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● Report No121/ 11月28日

低反発弾性体

 今、寝具で、テンピュールなるNASA技術に基く低反発弾性体が話題になっている。ゴムのようでゴムではなく、外力変形にはゆっくり復元するマシュマロみたいなもの。これは特殊なウレタンスポンジだが、他の技術手法によっても得られ、配合次第では医療保険分野での臨床実習モデルとしての生体ダミー材として、機器分野での衝撃吸収材、シール材等としての効果も期待できそうだ。その一技法として構造的には極細の弾性フィラメントの3D網状構造造体を骨格とし、隙間に超軟質体が充填された形の複合体が考えられ、開発も進んでいる。従来までのシリコーン、塩化ビニール、アクリルアミドなどのポリマーマットに水性ゲルを組み合わせしたものやシリコーンゲルは今一つのレベルであるが、JIS−A硬度で0〜10、柔かい(軟いではない)弾性力と表面の独特の指圧感触性のある材料は魅力だ。赤ちゃんのお尻のプヨプヨを工業的に製造できるとなると思うと楽しい。しかし生体程難しい物はないと心して、モドキステージ1に踏み出した人に注目しよう

 鴨長明の方丈記の冒頭は"行く河の流れは絶えずしてしかも元の水にあらず。よどみに浮かぶうたかた(泡)はかつ消えかつ結びて久しくとどまることなし。"泡とは液体が気体を含んで丸く膨れた玉のこと。その泡は儚いもの。しかしその泡を作り出すか、できた泡を消し去るか。前者はソフトクリームアイス、後者は発砲スチロール、スポンジなど。ハイテク分野では半導体シリコンウェハーのダイシング時の固定と剥離に加熱発砲型の粘着シートや光硬化性オリゴマー類に発泡剤を用いて光発砲硬化物を得る技法などは面白い。後者ではアルミダイキャスト機に脱泡(真空ポンプとタンク)システムを組み込み、高密度アルミ鋳物を可能にし、その結果強度/重量比効果で+30%と。又、視覚障害者用の凸版インクに発泡型を用いる立体コピーもユニークだ。
 まだまだ、泡喰わないで泡の手綱をとろうとするところにテーマが存在するようだ。

 

● Report No120/ 11月21日

乳化

 水と油をエマルジョンにすること。食品で言えば牛乳、マヨネーズ。混ざり難しいものをなじませるのだから、そこに乳化剤が要る。乳化−水の中に油の微小滴(O/W)とその逆の(W/O)がある。滴と言っても大きさはいろいろ。ドイツのレストランでのサラダドレッシングは大匙にオリーブオイルとワインビネガーを好みでたらし、フォークで簡単に混ぜるだけ。とても乳化状態とはいえない。一方市販のマヨネーズは、油・卵黄・酢・塩と少々の香料を独自の配合比で乳化材にかけると出来る。又、化粧品会社は独自の乳化剤と乳化工程技術を武器に超微細滴の乳液類を誇る。若し、油分に反応性の基をもつものをW/O型エルマジョンにし、光反応で固化せしめ含水ポリマーが容易に得られるとしたら、どんな用途が拓かれるでしょうか。乳臭いアイデアでしたか。

反(はん)/Anti-

 反対の反、反の字は反作用、反射、反証からも"正"に対する負、それも積極的な負の印象を受ける。その最たるは、反宇宙、それは陽電子とは逆の電荷をもった反核子たる反粒子で構成されている宇宙で、陽と触れたとき、瞬時に消滅してしまうと言う。そんな宇宙の根源に触れる様な物質原子番号マイナス1の反水素原子が日本の研究チームにより、大量生成しえたことのこと。これが1グラムあれば1台の自動車が10万年走れるエネルギーがあると。核融合の先のエネルギー源として期待できるかも。一方 現実的な"反"ではブルーディスクの技術分野でポリカーボネートに反可塑剤なる成分配分によって靭性率は下がるが、弾性率は上り、高転写性が改善される技術が開発されたと。
 さあ、いつも正は陽、陽は中心、の見方には反発し、反骨精神をもって"反陽"を追ってみましょう。
 ノーベル賞田中耕一さんのモットーは「常識にとらわれない」と。世に言う常識は集団催眠が生み出した現象であったこと。事例は多々。

 
 

● Report No119/ 11月14日

相転移

 京劇の百面相の、国家的機密と迄言われる位の瞬時の仮面替えや、歌舞伎の衣装の早変りではありませんが、科学的相転移は原子、分子のミクロ構成要素の相互作用なる協力現象と把えると、固体の融解や液体の気化、キューリー点の存在等その意味は大きい。
 ・側鎖型高分子液晶の温度による光散乱状態となる可逆的表示方法。
 ・等方相転移温度がガラス転移点よりも高いポリマーによる記録デバイス。
 ・アクリルアミド系共重合ポリマーの温度/電場応答性。
 ・温度応答型体積相転移する弾性率可変の含水高分子ゲル。
 ・所定温度で結晶構造がアモルファス化するアクリレート系粘着剤。
一方無機系材料でも、酸化物系セラミックの光励起状態での(光子−電子−格子)系相互作用についての研究も有る。即ち超電導酸化物の常温・可視光の下、光による誘起相転移(構造変化)するとか。すごいですね。 物質の相転移は可逆性がえてして価値が高いが、人の場合の相転移は信用を失ないかねないから要注意。

独創的材料

 ナショナルプロジェクトとして(工業技術院/NEDO/科学技術戦略推進機構(JCII)/大学/企業)が連携して、H8〜H12の研究期間、H13評価期間なる「独創的高機能材料創製技術」の評価公表がH14にあった。その一部を羅列し、その独創成果に敬意を示したい。
 ・感熱応答性ポリマーを利用して、磁場との複合刺激により、タンパク質、酸素などの生体物質の分離に成功。
 ・多孔質シリカ・マイクロカプセル内部に薬剤とゲルを内包させ、PH・温度に応答した放出速度制御を可能にした。
 ・水中で機能発揮する電場応答屈曲材料を開発。
 ・遷移金属触媒を用いてリビングラジカル重合法により、分子量の精密制御なる基盤技術の開発に成功。
 ・塗装性能を向上したポリオレフィンの製造技術につながる重合制御技術。
 ・革新的ポリカーボネート、定序性ポリウレタン、新しい芳香性ポリマーが新規の縮合重合技術により得られた。
 ・三次元ナノ構造を持つ自己集合型ポリマー(新規ナノチューブ)。
何れも工業化段階迄はまだまだハードルはあるものの、その応用性は極めて広範囲に互い、21世紀は"化学の世紀"と言われるその中核技術たり得ようと感ずる。拍手。

 

● Report No118/ 11月07日

フェロセン

 辞書によれば[Fe(C5H5)2]なる分子式で金属と有機物の合体もの。面白いのは、C5H5なる5角形の環盆2枚に鉄(Fe)原子がサンドウィッチされており、盆はくるくる廻っているとなると、何か期待させる効能があるかも。鉄の替わりにコバルト、ニッケル、クロム、バナジウム原子のものもあり、メタロセンと総称し、個々に独自の色彩をもつと。若い研究者がある時、ラジカル重合の助触媒として有用ならば、アニオン重合ものにも適用したらどうなるかなと試したところ予想もしなかった現象(効果)が現れた。即ち、瞬間接着剤として知られるシアノアクリレートに光硬化性が付与されたのだ。接着操作時に、はみ出したシアノ液の悪さ加減を光照射で簡単に押さえ込めるのは大きい。有機金属化合物メタロセンは思わぬ技を随所に見せてくれる。ポリオレフィンの重合触媒としての力量はその代表例だろう。妙チキリンな化学構造物は、それなりの不思議な動きをするなら、まだまだ数多くの妙チキリンものを撫でてみたいところ。

「マイクロ接着・ガスケッティング」への設問

 [問題]1ミクロン径の貫通孔が多数(ピッチは5μ)ある部材同士を接合して孔の延長を計り、個々の孔に流体を流したい。
 [問題]マイクロ溝(1μ深さ、1μ巾、溝同士ピッチ5μ)がパターン状に形成されている基板に上蓋を装着することによりマイクロチャネル網を形成し、流体を通したい。
 
いずれの場合も、どのような接合・ガスケット方式が考えられるだろうか。MEMS(Micro Electro-Mechanical System)やμTAS(Micro Total Analysis System)デバイス類の製造プロセスにおいては、その接合・ガスケッティングは流体制御の特性値を左右するほど重要なポイントである。
 さあ、ベター、ベストソリューションを案出してみましょう。
 なお、被接合材の材質によってプロセスは変わりましょうか。

 
 

● Report No117/ 10月31日

DNAの最近の面白ニュースから

 (1)NTTではDNAを溶かし込んだインクでバーコード印刷して究極の真贋(ガン)判定に用いるという。万一の時、まさに葵の御紋ならぬDNAパターンで黒白着ける算段。小説家好みの技術。
 (2)海洋科学技術センターは、深海微生物の遺伝子を使って遺伝子の運び役たるベクターを開発したと。従来技術の1000倍の酵素合成能力があることから、タンパク質の量産への道を開くかも、と期待されている。産油国にはタンパク質供給で、なんて構図も夢ではない。
 (3)神奈川科学技術アカデミー(KAST)は完全長cDMAの合成・クローニング・同定の一連の技術開発に成功と。これはDNA塩基配列と言う一次情報をタンパク質の構造機能と結びつけ、病気発症機構の解明、遺伝子治療ゲノム創薬に利用していくための最重要テクノロジーとか。  いよいよ人間の身体への応用研究が本番に入れる、と。
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 30年前頃は「半導体チップが社会を変える」と言われましたが、今日は「DNAは人を生かす」と言えますね。

一液性で100%室温で反応固化する液体

 上記液体は今では常識レベルの材料。しかし昭和30年頃は夢のテーマの一つであった。ところが、まもなく米国からシアノアクリレート瞬間接着剤の発表があり、他に嫌気硬化性のロック剤も出現した。昭和40年代にはいると、シリコンRTVが上市されるようになり、シール、ロック、接着工程は各段に簡便になった。
 しかしながら多様な市場ニーズに対応するために、光硬化剤(Rad-Cure)の技術が花開き、電子デバイス、光学素子から塗料、構造材料に至るまで、産業界では欠かせないものとなっている。これらとは別に冷凍方式で室温反応を一時的に押さえ込むフローズンシステムも航空機市場では用いられている。
  一液性とは、常温で反応するのに保存性が一定期間必要との二律相反をどうクリアするかを研究したもの。一方二液性でも機械(装置)によって、オンライン性を向上させようとの方式もあり、また、中温(80℃以下)の加熱で硬化させようとの方式もある。環境に優しく、エネルギー消費も少ない今様の技術で射出成型材料としても注目されよう。

 

● Report No116/ 10月24日

面白テーマのつまみ喰い

 文部科学省が関わるテーマリスト(2001年度)を見ると面白そうなもの多々。いくつか勝手に抽出。
 ・海洋深層水を淡水とconc海水に分離。これらを超高圧装置を用いて漬物や化粧水の創製を。
 ・日本酒は超精白米から醸造しているが、玄米から造れば糠の排出が抑えられるメリットは大。
 ・設計物をVR技術で立体表示し、更に触覚や反応を擬似的に発生させ、設計者が重量感や凹凸感を容易に把握できるようなシステムを。
 ・ジェット燃料の飛散による空港周辺の環境保全のため希薄系の油分を食べて分解してしまう微生物の探査と利用システム。
 ・気泡が極めて小さな発泡プラスチックの成型技術。
 ・石炭灰より多孔質材料を恵右合成方法と新現性の触媒や吸着剤を開発。
研究発表が待たれますね。

バイオメトリクス

 電子商取引時代に入り、セキュリティーのための個人・法人の認証技術の開発が各方面で鋭意進められています。カード類(IC,磁気)や、暗証番号方式が既に広く実用化されています。こうしたセキュリティーはもちろん、不携帯−忘れたり、盗難にあったり−状態では役に立ちません。
 認証手段の研究としては、個人そのもの、即ち生体の個の特徴を利用するバイオメトリクス認証が進められています。殊に高度に安全性が要求される軍事、核、毒物分野などでは絶対です。人の個の特徴としての、指紋、眼球の虹彩、声紋などを認識するものもありますが、最新技術では指の静脈パターンを赤外線吸収で読みとる方式の開発が進められています。スパイが敵陣に潜入するとき、虹彩・指紋はもとより、声紋(録音ものでごまかす)に至るまで、借り物型で扉を開けるシーンをよく目にします。だが、静脈の動きまで借りることは不可能だと思われます。
 いつもセキュリティーの事に話が及ぶと:
 「この島には鍵はいらんのよ」と離島の住人の言葉を思い出します。心臓の鼓動までセキュリティーに関わってくるとはドキドキ。

 

● Report No115/ 10月17日

光は二役

 光は波(動)でもあり、粒(子)でもある、と教科書にある。光の時代を迎えて続々と光関係機器が出現するも、波か粒かを理解出来ていない頭では混乱するばかり。そんなとき「光技術の成長と成熟」(森川滝太郎 著)なる論文に触れ、理解が進んだので一寸ご紹介。
 光の通路を行先別の線路に見立てて考えると判り易い。即ち、光を出す光源としての太陽・ランプ・レーザー情報を乗客とし、乗車口としての光変調器、降車口としての光検出器、乗―降を結ぶトンネルが光ファイバー。
  ・光が空気や物質の中を伝わって行くとき、波動の性質を示し、
  光ファイバー 光ディスク 光変調器(光の強さ、波長、偏光の向きなど)
  ・光が物質に吸収されたり放出されるとき粒子の性質を示す。
   ・光検出器、フォトダイオード、太陽電池は光を電気に  
   ・レーザーは電気を光に
更に詳しくはどうぞ書店やインターネットでどうぞ。

へき開構造

 子供のころ、電機ヒーターに使われていた雲母板が際限なく薄くはがれるのが不思議だった。今日ではAFM(原子力間顕微鏡)で層版物質の格子像が見えるとか。化学的にはへき開構造といい垂直な方向は結晶を構成する原子、分子の結晶力が殊に小さいことから来ると。シリカ(酸化珪素)の二次元シートが形成されている雲母(マイカ)、アルカリ金属やルイス酸などを層間に介在させている黒鉛(グラファイト)ナノテクの時代、折角ナノ級の分子薄膜が天然で存在しているのならば、層間物質の作用結合力を無力化出来れば、その結果莫大な累積表面積を有するフレークバルクが得られることになる。そのシートフレークの表面に導電性を付与したり、触媒機能を持たせたり層間に或種の細工をして光学的機能を付与したり、ポリマーと組み合わせ新現性の複合材料が得られたり、その利用は広い。超薄っぺらの物質が明日を拓くものに連なっている様に子供の頃の不思議が次々と華ひらくのは楽しいことです。

 

● Report No114/ 10月10日

電磁波

 新聞の投稿欄のある一文”長々の携帯電話トークの若い女性に業をにやした紳士叫ぶ−君は俺を殺す気か、俺のペースメーカーと組むつもりか−と。”電磁波が人の人体に悪影響を及ぼすのではないかと永年議論されて来た。高圧電線のしたではガンが増えるとか、携帯電話の発生電磁波は耳元で脳を悪くするとか等々。何れも差ほど心配するに及ばずと結論が出たようだが、電子レンジの波長となるとDNAの損傷やガンの発生の恐れはあるようだ。それだけにシールド(遮蔽)措置が法で定められており安心してよいようだ。即ち電力密度を規制している。自然が作り出した万能の霊長たる人間の精緻を極めた仕組み、構造、知能、作用機序などと、その人間が作り出した電磁波なる見えざる魔の手がどんな悪事を働くかは鮮明の途上にあると言えよう。
 それだけに安易に近づかないほうが賢明だろう。

食虫植物

 日本では、モウセンゴケやムシトリスミレが虫を食べる草だ。虫を招き寄せ、捕獲し、溶かして消化してその養分を吸収し、成長繁殖する次第。クロロフィル光合成活動をしているから当然植物だろう。サラセニア草はその感覚毛に2回、虫が触れると捕獲するが、消化するのは胃に当たる茎の中、茎を裂くと虫が一列にぎっしり詰まっているのは驚き。捕虫方法も落とし穴型(ロート状、壷状、管状)わな型(吸込型、閉じ込め型)鳥もち型(いろいろな形の毛)などなど、自然の進化といいながら、多肢多様化の有様には脱帽。何故こんな進化をと調べたら、荒地で栄養乏しい土壌に生育するにはどこからかでも窒素・リン・ミネラルを補充する必要に追い込まれた為との事。生きてく為の努力、工夫と順応には敬意を表したい位。これらは植物だから、根付いて動けないが南アメリカのギアナ高地では、胞子が蜂の体内に沈着し植物として成長する草もあるとか。”小が大を飲み込む”どころかDNA集団が他の有機体を、担体として誕生一生育するなんて、進化の恐ろしさを感ずる。産業界でもこの形がやがて出現するかも。

 

● Report No113/ 10月03日

ハイブリッド(HYBRID)

 辞書には雑種、混血、混成物とある。ハイブリードコーンと言えば一代交配種で二代目は劣等種とか。算数で言えば掛け算、時には1.0以下マイナスの場合もある。物質(材料)分野では、その最たるものは有機物と無機物のハブリッドであろう。それは光学、医療、電子、構造材料等として、いわゆるハイテク材料を形成できるから。それは独自の光機能材であり、防食膜であり、磁性体である機能性粉体であり、抗菌剤であり、新しいセラミックであるから。有機・無機のそれぞれの機能が掛け算的に発揮されるなら、そこにスーパー材料が生まれるとなると研究者はあれこれ考える様になる。熱に弱い有機材料に無機材料を組み込む工夫、その先にスーパーハイブリッド材料が在る。
 最近、その技術手法としてゾルゲル法やインターカレーション方が注目されている。無機材に有機分子を組み込むのも狙いは同じ。これは言い換えれば有機の振舞いをする無機材料とでも。生きている無機材料、これこそハイブリッドの極致ではなかろうか。今をときめくナノテクの多くもハイブリッドベースが多いように見える。何と何を組み合わせ、どんなプロセスで加工し、どんな特異性が出てくるのか。その特異性を何に組み込むとインパクトが出てくるのか・・・を。

薄っぺら化

 30年も前から軽薄短小の4文字がハイテクの基本要件でした。この中で薄が難しく、可となれば軽薄短小は連動して楽になる。薄っぺら化研究で最近ニュースからピックアップ。
 ・プラスチックフィルムの上に形成したシートコンピュータ用TFT(低温ポリシリコンTFT回路とディスプレーの一体化)−富士通研究所
 ・可溶性ポリマー半導体材料のポリチオフェン製膜により、サブミクロンのチャンネル長の有機FET回路(電界効果トランジスター)素子を印刷プロセスで形成できる−産総研
 ・ポリマーフィルム上にコンデンサー抵抗を厚膜形成しそれを積層してシート状素子を得る−松下電器
 ・耐熱性ガラスにTFTを形成したのち薄シート化しフレキシブル材料とラミネートして得られる低温ポリシリコンTFT-LCD−東芝
 ・電子粉流体−パウダー上ポリマー粒子を電子にすばやく反応する様に表面加工して電子ペーパーに−ブリジストン
 ナノテク材は超薄であるだけに、今後続々と、上例を凌駕するニュースにお目にかかれましょう。

● Report No112/ 09月26

新鮮度

 冷蔵庫がまだ普及していなかった子供の時代、母は味噌桶には蕗の葉を入れ、饅頭は杉の葉に乗せて、それぞれ黴が生えない様にしていた。現代では生鮮食品は梱包材料や物流システム(エアーカーゴ、コールドチェーンなど)が開発、整備されて格段の進歩が見える。野菜類がその鮮度が保たれるのは、低温、高湿度、ガス条件、低エチレン性であることが肝要とある。必然的に梱包フィルムには機能性の成分、それも出来れば前述の如く天然、自然ものを塗ったり、練り込んだりと相成る。
 ・ヒバの間伐材から抽出したヒノキチオール油を。
 ・吸着機能有する鉱物ゼオライト粉を。
 ・ワサビエキスをフィルムにコーティングして。
 ・電気石トルマリン粉を。
 ・フィルムにO2、CO2、H2Oガスの通気微細孔をあけて。
最新の研究になると
 ・収穫トマトを40℃処理すると成熟遺伝子が抑制される(サーマルショック法)。
 ・レタスには玉ねぎの絞り汁を少々ふりかける処理方法など。
食品の保存、安全性の開発は万人に関するテーマだけに、天然の保存料の探素は重要テーマでしょう。

ウルトラコンピュータ

 現在の技術から見れば、草創期の真空管計算機エニアックは信じられない位幼稚であろう。最先端の”地球シュミレータ”と称するスパコンは温暖化予想、エルニーニョ現象、異常気象予測を狙って開発されたもので海洋技術開発センターに設置された。35兆回/秒計算速度のプロセッサーを5120台連結したもので、エアコンは大倉庫風建屋に設置されている。若し、今話題のナノテクで量子ドット・量子コンピュータ・DNAが作る電子回路、分子レベルのナノワイヤー配線などが出来逐次高度化された時、スーパー・スーパー、即ち、ウルトラコンピュータはどんな寸法に納まることでしょう。上記地球シュミレータも段ボール1個分だろう。若し、それを5120個連結したら何が読めるようになるのだろうか。ひょっとしたら自己組織化、知を生む機能が発生し、人間と機械の中間能を有するところの身体は機械、知能は準人間なんてものにでもなってしまうかな。ヌは組上げ能の方向ではなく分解能の方向へ動いて精度を徹底的に高めて行くのかな。例えば富士山が風化して3000メートルになるのは000世紀とか。人間いろいろ知りたがり動物でその欲望は果てしないが”知らぬが仏”と言う言葉もありますね。

 

● Report No111/ 09月19

鋳込み成型

 泥しょう(水に分散された陶土やセラミック微粒子)を石膏の形に流し込み、吸水性石膏の面に触れたところだけ固い脱水層が形成されるのを利用して、複雑な形や薄作りのセラミック成型物が得られる成型法。しかし乍らその微粒子の親水性/疎水性の度合いで分散助剤、水、水性有機溶剤の調合技術はノウハウ扱いになっている程。この優れた素質を持っている成型プロセスが単にセラミックのグリーン成型プロセスに利用されるのみではなくポリマー系にも応用されるべきと私考する。例えば
 ・熱可形性ポリマー系微粒子泥しょうによるグリーン成型物を得て、型内に熱風吹き込み成型物を得る。
 ・同上方式で熱硬化性ポリマー微粒子泥しょうの利用。
 ・RP(ラピットツーリング)製型の内面に離型層を形成せしめ光硬性液状レンジにて内面コートし、のち光照射せしめて成型物を得る方法。
 旧知のプロセスに新規性の材料を組み合わせる手法は宝の山。世の中自分が考えたことは既に10人の他人が考えているのが常。上述案も調べれば既に進行中でしょう。

生体で薬を造る

 薬を、動物の生体細胞活動機序を利用し、人体に有用な薬物を生産(分泌)させようとの技術が注目されている。新薬の大半は複雑な化合物によって得られているが、超複雑な、それも構造式そのものですら充分解明されていない生体高分子物質となると、合成に程遠いし、いわんやそれら複合混合体ともなると人手では不可能に近い。そうなると生物の神秘な細胞活動の助けを借りて創り出そうと人は考える。
 ・がん治療用のインターフェロンをラットの内臓に産生せしめる工場(材原生物化学研究所)
 ・メシチリン耐性黄色ブドウ球菌(MARSA)やバンユマイシン耐性腸球菌(VRE)への治療薬を、昆虫体内の特殊たんぱく質産出微生物を通して得ようとする研究(オーストラリア・エントコズム社)
 薬ではないが、世界の奇人変人の紹介記事の中で、身体からセルロース繊維や、ロウ状物質、石粉などが皮膚から排出される事例などを見る時、何億年も生存進化して来た現代生物の細胞の活動作用について、人類はほんの一部すら知り得て居ないものと改めて感ずる。

● Report No110/ 09月12

RPの進化は・・・

 RP(ラピッドプロト)なるシステム技術がRM(ラピッドマニファクチュアリング)のキープロセスとして注目されている。原理はNC駆動の光ビートを光硬化性レンジ浴に照射し、硬化した分だけ浴中に沈めて逐次積層に行く技法。金属粉末をマイクロスプレーで積み上げ焼成する方法もある。原理からすると、従来成型法では得られない湾曲管や複雑突起物迄可となり、図面から直接読み取りで短時間で得られる超便利性。得られた成形物は最終部材として、或いはマスターとして複製品作りに、表面をメッキして成型金型として等モデルシミュレーション材、型とその応用分野は広い。こうなると単にポリマー成形物や、金属のグリーン成形物の枠を越えての進化が必然的に予想される。
 量種材料との複合成形やハイブリッド成形だ。
 ポリマー(光重合熱可塑ポリマー、光重合エラストマー、マイクロスプレー対応のマイクロビース状ポリマーなど)、金属(構造材用金属紛、導電用金属粒子)セラミック(粉、粒、ゾルーゲル、光学材)を材料の組み合わせ、システム装置の組み合わせ、プロセスの順序、特定の利用部位設定など工夫すれば、デンドリマーポリマーの如き、大輪花火の如く、多岐に拡がり輝くことでだろうと直感。

苦い経験

 事例1)自動車用ファスナーの表面処理加工で不良が発生し、発注元による品質管理体制の監査で徹底的立ち入りを受けた。半年後注文量が減り、生産台数は変わらないのに変だなと思ったところ、発注元自身が加工事業に乗り出していた。
 事例2)レジンモールド電磁弁を制御機メーカーに納入していたが品質強化の名目で検査を受けた。半年後発注打ち切りの通告があった。後日全量自社生産に移ったことを知った。
  事例3)半導体素子封止用タブレットの取引が増大してきた頃、”万一の為の第2サプライヤーの準備”なる名目であったので、技術ポイントの開示をした。半年後注文打ち切りとなり、その系列会社が生産開始していて事を知った。
 昭和40年代は、特許押さえ、取引契約書の整備迄の防衛体制が無く、とにかく客先の希望することは出来るだけ応じて協力しようとの意識のみで対応した次第。
 西欧のある国では”だまされる人が悪い”と言うが、日本人には添わぬもの。愚直は美しいと今でも確信している。

 
 

● Report No109/ 09月05

空洞づくり

 九州の「青の洞門」。渓谷の甌穴。さらに、子ども砂山の手堀トンネルなどの空洞から、蝉や蛇の抜けがら、さらには鋳物のロストワックス法による空洞のあり様まで、世にさまざまの空洞があります。微小サイズの時代の空洞研究はどうなっているのでしょう、と最近の情報をチェックしました。
 ・ニッケル金属のマイクロチューブ(東工大)
  繊維に無電解メッキを施し、アルカリで芯の繊維を溶解し、チューブを形成。 電池用電極に利用。
 ・セラミックのナノチューブ(九州大学)  
  らせん状の有機ゲル繊維を芯にして、シリコンの吸着鞘を形成させ、焼成に より有機質を揮散させ、チューブ形成をする。医薬品製造用触媒に利用。
 ・セラミックスポンジ(産技研、九州)
  スポンジや段ボールにフェノール/シリコン複合剤を含浸コートし、高温焼成 により、元の形状通りのセラミックが得られる。フィルター用に利用。
 茶室は僅か四畳半でも、そこが宇宙といわれる。ナノ室も見渡せば原子・分子の壁に囲まれて、一つの宇宙。電子の動きまで見えるとなると落ち着けるかな、ちょっと心配です。

ガスケット

 液体や気体が機器類から漏れ出したのを止めるのは難しい。もれないように予め措置するのがシール技術。運動部位のパッキンと固定部位のガスケットやネジ部のシール材がそれにあたる。自動車エンジンでいえば冷却水、エンジンオイル、ガソリンなどがその流路から漏れたら大変。現在では封印エンジンなるメンテナンスフリーもシール技術の恩恵。しかし排ガス規制問題からメーカー各社は懸命のFC(燃料電池)車の研究開発。FCは構造からエンジンオイル系(オイルポンプ、オイルパン、ヘッドカバー等)部材や付属ファスナー類が不必要になり、燃料もアルコール、特殊ガソリンや水素ガスとなると従来技術の延長では済まない。イオン交換膜とそれを挟み込むセパレーターを単位とするセルが多数積層されたスタックを組む構造の場合、膜/セパレーター接面のシーリングが極めて重要でシーリング材、加工プロセス、コスト等で高度の技術が求められている。このFCが極小サイズ化してモバイル用の電池としての利用されると、流体用シール材がLCD以外のIT機器に及んで来たとは面白いですね。