『
お辞儀する分子 』
金 (Au) の表面のアルカンチオラートの自己組織化単分子層 (SAM) は、いわば直線状の分子鎖が金の表面からヤマアラシの針の毛の様に突き出している状態。
この特異な分子層をうまく利用出来る筈と、各方面で研究中。
・仲人 表面にトリアジンチオール分子膜を形成した金属部品を金型内にセットして、
プラスチックの射出成型により界面接着力の強い複合部品が得られる。(岩手大)
・取巻き 4ナノφの金微子球には、πラジカルチオールが約100個、
配位子の形で取り付いて化学吸着、逆コバンザメ型物質。
・お辞儀 金の表面のアルカンチオラートのヤマアラシ的毛はその密度と毛長を適切にし、
その状態で電界を付加すると毛はお辞儀すると。
その結果、親水性の毛先が隠れ、疎水性の胴が表面に現れることに。
親水―疎水のスイッチ性が可能に。 (米国UCSB/MIT)
金に取り付いたチオール、まだまだいろいろ機能を秘めているだけに目が離せない。 最敬礼すれば何か見つかるかな。
『 植物の再利用(2)
』
何年か前までは、秋には落ち葉で芋・栗・銀杏などを庭先で焼いたもの。 昨今は安易に露天で燃やすことが出来ず、落葉焼きも今では叶わぬ夢と。
植物は、セルロースなどの天然高分子類のバイオマス資源。 その量たるや莫大。 しかし唯燃やしても、その体積に比して発生エネルギー量は少ない。
折角日光合成された高分子をもっと高度に利用できないものかと、多くの研究者がトライ中。 元来セルロースは加熱しても柔らかくならず、水にも溶けず、厄介な代物。
・ポリエチレングリコールをセルロースにまぶし、メカノケミカル反応を起こさせて
一種のアロイ化し、成型可能に変性させる技術。 (AIST)
・牧草を粉末化し、廃プラスチックと混ぜて牧柵用成型品を得る。 (北海道標茶町)
・砂糖黍 (サトウキビ) を原料とする乳酸ポリマーを得て、
生分解性の自動車用内装材の開発。 (トヨタ自動車)
・マイクロ波によるセルロースの分解 ・急速照射による活性炭化
・熱分解液より糖液レボグルコサンの抽出
・ガス化による一酸化炭素の発生
思えば縄文・弥生時代から昭和20年代まで、バイオマス (生物資源) の有効利用は当たり前であった。 間伐材は割り箸に。
杉の樹皮は屋根葺き財。 稲藁 (いねわら) は、草鞋 (わらじ)・藁縄 (ロープ)・屋根材の下地層・蓆 (<読み:むしろ>
カーペット)・包装材としての俵・叺 (かます) など。 それらの廃棄に至っては堆肥にと、余すところなくリサイクル。 お年寄りの経験・知恵が改めて見直される時が来た。