへの応用も可となろう。もう既に密かに工程に組み込んでいるかも知れない。実装行程のプロセス技術は、なかなか表に出てこないから。
● Report No077
/ 01月24日
『
最近の面白テクノニュースいくつか 』
導電性高分子の新合成法(愛知工業技術センター)
酸化重合用のある種の酸に光を当てると酸化性がなくなる現象により、その個所のみ重合しなくなるので、導電パターンが形成出来る。基布(布、セラミック、ポリマー)はいろいろ。光照射が可能なら3Dも可能かと。
高導電性のポリマーシート(三菱樹脂)
押出品でありながら10の-4乗オームセンチレベルでベースポリマーもポリオレフィン、フッ素、ポリエステルと品揃え。0.5〜2.0ミリ厚、広巾で供給可能となればEMI特性、熱伝導性、金属との複合化などその用途は広い。
半田粕をゴマで再生(松下電器)
250℃の半田粕の中に皮むきゴマ粒を振り掛けると1分程でゴマ表皮の油が半田と粕(酸化物)に分離、粕のみ表層に浮いてくる。ゴマ成分がフラックスと金属酸化物に吸着する現象を利用。
チップ型燃料電池(産総研)
フッ素樹脂の中空系(内径0.3、外形0.6ミリ)の内側に白金微粒子を対着させたカーボンファイバーを貼りつけ、〔水+メタノール〕液を通過させると電気が取り出された。メタノールから直接水素が取り出せると、モバイル用電池に期待される。
シリコン基板青色LED(サンケン電気)
特許戦争(主として日亜化学‐豊田合成)と発明者権利訴訟で有名な分野ながら、同社はシリコン基板で成功した。コストは先発の何分の一とか。ポイントはシリコンとチッ化ガリウムの接層構造にバッファー層を設け、熱膨張問題をクリアした点だ。
『 歯のマニキュア?
』
爪ではあるまいに歯にマニキュアなんて無いと思っていたのですが、実際はあるのですね。歯も単に虫歯がなければ良し、ではなく美しさ―審美性と言う観点から、白さを漂白(ブリーチング)することで、表面の防汚性をコーティングを施す。よって、得られる歯の健康保全(化粧)品と言う概念からのもの。口中は常に唾液に浸されており、コーティングに際しては駆体たる基歯の虫歯部の除去、充填を経ての処理となるが、塗付面の基質は均一ではなく、象牙質、人工修復物、歯のエナメル質、等多様だ。したがって、塗膜として接着性が良く、耐唾液性は言うに及ばず、塗付後の迅速硬化性が絶対だ。そうなると光瞬間硬化型になって来るし、その光も粘膜に刺激性の強い紫外線は好ましくなく、可視光エネルギーとなる。
従って、最近ではフッ素系アクリルモノマー / 光重合触媒カンファーキノン(CQ)を主成分とするもの、更にはフッ素系シランカップリング剤系のものの研究が展開されている様だ。こう見ると、歯のマニキュアも半導体用エレクトロケミカルスに負けないハイテクレベルの技術が利用されているものと知った。
● Report No076
/ 01月17日
『 ウルトラ光触媒
』
光触媒の研究開発のスピードは速い。太陽光の中でエネルギーの45%も豊富にある可視光(400〜800nm)に敏感に応答するように、化学変性させる研究だ。低温プラズマによって酸素欠陥型アナターゼTiO2やルチル型TiO2の微粒子の表面に超微粒金属を坦持させる技法で、その金属にはプラチナ錯体コロイドを用いると。いずれもが殺菌、漂白、防汚、撥水などであったが、最近、産総研では可視光により水を酸素と水素に分解する能力をもつ光触媒―ニッケル/インジウムタンタレート系化合物(酸化物半導体)が発表された。近い将来、その効率向上研究が成功すれば、化石エネルギー社会の転換も期待出来よう。まさしくウルトラ光触媒の出現だ。タンタル(元素記号73)など希少金属の資源戦争も激しくなろう。核融合炉とどちらが早く実用化するか。
養鰻地ならぬ水素/酸素分解回収池が太陽光の下、延々と連なる風景の夢でも見ましょう。
『 スライス/薄切り
』
切歯がV字型の野菜スライサーの薄切りにかかると、少しの野菜でもふんわり山盛りになる。近頃の薄切りハムも家庭では切れないくらい薄く、河豚の刺身も皿模様が透けるのも職人技。軽薄短小の技術の時代、薄いほど付加価値は厚い。
・CTスキャンで脳の薄切り映像を立体化
・SEM(電子顕微鏡)検査のためのヒト肝組織のスライス試片
・μ級厚さの超LSIウェハー
・CDヘッド材料の高細密化のための薄片化
・太陽電池用半導体シリコンのスライス
ここでふと思った。
切って薄くするのか
薄く切り取るのか
● Report No075
/ 01月10日
『 電子部品を包む
』
表面実装用電子デバイスの包装(パッケージ)は種類がいろいろ。そもそも大量生産―高速自動組み付け―寸法形状いろいろ、となると映画フィルムのようなテープに部品一つ一つを貼りつけ、あるいは嵌め込み、カバーをしてそのテープをリール状に巻き込んだエンボスキャリアテープと称するもの、遊園地の滑り台の如く、溝に部品を整列させたスティックマガジン、部品形状に凹部を多数つけた盆(トレー)、果てはテープにも盆にもかからぬゴマ粒の如きチップ部品を収納するバルクケース。更にはそれら収納材料は収納部品を静電気や外部電磁波から守る機能をも有していなければならない。聞くことによると、これらは確かに量産には適合しようが、時代が少量〜中量多種生産、更にはセル方式生産に動いて行くときいかがなものであろうか気になるところ。
自転車でちょっと出かけられる場所に乗用車で行くようなもの。さりとて昔ながらの人海戦術、手仕事と言うわけにも行くまい。ここに問題があり、それがニーズであり、テーマでもある。その解決=ビジネスと言うことでしょう。
『 薄っぺら
』
人情紙の如し。羊羹の薄切りなど昔は薄っぺらは卑しいものとされていたが、今日では薄い程価値あるものが多い。最も昔でも調理人の大根のかつらむきや、河豚刺身は薄い程良しとされていましたが。厚いものを断片化する代表例は、モンモリロナイト(粘土の一種)の構造をインターカレーション処理によってNa+架橋を壊し、1ナノ厚のフレークに分離する技術。これをナイロンと組み合わせるナノ・コンポジット材は既に実用域に入っている。一方、原子・分子の積み重ねによる薄層形成ではCVD(気相化学蒸着)が広く利用されており、TMCTシロキサンによると100ナノ程度か。透明導電膜の1TO(イリジウム・酸化錫)は25ナノ位。そうなると、料亭の湯葉は膜形成法では何に属するのかな?変則ラングミュアブロシェット(LB)膜かな。
さあ、切磋琢磨して精密膜を創ろう。
● Report No074
/ 12月27日
『 導電性ポリマーを少々
』
ノーベル賞受賞者白川博士によって注目されている導電性ポリマーは現在ポリアセチレン、ポリアニリン、ポリピロール、ポリチオフェン、TCNQなど。上市され、既に1千億円市場を形成している。太陽電池、センサー、EMI、電解コンデンサー、電池材料等その用途は拡がる一方だ。
その利用は殆ど薄層で用いられるから、膜形成が容易であることが大切。電解重合で得られるポリチオフェンはポリピロールのような毒性もなく、アウトガスが無い点注目されており、スルフォン酸系のドーペントの開発で更に発展しよう。導電性付与ではカーボンや金属粉末を練りこんだ分散系複合材やTiO2、SmO2などの超微粉子分散系、スパッターリング、イオンプレーティングと言った蒸着ものの分野とどう競合しどんな地位を占める様になるか。多分、重合、合成型導電性高分子技術と上述の諸技法との組み合わせ―デュアル型、ハイブリッド型―で新規性を求めようとする人々も出よう。何故なら、AとBが存在すれば、足したり掛けたりするのが普通だから。
『 木炭
』
戦中派には木炭自動車が思い出される。今はウバメガシから作る備長炭。その他竹炭も出始めた。大和や中国の王族の墳墓には木炭が敷き詰められ、何千年も前から木炭による吸着機能が知られていたようだ。エジプトのミイラには炭窯の副産物の木タールが防腐剤として使われていた。また、ギリシャでは7世紀に木炭ベースの黒色火薬が発明され、あの中国ですら13世紀になって発明された。ちなみに日本では1543年とか。ローマ時代にはエネルギー源の主役が木炭だったが、大量消費の結果森林が消えてしまったとか。燃やすだけでなく、最近では面状発熱体、脱臭剤、静電防止材、EMI(電磁遮蔽材)、潤滑摺動材、としてその用途は衰えるどころではない。面白いのは蒸し焼き温度によって炭の成分が変わること。
木の熱分解(200〜350℃)、木炭化(300〜800℃)、炭素化(700〜1700℃)、黒鉛化(1600〜3000℃)
何だか、人の教育の熱意度(温度)に似ていますね。でも黒鉛になると燃えないのですが・・・・・・。
● Report No073
/ 12月20日
『 電気で洗う(ニ)
』
前報でちょっと触れました電気石。10月の誕生石、トルマリンなる名称でオーストラリア、ブラジル、インドなどで産出される。微細な結晶は微弱な静電気を発生、マイナスイオンを放出するとか。えてしてこの種の話は針小棒大に報じられることから文献を調べてみると、食総研や大学等のものもあり胡散臭さは一応消えた。結晶物性、水に及ぼす影響、菌の繁殖抑制(レジオネラ菌汚染対策)膜透過性などなどデータ多数有り。更には界面活性作用、遠赤外線効果、電場の形成、含有ミネラルの徐放性(徐溶出性)などの研究を眺めてみるとどうも人体に優しそうだ。単なる鉱物の一種が下記の特徴を出すなんて改めて驚いた。(一部は自身で測定を確認)
■電気石層を通過させた
・水道水の表面張力が65(dyn/cm)から46に低下
・水の粘性保持数が低下し2時間保持された
・HLB値は8〜10で洗剤能力が一応あり
・水道水中の塩素が安定化する
・焦電効果と圧電効果が認められる
この鉱石の採鉱夫たちの健康状態は、他に比べて優位差があるのかとふと思った。
『 技術ニュースをちょっとピックアップ
』
最近の新聞のブレークスルー的技術ニュースを勝手に4件ピックアップ
・暗所で光る光触媒
導電性プラスチックと導電性チタンを積層して電流を加えると触媒活性化として光触媒チタン独自の洗滌機能を発揮する、と。これに光を与えるとさらに効果がアップ。
・ビタミンCを微弱電流で皮膚浸透
元来ビタミンCは皮膚に塗布しても酸素と反応して分解してしまうが、マイナス電気を帯びるビタミンCの前駆体に0.4mAの電流を加えると、イオン導入の形で染み込ませることが出来る、と。
・延びるセラミック
1650℃で1cmのセラミックが1秒後に2cmまで延ばせる新しい組織構造のセラミックが創作された。従来品に比べて100倍の伸張度とか。軽量、耐熱、非腐蝕で強靭となると本物のスーパー材。
・ナノ級金型
鉄やシリコンに集束イオンビームを照射すると深さ3μ底巾100ナノの溝(グループ)を作れると。この技術を利用すればより細径な画像を形成できる有機ELインクのインクジェットノズル用金型や、70ナノ線巾の導体回路やDNAを貯める極微小孔を持つバイオチップなどが可能になる、と。
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Report No072
/ 12月13日
『
螺旋(らせん) 』
おつむの左巻きはいただけないが、螺旋の巻貝の姿は美しい。螺旋と言えば、最近長野市郊外の塩崎遺跡より出土の螺旋形鉄釧(てつぐしろ)なる腕輪状装飾品は、巾5ミリの鉄線を16段螺旋状に巻き込んであり、同時代西日本の邪馬台国の銅あるいは青銅製の単純リング状腕輪に比べて、材質、形状、加工技術でかなりの差異があり、かなりの高度な技術があったものと推測される。
現代ハイテク分野でも、螺旋形は姿も美しく機能も評価され、いろいろな利用が、あるいは発見がある。
・構造材料としてのCFRP製のコイルスプリング
・ソフトリソグラフィープロセスで作られるμアクチュエーターのワイヤーコイルスプリング
・ワトソン等による発見のDNA2重螺旋構造体など
螺旋は長い線を狭い寸法に押しつづめ、それでも柔軟さを失わない構造が魅力だ。若者は螺旋を描いて虹の彼方へスパイラル・アップ。熟年は鉄ぐしろを付けた美女が螺旋階段を下りてくる夢を見る
『 ゲル寸考
』
生体の大部分は水性ゲルから成っていると聞いても、単なる蒟蒻のような物質とみてはいけないのは判る。それは、温度、pH、イオン、光、電場などの刺激で動く(相移転)物質で、吸収、保持、徐放、分離だけでなくケモメカニカル(アクチュエーター機能)能まで保有していると知れば驚く。それもエネルギーの変換効率が60%に達するとなると最新鋭の発電所も足元に及ばない。少しでも足元に近づこうと、人々は創意工夫を凝らして、一段一段と昇る。
(例)
・温度(熱)により、透明/不透明となる感温性
ゲルをガラスにサンドイッチした調光窓
・イオン的反発により伸縮変形するゲル
・イオン的相互作用による高分子電解質
電気応答型
pH応答型
・ゲルの伸縮を利用するDDS(薬剤徐放システム) などなどを研究中。
そう言えば目の前、いや目の内に含水コンタクトレンズがありました。
● Report No071
/ 12月06日
『 電気で洗う(一)
』
昔は灰、戦前石鹸、今は合成洗剤。合成洗剤はあまりに洗浄力が強すぎて、人の皮膚、自然界のアタックが強く、脱洗剤が叫ばれ、ついに無洗剤型電気洗濯機の出現。これは塩素を含む水道水の電気分解による作用機構。洗剤も天然ものへの回帰も進み、生分解性も重視されるようになり、最近は話題の光触媒による汚れ分解洗浄システムやガルバニック電池の原理に基づく界/貴金属の組み合わせによるものや、電気石と称する天然鉱物によるヒドリキシルイオンの発生を利用する方式など、洗剤ならぬ洗材が注目されるようになって来た。
こちらの汚れが落ちて、あちらへの汚れが移動したのでは問題解決とならない。こちらの汚れのみこちら側でつまみあげ(?)られれば理想です。電気/イオンなどがキーワードのように見えますが・・・。そう言えば電子部品の洗浄プロセスにイオンシャワーなんてものもあったような気がしますが。
イオンシャワー → マイナスイオン → フィトンチッド → ? 心の垢まで落とせるイオンシャワーはどんな色なのでしょうか。
『 銅所見
』
貴金属、金銀銅の中では、銅は低価格なれど人間生活には必須でむしろその価値は金銀に勝る。電線、プリント基板、銅葺き屋根など身近に多く見られる。偶々、手元にある銅情報をいくつか羅列しますと・・・
1.銅ファイバーの殺菌効果に関する研究発表(日本衛生協会)
同時テストでは板、線材では効果が認められなかった。対サルモネラ菌、対黄色ブドウ球菌に対して、ファイバーは8時間経過後コロニーゼロの結果(菌全滅)が出たこと
2.銅ファイバーの作り方
銅のコイルブロックを回転させながら切削工具で削り取る方式でφ25ミクロンまで細径が得られ、ニードルパンチによる金属不織布やプレスによるフェルトが作れ、電極材、フィルタ、触媒キャリアなどに使われると。
3.銅タオル
極細のフラットワイヤを編んで、荒目布状とし、汚れ機械部品のふきとり、クロスとして用いるとか。スクリューシフトのクリーニングに好適と。
4.家庭用品に使われる健康被害病院モニタ報告
によると、銅は装飾品、ベルト留め具では、国際接触皮膚炎学会基準(0〜4+の五段階)中1+〜2+のレベル。
5.発泡銅金属材料(気泡率90〜97%)の出現
6.合成繊維に(Niメッキ+Cuメッキ)処理布がEMI材としてカーテン、梱包材、壁材として利用が始まる。
7.成人には脳、肝臓、腎臓を主として100から150ミリグラムの銅が存在する。多すぎると肝炎、神経麻痺、胃腸カタル。少なすぎると動脈の伸縮性低下、知能身体発育阻害になるとのこと。
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