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● Report No180
/ 02月26日

化学 ―2つの会
1.化学イノベーションシンポジウム(日本化学会)から。
 瀬谷会長が「知の爆発」と公演されました一文。「知の爆発は破片が四方に広がるだけでなく、一見違う方向に飛んでいく。破片と破片の間から新しい知が生み出されるのが特徴。化学の対象領域は、細分化の一方、それらの融合で新しい課題が生まれ、まさにそれは爆発。化学は基礎学問。化学産業はあらゆる産業に中間材の提供をする基礎産業」と。

2.つくばテクノロジーショーケース(つくばサイエンスアカデミー/江崎玲於奈理事長)
 こんなテーマがあったのかと個人的に感心したいくつか。
   ・注射で軟骨を再生する材料
   ・病原菌を病気にして農作物を守る
   ・シュリンク包装した紙カップ容器に於ける昆虫侵入防止法
   ・導電性高分子ナノワイヤーの作成
   ・電源切れても消えないメモリー性液晶
   ・キトサン膜による除湿技術の開発

 いずれもが破片と破片のくっつき、それを眺めたこちらもどうくっつこうかなと、そそられる。


洗う
 界面活性剤や有機溶剤が一般的に用いられているが、いろいろな方法が開発され発展している。微細粒(セラミックビーズなど)を吹き付けてとなると、炭酸ガスドライアイス粒でも良いとシステム化される。幸い固体の炭酸は有機溶剤の機能を持ち乍ら粒ゆえの機械的物理作用も併せ持つ。非溶解の接触型の固体洗剤(?)はと、ボルタ電池型のMg−Cu金属の組合せや、アルミニューム―トルマリン(電気石)型もある。物質は使わない方法はと紫外線照射による表面洗浄化技術も実用化され、超音波洗浄と同様、エネルギー印加のみで便利。さればと、今をときめく光触媒酸化チタンで常時表面浄化の方式は画期的。
 技術の分野での研究は拡がる一方だが、今の社会では心の洗浄剤がもっと求められましょう。

  それは 聖者の言葉であり、
      ある人々の行為であり、
      自然のたたずまいであり、
      血縁同士の波長であり…。

● Report No179/ 02月18日

粒の経験

 粒に大小あり。ビー玉遊び、粟菓子、丸薬のいろいろは子供達にも身近なもの。技術の世界では、センチメートルからミリ、ミクロン、サブミクロン、果てはナノに至る迄の寸法。材質も、セラミック、有機材、金属、それらの複合体のいろいろ。振り返って見ても、意識した訳でもないのに素材として「粒」に触れていたのに改めて驚く次第。
  ・接着剤や特殊色素を内包したマイクロカプセル
  ・化学触媒を染み込ませた多孔質セラミックマイクロビーズ
  ・異方導電性フィルム用プラスチックビーズの金属メッキ
  ・半田粒子の正方格子配列プロセス
  ・PSマイクロ粒子のマイクロコンタクトプリントによる整列 等々
 物質の表面エネルギーの自然の在り様が、その結果として丸い形状をもたらすので、粒といえば丸―球で、四角い粒なんてあまり聞きません。丸は扱い易い。それが作る人にも使う人にも一番。角が立っていないからストレスを齎さないので一番。


異方導電性

 物質の物理的性質が方向によって異なることを指し、例えば、圧延した金属や引っ張りを加えた繊維などは結晶軸の方向に対して異なる強度を示すのは身近に知られている。今や異方導電性接着剤はIT機器、デバイス等の微細配線接合に、又、それらの回路や電極の検知・測定材として欠かせない存在。その製作法も多様で公開特許だけでも数百件に及ぶ有様。
〈例〉・シリコーンゴムシート中に電極針を整列突き刺し
   ・厚み方向に導電性繊維を配列埋め込み
   ・接着剤(材)の中に導電性のマイクロビーズを分散させる
 この異方性と対比されるのが等方性。即ち物質の物理的性質が方向によって異ならない―即ち等しいこと。何か人の性格の表現語ですね。
  ・等方性 ― 丸い、当りさわりの無い、平均的、八方睨み、右顧左眄(うこさべん)
  ・異方性 ― 一方向、俺は俺、偏屈、個性
 外見等方、内味異方なんてスマートですか…。

● Report No178/ 02月11日

形状記憶合金
 脳もないのに無機質の金属に記憶能があるのか不思議だった。そのメカニズムの判り易い解説があったので下記します。
 「形状記憶は金属の原子の結びつき(格子)によりおこります。低温時それぞれの原子を結ぶ格子は、菱形が安定。一方高温時は正方形が安定。力を加えない低温時は菱形の格子が不規則に分布しているので、見かけ上は高温時の外形と変わらず。しかし菱形格子は力によって簡単に偏るので力が加わると大きく変形します。そして力を取り除いても変形したまま。再度加熱し、高温状態にすると今度は格子が正方形に戻る為、変形前と同じ外形に回復します。この状態で力を加えず低温状態にすれば変形しない元の状態になります」と。
 今のところ携帯電話のアンテナ、ブラジャー用針金、メガネフレームなど身近な商品にも利用されていますが、大きなものになると航空機の翼に組み込み空力特性の向上と軽量化を狙ったスーパーウィングを開発中とのこと。この種の合金を他の材料と組み合わせて形状変形に関わる新規性の部材の開発も進められていることでありましょう。さあ、考えて見ましょう。
 ・光硬化性シリコンゴムと、・形状記憶ポリマー(例 ポリウレタン系)と、・ナノカーボンの薄層コーティング、・有機CVDによるコンフォーマルコーティング、・光ファイバーと、・・・

醸造
 微生物の醗酵作用を利用して食品を作ることを意味する。醸造家に生まれた為、醤油倉、味噌倉の柱や梁にびっしり付着しているカビには慣れている。そのところに工場見学の子供たちが臭ぁーいとか汚ぁーいとか言って顔をしかめるのを見て自分が笑われた思いは今でも記憶にある。日本の食生活ではこの醗酵という作用を巧緻に利用したものが多く、いやこれが中心であると言っても過言ではない。醤油・味噌・日本酒・納豆・鰹節、種々の漬物・魚の干物・酢・すし・ハム・ソーセージ・パン・チーズ・ヨーグルト・焼酎・みりん・甘酒など、改めて日本人の食の中核を占めるものと認識した次第。先祖から延々と伝えられて来、、又、生き延びてきたのには単に“美味しい”からのみならず高温多湿の風土に合うような保存性と、生命活動に必須の栄養分に富んでいたからに他ならない。蒸した穀物にコウジカビがついた「麹」の発明・発見とその利用を考案した先達に感謝。偶々進路を化学合成としてしまったが麹酸の構造式だけは奇妙に憶えている。味のある構造式ですね。
 好物の一つは“野菜の浅漬けに鰹節けづり節をふりかけ、醤油を少々たらしたもの”。この3種とも醗酵食品だと気付いた。

● Report No177/ 01月28日

光で造る FRP

 光で硬化するモノマー・オリゴマーの利用は全盛期を迎え、電子・光学・塗料・インキ・接着剤などで今や不可欠。液体が光で迅速固化するとなると、構造材用のFRPに利用しようとするのは当然のこと。FRPのFに当るガラス繊維は、一応光透過性があるので、都合が良い。とは言ってもUV(紫外線)は侵入到達深度が浅いので厚肉成型物は得られにくい。そこで可視光(VL)〜近赤外光(NIR)での反応触媒の開発が進み、1〜2ミリ厚のものは容易に得られるようになった。メタルハライドランプを用いれば、日陰の所でも硬化させられるので、建物やプラント類の簡易補修には便利である。
 米国では、エポキシ化アマニ油を太陽で硬化させたFRPカヌーを作っている。そこで、ガラスより強度的に遥かに優れるカーボンファイバー系FRPを光で作れないかとの開発もある。黒色ゆえに光は透過しない。しかし乍ら表面で一旦反応が起これば、その反応熱で連鎖的に重合させる手法で、深部まで固めてしまおうと。幸い、光ランプは光+熱が放射されるので都合が良い。‘90年頃、3〜4ミリ厚のCFRPを数分の照射で得たことがあったが、最近はどうなっているのか情報覗きをしてみた(→光で造るFRP(2))ところ“やっぱりさもありなん”でした。

 前段で触れたVL―NIR光による硬化技法でも、数ミリ厚が限界とすると、センチ単位厚の要求には程遠い。さらばオーソドックスにオートクレーブ炉でとなると、生産性・コスト・エネルギー損等の問題多々。そこでフランスやカナダの研究機関では‘90年頃からEB(電子線)硬化技術に取り組み、10センチ厚以上のCFRPが得られている。シームレスの応力分散性に優れる3D形状の超厚肉CFRPは未来の航空機に不可欠かも。いや、ひょっとして、この先宇宙線硬化型プリプレグ毛布を宇宙で広げて、増室材に使われるかも。繊維長の極めて短いVGCF、CNT、ホイスカ系の強化プラスチックも又、念頭にしておくべきか。既に、ナイロン/クレーのナノコンポジットは実用段階に入っているし、又、CFRPのATP(自動テープ配布成型)もEB硬化の検討が進んでいるとか。一方ではRTM(反応性トランスファーモールド)も真空減圧下での光照射法が研究されつつある様だ。
 プリプレグ(しっとりした毛布の様なもの)に光を当てるだけで構造材が簡単に得られるならば、身近に使えるアイデアが山ほどありましょう。
  ・立体プリント基板
  ・CFRP製スプリングコイル
  ・折曲部のみ未硬化にしておく、折りたたみ型コンクリート用鉄(FRP)筋
  ・銅線をミシンで縫い込んだ後に硬化させる複合材、等々

● Report No176/ 01月22日

剥せる接着剤
 資源の限界性から、リサイクル・リユース・リソースが叫ばれている中、組立てとは逆の分解がキーワードになりつつある。ネジ・ピンなどの締結具は、分解能を持つものの軽量性やコスト等から接着剤が多用されている今日、どのようにしたらその接着力を無にできるかの技術が求められている。“がっちりくっついたものを、さっと剥す”二律相反を両立させるのが技術と言うものでしょう。
  ・吸水性レジン配合による吸水膨張
  ・熱膨張性マイクロカプセル混入
  ・熱分解ガス発生剤の配合
  ・UV照射による架橋―粘着消失
  ・ポリマーネットワークの直鎖状化へ
  ・電磁エネルギー付加による軟化
 将来、中古車・廃車の大規模分解工場のあり方は、想像するだに楽しい。流れに沿って、次々と車体に与えられる各種のエネルギー(振動・熱・電磁波・引張り力・・・)、そこにさっとロボットの手が出て部材を傍流へと。勿論、車種年代・接合方式が予めインプットされているので、千手観音様スーパーロボットが縦横無尽に捌く姿は劇画並み。そうなると、夢の接着剤とは、界面制御感応機構たるある種の自己組織化膜の形成能をもつものと言えるかも。

泥んこ遊び
 子供の発育には、お絵かき・積木・砂遊びが欠かせない。昔は、いたるところに砂場・崖場があり、砂・土・粘土・石コロなど、今時の公園の砂場とは雲泥の差。子供達は器用に奔放に造型に勤しむ。視覚・触覚を通じて脳が発育していく。この遊びが技術立国日本には絶対欠かせないもの。砂を盛り上げ、叩いて固め、孔(穴)を掘り、溝を模様状につけたりと。昔の崖場を思い出してみると・・・
  ↓粘土層を竹べらで板状に切り取る(天然グリーンシート)
  ↓切り込み加工したグリーンシート同士の合体(加圧接合)
  ↓色の違う粘土を水に溶いてドロンコにし、
      上記合体物にコーティング(チクソトロピー釉薬)
  ↓小石粒を表面に押し込み飾り(加飾工程)
  ・落葉焼きの中に置いて硬くする(焼成)
 今や陶芸教室でなければ体験できない、それどころか原料採取まで出来た昔は懐かしい。このあと、家業の手伝い労働に就いたが抵抗感はなかった。

● Report No175/ 01月15日

ウルトラ材料
 耐熱性や強度的に特に優れているものを、仮にスーパー材料とすれば、そのスーパー能に加えて能動的(?)機能を有するものをウルトラ材料(勝手造語)としましょう。マイコン制御の電気釜や、ニューロ洗濯機はチップ付け材料だからウルトラとは言い難い。材料そのものが… となると、本格的なものは未だ無い様だが、その萌芽は感じられる。自らがセンサー・プロセッサー・アクチュエーター能をもつとなると尋常ではない。個人的に気になるのは、圧電材料・自己修復材料・LB膜・非線形光学材料・DDSなどなど。幸い、この時、ナノ技術の進展があり、感知・感応・エネルギー移動の面で飛躍が見込まれる。

 「フォトニクス能を持つ光ファイバー/ナノ圧電LB膜の複合体が、CFRM(M=形状記憶スーパー合金)を担体とする複合材料」を壁材とするUFO… なんて夢想しているうちが華ですか。でも、こんな語句があります。
 “日頃、何気なしに語る言葉が大いなるすべてを創り出すのであるから夢を見よ”と。

ハイテク用シーリング
 シールは封。密封、封書は書付け(情報)を蝋付けしたもの。技術分野の封(シール)はガス、液体、紛体等の流体の漏洩防止が狙い。逆に外部より望まぬ流体が浸入してきても困る。今日のハイテク素子・機器類はシール(封)が生命線。それだけにシール剤(材)とそのプロセス技術もハイテクレベル。
 ・LCD
   ―液晶が移動流失しないようにUV硬化型接着剤で
 ・有機EL
   ―低分子ELを外気浸入を防ぐ防湿被覆シーリング
 ・高分子電解質燃料電池(PEFC)
   ―電解質膜とセパレータの接面から水素や空気が漏れないようにPIBガスケット加工
 ・μTAS
   ―ケミカルチップのカバープレートをレーザー溶着シーリング
 ・DDS
   ―薬効剤もしくは磁性微紛をコア剤とするマイクロカプセル型エンキャプレーション(包み込み)

 密を以って貴しとする。
     ハイテクは貴なり、
          貴は利(益)なり、
   情報(インテリジェンス)を封するは利の極(きわめ)なり。

● Report No174/ 01月08日

元素X(バナジウム)
 富士山系のミネラル水にバナジウムが含まれていることは知られていたが、糖尿病に効果があるとのラット実験の報を受けてか、業者は急遽ラベルに6.2μグラム含有との表示を始めた。バナジウムは周期率表によると、左にチタン(Ti)、右にクロム(Cr)、兄貴分にニオブ(Nb)と、3元素に囲まれている希少金属。
 生体必須元素は約30種といわれ、そのうち生体微量無機元素は18種。Xは今のところ、哺乳動物に於ける必須性の証明はされていない。しかし乍、土壌中には100ppm程度あるとされ、従って植物にも吸収されている次第。ヨーロッパでは古くから、ある種のキノコには異常な程の多量のXが濃縮されていることが知られている。科学者らはそれから抽出Xを化合物として得るも生理機能をつかむまでには至っていないとのこと。
 又、海洋生物のホヤは、100万倍も濃縮して有する。それは海水中のX5+をエラで還元してX4+にし、更に血球中ではX3+水結合の形をとっているからとの報あり。深層水生分について少々触れたことがある者として、この種の化合物の存在形態は極めてデリケートだけに「毒と薬は紙一重」と心得るべし、と。
 この原稿書いているときTV番組で“山の塩”なる温泉水の濃縮乾燥粉末を、醤油代わりに豆腐にのせて食している映像が出た。上述の心得忘れて食べてみたくなった。

ナノ級磁石粉

 磁石はいつでも楽しい不思議。ナノの時代、当然ながらナノ粉磁石に目が行く。粉もナノ級になると、微粒子同士の相互干渉で、かたまりを形成してしまう。その為に個々の粉間にバリヤー層形成が必要となる。微マグネタイト粉を界面活性剤で分散させた磁性流体などは既に広く実用化されている。近頃どんな研究があるのか眺めて見たところ、あるわあるわ…
  ・磁性微粒子に特定遺伝子を付着させてのち花粉に打ち込み、雄花に受粉。
   その結果、特定能力を有する花粉の回収率が向上。            (帯広畜産大)
  ・強磁性を示す超微粉Pdと高分子の組合せは、光アイソレーター、
   新規の磁気光学材料リポソーム包含誘導型のDDSの可能性など広く期待。   (慶応大)
  ・ナノ級コバルト柱状結晶塊の隙間を非磁性クロムが埋めている物質の薄膜は
   10Gレベルを狙う記録材料。                       (東海原研)
  ・特殊ポリマー層によるナノ級バリウムフェライトの
   ディスパージョンによる高密度記録材。                (富士フィルム)
  ・ある種の細菌は磁性マグネタイト粒子がリン脂質薄膜で覆われていることにより磁性を示し、
   酵素や抗体の固定化キャリアとしての利用が期待できるし、環境浄化にも資すると。(東大)
  ・鉄・ガーネット微粒子を光ファイバーとの複合化により、
   新規の電力センサーとしての磁気光学プラスチック光ファイバーが得られる。(東工大・他)

 やっぱり磁石は不思議です。その不思議さも何倍にも膨れました。

● Report No173/ 12月25日

感度
 注射針も超極細となると、人は痛みを殆んど感じないという。味覚を司る舌の味蕾も接触する食品の微細度が1〜10ミクロン程度になると感応してくれないと言われる。一方、化粧品などの皮膚接触剤となると、その分散質が5ミクロン位の場合、俗に言う皮膚に優しいとなり、レシチン中のリポソームなどは超高圧条件下で得られる50ナノ球ともなると極めて高い皮膚吸収性を持つとか。
 人の感度はアナログ型かデジタル型か、刺激―感知―信号―伝達―受取―イメージ処理―対応拱択―指令 などが瞬時に行われるところから、アナログ/デジタル渾然一体かな?は素人の想像。かのインクジェットプリンターも5μ以下ドットとなると視感に差がないと。もっとも、あまりドットが小さくなると風圧で像が画けなくなるとのこと。又、今をときめく何百万画素を誇るCCDで感知した像でもいざプリントとなると、例えば、山水の水墨画などは忠実に再現プリントアウトが出来ないとのこと。
 こう眺めると、超々微[心]動を感知するナノテク技術を駆使する感[心]計でも、人の心の琴線の振[心]動に感応できるようになるのはいつのことやら。


曜変天目茶碗

 日頃気になっていたこの茶碗のこと、「現代化学」誌('03.11月)の概況記事から抜粋紹介。直径12cm高さ7cm弱、黒い地肌で内側に大小の銀色の斑文が散ばる。照明によってそれらの周囲が瑠璃色から淡黄色に至る虹のような輝きを放つ、不思議な表面をもつ茶碗。
 中国福建省陽県の建窯産なれど現存は3個のみ。いずれも日本に在り。勿論国宝。備前焼のごとく炎の芸術の為せる業。当然、人は再現してみたくなる。その為には分析したいところ。国宝の一部を削り取るわけには行かぬ。それでも科学者は少しずつ解明に向かいつつある。弟分に当たる(?)油滴天目茶碗の再現は、かなりのところまで進んでいる様子。曜変を出さんと中国現地の陶工を輸入しての努力もあるとか。
 斑紋の出方は釉薬にあると判り焼成中に2層に分離、軽い方が滴状になって重い層の上に浮き上がり、冷却すると結晶して斑点になると。瑠璃色の光彩は、釉薬の薄膜によって生じた光の干渉が原因とか。それは光学計算からすれば斑紋の上の釉薬の膜厚は0.1ミクロン(100ナノ)となると。
 今のところ再現の見通しは全く立っていない。南宋時代(12〜13世紀)の製作者は“この作り方、判るかな…”と見下していることだろう。昔の人々の凄さを又知った。インターネットでカラーで眺めて下さい。

● Report No172/ 12月18日

面白ハイテク製品
 諸ニュースから技術製品のメモを下記に羅列(米国版)。
   ・ホバークラフト方式のスクーター。芝生の上でもスイスイ時速25km
   ・PC画面の手書き文字インプットが直ちにインプットされるノート(IBM)
   ・ドライバー向け、インジケーター付アルコール検知機 ――酒場用
   ・サッカーボール、バスケットボール中に発光体装着 ――夜間スポーツが可
   ・化粧指導ソフト組み込んだコンパクトケース―「今日はどんな化粧にしようかしら」
   ・スピードメーター付きローラースケート
   ・目に疲れを感じさせない電子ブック
   ・エンジン付サーフボード
 まあ人間はアイデア出す動物ですね。このアイデアなるものは白紙では思いつく筈もないが、誰かが一旦客観化すると、誰もがなるほどと感ずる類のもの。どうしたらアイデアを出せるかの指導本がゴマンとあるものの、実際はそう簡単には参りませんね。当方、経験的には、事物について不平不満を先ずはハッキリ(客観化)させてみる事、と心していますが・・・。

含浸(Impregnation)

 物体の隙間に何かを詰め込んで、種々の特性を出そうとするプロセス技術。言い換えれば空気との置換になる。その空気がなかなか頑固で動いてくれない。AlやMgのダイキャスト品も微細な空気たまり(巣という)が出来てしまい強度・漏洩問題が生ずるので、水ガラス系薬剤や嫌気硬化性アクリルを含浸―硬化させる。この時、含浸剤浴槽にジャボンと漬けるのではなく、減圧状態の層の下部より液を供給する方法が一般的。この原理は、多孔質の粉粒体への含浸にも利用できる。かつてセラミック粒に触媒液を含浸させるのに用いた経験がある。又、紙・布(織布・不織布)への含浸もフローティング(浮上)法で含浸ムラのないものが容易に得られる。長尺ものの加工で一部分に含浸不良が発生するとロール全体が不良扱いとなる為、要注意。含浸剤の濡れ性を上げる為、超音波印加や加温等も広く用いられている。
 最近、セラミックとAlの複合材料(MMC)の製法に於いて、Alと反応する金属粉末とセラミックを混合し型に充填、そして溶融Alを含浸するだけで得られる技術が出現(日本ガイシ)。そう言えば、ある精神講座で「心を空にすれば、そこにいろいろ詰められ、人は大きくなれるもの」と聞いた。その講師は Impregnation を知っているのかな?

● Report No171/ 12月11日

スパイ道具
 007映画でボンド氏が次々と駆使して危機を脱する為の道具類は、さすが独創民族英国人ならでは、と感じさせる。第二次欧州大戦〜冷戦時代、激烈な東西スパイ合戦はハイテク競争とも言えよう。諸本からピックアップして羅列すると・・・
1.盗聴器 (ソ連KGB) ライター、ペン皿、腕時計、電気コンセント、異色は置物の石炭の塊中に。
2.ミニカメラ  '80年代、光学メーカー、カールツァイス社(東独)がマイクロレンズを開発。タバコ、傘、ネクタイの中に。浴室のタイル目地への埋込みは、何ともはや・ ・・。超小型カメラで機密書類の接写も。距離はつけ紐でセット。又、鞄の中に組み込 み、シャッターは把手で操作と。
3.毒薬 専らスパイ本人の自殺用にカプセル化して奥歯に装填。実際にあったのは、傘先端に猛毒リシン(トウゴマより抽出)を仕込んだ針を装着しロンドンで要人暗殺した事 件。万年筆に仕込むのは当然。
4.その他 見えないインクのフェルトペンで書いたものを薬品で塗らし特定波長のUV照射すると判読できるなど。口紅ケースのピストル。直腸に入れられるカプセル収納方式。
 これらの道具を使った東側の二重スパイが米国にもたらした情報がキューバのミサイル情報であったと。その後、U−2機が確認で飛行したとの事。「歴史はその情報で作られた」であった。今ならばマイクロマシン、ナノテク――材料組立技術、更にはスパイ衛星、高度な暗号方式等々。でも、これを使うのも、その情報を取り扱うのも、人間です。人間も進歩していればと願うところです。

蜘蛛の糸

 別項で「インドのカンダタとお釈迦様のくもの糸」に触れました。最近の映画「スパイダーマン」では主人公が高層ビル街を糸を繰って飛び回る大活劇。
 そんなところに、本物のハイテク蜘蛛の糸情報が飛び出した。普通、蜘蛛の糸は一匹から、約90m、重さでは300mg、太さは5μ。米国の研究所で蜘蛛のDNAを山羊の受精卵に注入、その山羊の乳から蛋白質スピンド物質のみを抽出し、細孔から紡糸すると結晶分子構造の自己組織化を来たし、超高強度のファイバーが得られると。5μ径のスチール束でも34トン/cm2の拡張力なのに、上述の糸はその10倍とか。このニュースに接し、大量飼育好きの国民性の日本人としてテーマになろうと思うも、残念。蜘蛛は集団性が全くなく、共食いで結局は1匹が残るだけだと。
 新規性材料の創生でのDNA組み込みという生体操作だから良いようなものの、動物のいろいろなDNAを人間に組み込む事を考えている科学者も、いずれは出てこよう。これだけはアニメ・CGの世界だけにして欲しいもの。病の治療の各目で始まっても、発展的に横にズレて行くのが人の常ですから。

● Report No170/ 12月04日

ナノ三球
第一球目
 科学者、大沢映二氏が '70年に理論的予言し、NEC飯島氏が '80年に顕微鏡で始めて目にし、その後クロトー、スモーリィらが構造を明らかにした理由で '96にノーベル化学賞に結びついた、フラーレン。60個の炭素が連結したサッカーボール状。続いて70個、82個、240個のものも発見。更には、入れ子構造や鉄亜鈴構造。更には、籠の中に金属原子の入ったものまで出現。
第二球目
 記録材料としての鉄化合物結晶が今まで針状であったが、記録密度が2テラ以上となると球状の方が良いと、20ナノ球の鉄化合物が出現。これによるとフロッピーディスク700万枚分をテープ1本に納められると。(日立マクセル)
第三球目
 卵黄の中のレシチン成分、水中ではリポソームなるマイクロ粒となる。この粒に超高圧をかけると50〜200ナノ球となり保存性に優れる。ナノ球なので皮膚吸収性に優れ、美白成分抗酸化剤を配合すれば次世代化粧品となる。医薬への展開も期待される。

 宇宙の摂理からすれば球形がもっとも自然なのか。元素の電子軌道も円(球)運動。原理は球にあり・・・か。

絡むを解す

  絡んだ人情を気持ちで解す、となると、それは文学の世界のこと。 科学の世界では、絡んだ組織体を解さないことには研究が先に進まない。
  解すことが大切なのは紙作りの工程。 楮(こうぞ)、三椏(みつまた) の繊維の絡みを解す蒸解・叩解工程の手抜きは紙漉にとって致命的。 今、ナノテク技術で脚光を浴びているカーボンナノチューブ(CNT) も粉状態では極度に絡み合って凝集し、そのままでは折角のナノ粒子も効果を発揮できない。 元来高価であるが故に少量の使用で済ませたい。 即ち、超薄膜で実用化に至るので、どうにかして絡みを解して、バラバラにしたい。 そこで研究者たちは、超音波を印加したり、非プロトン性溶剤に分解させたり、スルホコハク酸エステル界面活性剤で親水液分散を図ったりといろいろ。 最新の技法として、イオン性液体中でCNTが膨潤――ゲル化 する現象が発見されたり(東大、相田氏) と手変え品変えの総攻撃中。
  それもこれもナノカーボンの分散化技術は新規性の半導体素子、表示装置、センサー、バイオ素子、光学材料、DDS、電池(燃料、太陽) 等、21世紀を支える根幹材料としての可能性が見え始めたから。 この種のもの、「どうして絡んでいるの?」 を知れば、解し方が見つかろう。 しかし・・・ それが難しい。