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● Report No157/ 08月28日

漏らすなよ
 シビルエンジニアリング分野での漏れは困りもの。 原発からの放射性廃棄物から放射線漏れ、シールド工法トンネルのセグメントから地下水の漏れ、など限りなく事例多々。 漏れるのは、液体、気体に止まらず、粉体もあるし、電波、磁気、光などもある。 今話題の色素増感太陽電池となると、その内味(媒体)はアセトニトリル/エチレンカーボネート、PEG/沃化リチウム、イオン性液体など何れも漏れ易いもの。 10年以上の耐久性要求となると、漏れるだけでなく、外部からの空気や湿分の浸入も劣化につながってくる。 いっそのこと、擬固体化(ゼリー状)させては、との研究もある。 LCD の LC (液晶) も、ポリマー分散型 LC にして(光硬化レジンとの混合)、これもある種の擬固体化 (シート状) で簡素型に。 一方、固体高分子型燃料電池 (PEFC) となると、FC/外界のみならず、FC 内部での各機能領域間での 「漏らすなよ」 が大切。 漏れるのは、水素、酸素、水分、湿分、酸など色々。 更に、それらがイオンであり電子であり、と一筋縄ではいかない。 よって、ここでも各社必死の開発中。
  漏れるのは物質のみではない。 情報、ノウハウも工夫が必要。 それは、会社や國の命運に関わってくるから。 この種のものは放っておけば、自然に漏れてしまうもの。 気配り、目配りが必要。

投手とボール
  ハイテク時代、材料に求められる特性には限りが無い。 自然物の通り一遍の加工ではとても充足し得ない。 そこで色々工夫となる。 材料の複合化などはその代表例。 理想は、原子の変質とばかりに “物質にイオンをぶつけてみれば…” と。 そのイオンも一般化学での湿式(ウェット) ではなく、物理学の乾式(ドライ)。 即ち、イオンに加速電圧を付加すると、物質の表面から内部に亘って原子レベルで変化が与えられると。 イオンをボールと見立て、
   ・スローボールは、表面に堆積して薄膜形成
   ・中速ボールは、表面原子の一部と置換するスパッターリング
   ・豪速球は、物質内部に飛び込み、居座ってしまうイオン注入
  勿論、ボールに種類あり。 原子、分子、イオンクラスター。 又、投げ方にも種類あり。 よって、新規性の光素子、薄膜太陽電池、機能素子に止まらず、バイオ、薬剤、建材分野に至るまで、随所でトライ中。 トピックスは、熱電変換膜を持つ布地、オイルレスエンジン、太陽電池型窓ガラスなど。 この先、無数のイオンボールを物質に打ち込んでおき、任意に取り出せる――キャッチャーが投げ返してくれるような――技術があったら何に使えましょうか?

● Report No156/ 08月21日

脱洗剤
  いまさら洗剤による環境汚染を論ずるまでもない。 それほど洗剤類の影響は大きい。 そこで安全型の洗剤の開発が進んだ(低COD・低BOD型など)。 又、ケミカルドライ洗浄のシステム技術も成果を見た。 人はそこで無排出型洗浄技術の研究に注力する様になった。 水の電気分解方式を組み込んだ電気洗濯機・食器洗浄器。 超音波方式もある。 それでも殆どはウェット方式で、乾燥工程は必要。
  ウェット方式でも電気を使わない方式があればと、電気化学的方式の研究も盛ん。 夢かも知れないが、有機物汚れに光・音波・電場(誘電・誘導)エネルギーが何か作用し得れば面白いのですが・・・。 いや、完全ドライ方式の前に新規性のベーパー洗浄方式の実現が近いかも。
  砂漠の民ベドウィンは食器を砂で洗った、いや、拭いたと言う。 昔、シベリア抑留兵が、毛布に棲みついた虱(しらみ)の退治に10分ほど極寒の野外に吊るして棒で叩き込んだ、とのこと。
  何れにしても、ドライプロセスがベストと思われるのですが・・・。

キョロキョロ
  黙って早く食べろ、キョロキョロしながら歩くな、と言われて育った小生には、今の社会・地域・家庭風潮の必要とする “キョロ” を身に着けるのに年月が要った。 水面から顔を突き出したタマちゃんの “キョロ目”、ものの100mほど雑踏を歩いただけで通りすがりの人々を殆んど記憶している北朝鮮工作員の “猛キョロ”。 これらキョロにも違いが――デパート特売場での女性のキョロ、新入社員のキョロ、コンタクトレンズ探しの床を舐めキョロ、演説弁士の全面積的キョロ、などなど。 何と言っても秀逸は、玩具売り場での子供の目…。 これだけでショートドキュメント。
  産業人となると、立場によって異なるキョロ。 会議で、展示会で、文献探しで、同じ目玉なのに動きが違うのは脳のなせる業か。 周囲の人に覚られないような目キョロ(頭を動かさず)で、いち早く情報をつかむ…。
  こんな事がありました。 某社の事務所に所用で寄った時、少々の待ち時間に書類戸棚のファイルの背表紙を目キョロでインプット。 その中に当方企画中のテーマ関連あり。 驚き、そして問うと先方も驚く。 後日、商談成立。 思わぬ工作員でした。

 

● Report No155/ 08月07日

SMT
 半導体パッケージ、光デバイス、ディスプレーなどは、接合材/接着剤なしでモジュールに組み上げることは出来ない。 自動車エンジンの様にボルト/ナット締めとは参らない。 殊にブロードバンド、モバイル機器の時代、高性能化高量産性対応の技術は日々新たなりで続々と出現。 SMT は一つの総称。 いろいろ目につくアルファベット頭文字、LCD、POP、EL、DVD などのディスプレー関係は IC、LSI 同様、人口に膾炙しているものの、SMT 〈表面実装技術〉 となると電気・電子技術分野の人達だけになる。 その人々も BGA、CSP、SIP 辺りになると全員が知っている訳ではない。 SOP、COG、COF も又然り。
 EMI、RFI、EMC などは電子分野のみに関わらず、一般機器や建築材料にまで、その機能が求められ始めているので、一般用技術用語に入ってきている。 SMT に絡むものを3つ下記してみますと、
  ACF (Anisotropic Conductive Adhesive Film)
  ESC (Epoxyencapsulated Solder Connection)
  C4 (Controlled Collapse Chip Connection)
 若し、これら略号を日本語的略号にしたらどうなるでしょう。
 省略に長ける日本人なら表意略号を付けるかも。
 ここにきて、SMT の行手に3次元実装技術が出現。その略号は・・・(宿題)。

相分離(二)
 独立行政法人産総研の中期目標、ナノテク・材料研究、就中、精密高分子材料技術6テーマの中に、「ミクロ相分離や結晶化による3次元構造制御技術研究」がある。 ミクロ相分離とは文字通り、異性分同士が均質状態から分離状態になること。 所謂、離婚/仲違いしてしまうこと。 面白いのは俗世間と同じく環境変化に当たったり、元々あまり仲良くない夫婦などは直ぐに分離状態になってしまう。 前報でも触れたが 〔光重合性液体/シリコーン油〕 の光硬化、シリコーン油の代わりに低分子液晶を用いたディスプレー素子、など注目技術中。 分離現象を利用する DDS (薬剤徐放性システム)も中核的テーマの一つ。
 ナノ時代、ナノ金属粒の配列という大テーマに、独特の結晶性/相溶性を示す ジ・ブロックコポリマーは、低コストで薄膜形成ができて RIE によるパターン転写や相分離現象によるナノ級金属粒の沈着配列が可能であることにより、新規性の素子形成技術として注目されている。
 こう見ると、計算された “別れ” が新しいものを生み出すとは妙なものですね。 日本語には “付かず離れず” なる言葉もありますが・・・。

 

● Report No154/ 07月31日

導電性ポリマーをインクに
 導電性ポリマーは膜(フィルム、コーティング層)として利用できるのは当たり前なるも、コストと付加価値から見ると、使用量が少なくてその特質が最大に発揮される分野の1つが印刷インクと思われる。 それは色彩表示ではなく電子回路形成インクとして。 その回路線巾が1桁ミクロン〜サブミクロン形成となると一般の印刷技法では不可。 マイクロコンタクトプリント技法なら有機駆動回路を作り得るが、原版用原型作成にかなりの装置を要する。 そこでインクジェットプリンターの登場となってくる。 しかし、普通のプリンターヘッドの吐出ドットはピコリットル級で径20μとなり大きすぎる。 ピコより小さなフェムトリットル吐出量ヘッドの開発は、となってくる。 当然吐出孔はナノクラス径となり、それには集束イオンビームが用いられて製作され、プリントドット間隙が3μとなったとのこと(産総研)。 ちなみにスクリーン印刷では、20ミクロン線巾レベルが今の限界。
 印刷法に拘る理由は、ロール to ロール生産が可能となり、ウエハーのごとく真空ドライプロセス無しに、インクというウェットプロセスはコスト面からは遥かに有利と判断されているから。 しかし乍、0.5μ以下は不可能と思われていたが、レーザープリンターで回路形成なる研究が進んでいると聞き、新しい電子デバイスアレーを予感させる。
 そういえばDNAをプリントしたぺーパーが上市された様だ。 いずれにせよ、ナノ級プリントはキーワードだ。

日常にひたひたとハイテク材料が
 超極細繊維布で石鹸泡を作ると女性洗顔には最高、とブームに。 日常生活の中に既に数え切れない程のハイテクが入り込んでいるが、むしろこれからが本番という雰囲気。 研究情報からつまんでみると、
  〈電気〉銅なみの電導性をもつ、導電性プラスチックのポリアセチレンやPPVの出現で、
        更なる軽薄短小が
   〈車〉 信号系配線は光ファイバー化始まる
   〈衣〉 超保温布、呼吸布、将来は冷房布?
   〈食〉 こればかりは合成とは参りませんが、澱粉/バイオマス…リサイクル利用の高度化
   〈住〉 総合省エネ型ハウスの為のスーパー建材
     〈例〉 エネルギー蓄熱型パネル/放出コントロール型

 人々の飽くなき欲求・夢・ロマンから滲み出る開発テーマに果敢に挑み、失敗を積み重ねることで技術立国の素地が醸成されていく次第。 そこに将来があると見える。
 故に、貪欲に日常の中に技術不満を持とうではありませんか。
 不満こそ発展のエネルギー!

 

● Report No153/ 07月26日

接合方法のいくつか
 マイクロマシン展で発表されていた “ミクロン級ビーズの光硬化型接着剤による垂直積み上げ技術” は、超精密駆動のマニピュレーターによるシステム技術だった。 接着剤のみに頼る単純接合ではない技術は、やはりシステムものでしょうか。
   ・ 振動溶着・超音波溶着ではなく、
    特殊なプライマー塗付によるポリアミドのインサート成型。     (名工試/名工大)
   ・ Al 合金の接合に摩擦撹拌接合法(FSW)で、LNGタンクの製作に。
    将来は航空材へも。
   ・ ゴム/金属には、予め金属の表面にトリアジンチオール膜を形成する、
    新しい化学接着法。                              (岩手大学/他)
   ・ 膨張係数の差を緩和する為、軟金属を挟み込むことにより、
    セラミックと金属の接合を可能にした、液相拡散接合法。       (群馬大)
   ・ 生体吸収・適合性とDDS機能を有するフィブリン系接着剤を用いて外科手術を。
  ―――――――――――――――――――――――――――――――――――
 さすれば、ステルスダイシングの手法に似せて、絞りレーザーエネルギーを透明シリコンの接合面に照射して、プリコート型ゾルゲル層の固化による接合も考えられます。

賢い材料
 生物とは違って材料には生命が無い。 それは自己維持機能が無いこと。 従って、その材料は負荷応力や環境に対応する感知・修復・情報の読み取りが出来ない。 そこで人々は、材料に或る種の感知材料、更には修復機能を付加・組み込ませようと研究している。業界ではスマートマテリアル(知的材料)と呼んでいる。いくつかの事例を・・・
   ・ センサー・アクチュレーター機能を同時に有する
    形状記憶合金(磁性記憶、薄膜形状記憶など)を埋め込んでおけば、
    損傷が生じた時、電流が流れ形状復元する             (富士重工)
   ・ PZTシート貼り付けておく                         (名古屋大/川重)
   ・ ポリマー成型物や金属に光ファイバーを組み込み、変形を感知する
   ・ コンクリートにエポキシオリゴマーのマイクロカプセルを分散しておけば、
    クラック発生時にエポキシのアルカリ反応により劣化を防ぐ    (東北大)
   ・ 同上のコンセプトで不飽和ポリエステルFRPに重合触媒カプセルを配合しておく(米国)
   ・ 鉄鋼構造物へ、変形下での易破壊型マイクロカプセルの配合塗装により、
    応力歪みの目視感知化
  ―――――――――――――――――――――――――――――――――――
 賢い子の頭は撫でてやりましょう。 叩いてはいけません。 いや、叩く程強くなる材料が出てくるかも・・・。

 

● Report No152/ 07月17日

ある競争

 この世は競争に満ち溢れている。 何でも競争。 優勝劣敗は世の習い。 ノーベル賞の白川博士の名の下で脚光を浴びている導電性ポリマーも、花形である為、他の技術手法に挑まれつつある。例えば、導電ポリマーによる方式としては、
  ・ ポリシランの光パターン上に導電ポリマーの電解重合パターンの析出。
  ・ インクジェット・スクリーニング・マイクロコンタクトプリントなどによる、
    電導ポリマー系有機トランジスター形成と、電子ペーパーの組上げ。
  ・ 導電ポリマーの精密コーティングによるEC調光ガラス、EMI 層の形成など・・・。
  ところが、ここに導電性金属粉、それもサブミクロン、ナノ級の超微粉ともなると、導電性のみならず光学的な特異性をも発揮する。 又、種々のビヒクルとの組合わせによる多様性、その拱択性は導電ポリマー側から見ても侮れない。 常温域でのPTC (Positive Temperature Coefficient)能など、競争か棲み分けか。 その粉系にしても、高分子媒体に追いかけられるかも。 例えば、ポリマー成型後、レーザーNC照射による還元析出型導電回路パターン形成など。 マイクロ、いや、ナノ級導電回路の開発レースは熱い。

行きつ戻りつ

 行ったり来たり、出たり入ったり、同じ様に、硬くなったり軟らかくなったり、白くなったり黒くなったり。 この様な変態は、ハイテク時代、重要な技術要素。 レポートNo.119 「相転移」の一方通行もあるが、往復型の研究も盛ん。
  ・ PVαFの熱ケトン溶解液は室温近傍で冷却すると、熱可逆性ゲルの形成。
    ポリマーバッテリーに利用。
  ・ ロイコ染料に特殊結晶の顕色剤を組み合わせてサーマルペーパーを得、
    加熱すれば発色、更に、やや低い温度で消色する。 リライタブルペーパーが可能に。
  ・ ポリアニンと電解質ポリマーを組み合わせたセンサー膜は、
    ガス感知(電気抵抗値の変化)したのち、一定時間後、抵抗値が元に戻る機能。
    即ち、自動的再使用可能型。

 思えば、吸着・脱着、充電・放電、膨潤・収縮、導電・絶縁、固化・液化、明・暗、など限りなく行きつ戻りつのがある。
 人生の浮き沈み・喜怒哀楽・・・と、化学以外の分野では小事典になるほど並べられますね。

 

● Report No151/ 07月10日



 貫通しているのが孔、行き止っているのが穴、らしい。 一応ここでは全て孔としておく。 孔の名はサイズにより、結晶質のゼオライトは直径50ナノ以上でマクロ孔なる呼称、シリカゲルや活性炭は直径2〜50ナノでメソ孔、アモルファスのガラスや活性アルミナは直径1ナノ以下でミクロ孔(サブナノ級なのにミクロと呼ぶ可笑しさ)と分類。
 孔も孔単独では在り得ない。 若し在るならそれは空間のみ。 何か禅問答。 子供の謎々に 「切れば切る程大きくなるものは? 答え、孔」 を思い出した。 この孔も板状、放射状、球状、ランダム、不織布状にと、いろいろ存在。 更に、孔の内壁の多様な物質。
更に、それを他の支持体と複合化。 これらは合成条件を変化させることによって千変万化、CG 発想の種(たね)として好適。
  有名な DNA の2重螺旋構造様の「孔」を若し作り出せたら何に使えますか。 一種の鋳型ですからクローン量産用? SFアニメの世界ですか・・・。

 孔も空間の一種。 しからば鍾乳洞も。 その石筍は炭酸カルシウムの析出したもの。 石筍が内壁に複雑に突き出たチューブ型ガラン洞。
  シンプル形状のチューブ型のカーボンナノチューブ(CNT)は水素の抱え籠。 壁は網目状。 光触媒酸化チタンナノチューブは8ナノ径(中部電力)。 バルーン形状で部分的に殻が無い中空光触媒は3ミクロン径(九州大学)。 空洞に何か詰めたくなります。
  液体を流すのは注射針。 50ミクロンのアルミワイヤーをプラチナメッキとアルカリで Al を溶出させれば無痛注射針。 さすれば、LIGA プロセス/電鋳方式でも出来そうですが・・・。 この孔に薬を充填しておけば DDS も可となる。 放出のみでなく、取込み(吸着)も重要。 毒物(ダイオキシン、PCB など)の形状と同じ孔(穴)を表面に持つ高分子微小粒があれば、拱択的吸着と排除が出来るようになる。
 映画「ミクロの決死圏」ではサイズが大き過ぎる。 「ナノ決死圏」――血液流を航海するのではなく、白血球、その細胞の中に入る旅。 小さくなる程拡がるその宇宙。 孔、恐ろしや。

 

● Report No150/ 07月03日

落雁(らくがん)
 麦こがしに砂糖・水飴をまぶして、木型に詰めて上から圧し潰した、昔懐かしい菓子は落雁。液体を型に流し込んでのち、冷やせば出来る心太(ところてん)、寒天ゼリー、羊羹(ようかん)は、さしづめ射出成型か。
 
さすれば落雁は粉末成型といったところ。麦こがし粉の代りに、金属粉末を金属型で強くプレスし、後、高温焼成すれば、切削工程なしで歯車などが出来る。しかし、プレス成型は形状限定があるので、形状自由度の高い射出成型が出来ないかと開発されたのが、MIM(Metal Injection Mold)。粉状では流動性が無いので、流動性付与と一時的結束剤の役目を、ポリマー液で措置。金属が出来るならセラミックも当然出来る筈と、CIM(C=Ceramic)。
  MIMもCIMも成型機から取り出した後、バインダーの除去―気化工程でエネルギー/時間を余分に要するものの、寸法精度、強度、形状選択性に優れているので、重要な生産技術だ。それだけに、脱バインダー工程の単純化、若しくはバインダーレスCIM/MIMなる夢の技術研究が密かに進められていることでしょう。

ハイテク炭
 押入れや箪笥(たんす)の炭入り紙袋は何のため?と、子供の頃は不思議に感じたものだった。中国前漢初期の馬王堆(まおうたい)漢墓や天皇陵の棺に、大量の木炭が敷きつめられていたのも、今では納得。
  現在では、木炭以外の吸着能を持つ素材がいくつも出現している。森林の間伐材の有効利用の一環で、木質系炭化材が、土壌改良、水質浄化、養豚場の消臭などの用途から、より高度分野を目途して、住宅床下、寝具、鮮度保持剤などの商品化が進められた。更なる高度化をということで、10年程前に青森県工業試験所が、「木材にフェノール樹脂を含浸し、600〜2000℃での焼成焼結したウッドセラミック」を開発した。これは、
炭素6員環の塊のフェノール樹脂と木材セルロースの絡み合いにより、硝子状カーボンに反応・進化(?)したもの。今問題のシックハウス対応建材として有望とか。
  さすれば間伐材以外にも、県としてリンゴの絞り滓(かす)に着目することになるし、ひいては沖縄に砂糖きびの絞り滓あり。しかし乍ら一寸気になるのですが、高温焼成の消費エネルギーはどうなっていますか。全体で眺めると悪循環の気配がしないでもないのですが…。

 

● Report No149/ 06月26日

複屈折
 “レーザー・ピックアップ用レンズに複屈折は邪魔”との記事に触れて、少々詮索してみた。複屈折とは、
入射光が常光線と異常光線に、媒体通過後に分かれてしまうこと、と。レンズ射出成型時にレジンの熱間流動−冷却固化の経過を辿ると、ポリマー同士のからまり寄り合いの姿が局所局所で異ってしまうので、透過光に対して均一作用を及ぼさない事によるとのこと。この不都合具合を迅速に計測するレーザー画像処理技術――レンズやLCDの複屈折分散計測――が開発されつつある状況。若し生産ラインがロール・to・ロールになっても高効率の検査が出来るそうな。レンズなどの光透過媒体が光を正しく通しているかという面では、位相差が強く出たり、干渉像パターンが明瞭に出たりする複屈折分散計測で、生産性を高められる開発が進行中とのこと。光の分波に限らず、幸せの基たる光もI媒体(政治の仕組み、妙に賢い人々など)経由で透過すると異常光が主となってしまうこと、往々なり。政界用複屈折計測技術システムの研究も大事と見ますが…。

滴(しずく)
 謡曲「菊慈童」の一節、“雫(しずく)も芳ばしく、滴(しただり)も匂ひ、渕ともなるや谷隠の水の”。しずくもいろいろ。少し眺めてみますと、
  メタルジェット ――― 低融点合金をウェハーの高密度実装に適用。
                60〜150ミクロン径滴
  化学チップ ―――― 超微液滴は化学反応が瞬時に進行するので、
                ガラス表面にミクロン巾で溝切りし、薬品を通過させれば、
                混合、反応、分離、検出できるマイクロ反応実験装置。
                0.1マイクロリットル液を0.3秒、30分で実験終了。
  ELディスプレー ―― ポリフルオレン系高分子有機ELを20ピコリットル滴として、
                インク・ジェットノズルより噴出、パターニング。
                他、有機TFTでも巾5ミクロンのPEDOチオフェンビードを形成。

 滴の作り方も化学的、物理的、機械的、その複合化など数多く。滴の材質も薬品、ポリマー、金属の他、DNA、セラミックなども研究が盛んの様子。こう見ると、新規の有望開発分野テーマの香り芬々と芳しく匂ひますね。

 

● Report No148/ 06月20日

超純粋
  純白、純血、純金など純は清いイメージ。それは純粋。純粋と言っても科学的には純度の表示が伴う。今日では“超”が付く超高純度が貴ばれる。
   金属では ― 6Nレベル(99.9999%)の鉄ともなると金の様に錆ないし酸にも侵されないし、
             極低温でも加工変形が出来、鋸でも簡単には切断出来ない。
             脆性破壊せず延性破壊型不純物の量から見れば、
             10ナノグラム/g(0.1ppm)以下。
             現在、ナノ領域金属材料研究プロジェクトで鋭意進行中。
    ガスでは ― 炭素源としてのメタンによるCVDコーティング剤。
             超硬工具コート、薄膜ダイアモンド、アモルファス半導体、等
    水では  ― 超LSI用過酸化水素水、アンモニア水、不純物1ppt(1兆分の1)
  妙なことに、超純な環境、材料を用いて超純状態に仕上げた中間材に、高純度ガスを不純物(?)として浸み込ませて(ドーピング)、特異性を出させるプロセス。これで純益が生まれるでしょうか。純愛は?

こぢんまり
 小さくてもきちんと整っている茶室などは日本人の気質。きちんと押しあいへしあいなのが携帯電話の内臓配置、小型自動車のエンジンルーム、見るからに知的で逞しい。質的に引き締まった詰め込みは部品部材の薄化、短小化と植木屋さんの技切り(剪定)の様に省略のテクニックから生まれる。ハイテク機器の電子回路、燃料電池、ビデオ機器、医療機器などその成否はどこ迄こぢんまりにするかにかかっているだろう。人間が日常的に身につける道具ならば腕時計サイズ位がベスト、こぢんまりか。指輪サイズの時計なんて技術的には造れても意味ない感じ。一方、基本素材、部材がナノテクノロジーから構成され、IC/LSI を第2世代とするならば、第3世代のこぢんまり製品が続出するだろう。例えば、筐体を開けても殆ど部品が見当らなかった。即ち、筐体材料そのものの中に組み込まれてしまっているから… なんて妙なことも出てきましょう。そう言えば、弊社には化粧箱内面に粘着剤ドット(粒の列)を形成した転写型のり技術を持っておりました。

 

● Report No147/ 06月12日

増感
 少量の色素が入っているプラスチック粉を配合した液状の光重合性組成物が鋭敏な反応を示した偶然の体験を別欄で触れました。その時は色素増感という専門知識をもっていなかったので、それ以上に発展させられなかった苦い思い出、フォトポリマー用色素として多方面で利用されている現状に驚き。復習的に眺めてみました。
   ・ 写真フィルムの銀塩の視感度巾は320〜500nmだが、
     種々の分光増感色素を 配合すると 320〜700nmと拡大する。
   ・ 光ディスクは記憶容量が増大
   ・ LCDでは二色性色素添加によって、カラー補正や表示品質を高める
   ・ 有機EL用ドーパントとして有用
   ・ 高変換効率の太陽電池は光触媒TiO2に色素を吸着せしめたり、いろいろ
  ところで、人間用の増感剤は数多くありますね。十人十色ならぬ万人万色でしょう。あなたのカラーは増感ですか? ひょっとしたら減感になっていませんか?

粉砕−それはメカノケミカル反応
 蕎麦好きは石臼摺りの手打ちでなければ、承知しない。餅となると機械練は汁の中ですぐに形が崩れてしまい、やはり杵搗きでなければと主張。これらは澱粉の粉形状に起因するもので、粉にするという機械操作は粒子の物性を変え化学反応を誘起したりしている。それ故、粉、ミクロン級、ナノ級となる程に幾何級数的にその変化度合は大きくなるだけに、微量で巨大な特性を発揮する"メカノケミカル反応"を追って続々成果が発表されている。燃料電池の電極材料、バイオマス高分子とポリマーの組合せ粉化工程を経たポリマーアロイなどなど。新しい機能を発揮する「粉」の開発、その粉を実用に供せるように三次元化、薄層化、パターン化等、そして固定化して素子と。その素子をモジュール化して・・・といった具合。
 俺たちは粉だ。粒や塊は目では見えるけど粉は見えないからなー、でも、粉は小さいだけに重量当たりの比表面積は巨大、それが取り得の兄弟なのに、サブミクロン、ナノ級になると異星人だよ。その行動は予想もつかない暴れん坊だよ。元気の良い子ほど育つのよ。

 

● Report No146/ 06月05日

シリコン・ウエハー
 今日では、産業の米とも言われ、LSIの基礎材料として揺るがぬ地位を得ているシリコン・ウエハーでも3次元高密度実装の要求から、超薄型化に直面している。現在の6吋径で150μ、8吋径で200μを如何にして30〜50μまで薄く出来るか。更には、コスト要素から300_径と薄型となると"反り"現象が難しさを増幅し、更には搬送技法、ダイシング方法、押さえ粘着テープの剥離、等々、まさしく大障害レース。パターンニングの超微細化の技術革新に比べて遅れている分野だけに、わが国の半導体王国目指して頑張ってもらいたいところ。そんな状況で、'02夏、レーザーを集光レンズに通してウエハー内部に改質層を形成させる50μウエハーダイシング技術が発表され(浜松フォトニクス)、全体進展の契機になる気配。そうなると、@反りを一時的にどう抑えるか、A支持台からどのようにして脆弱なチップをピックアップするか、BBG(バック・グラインド)は完全に不要になるのか、等を目指してレース中。今の盛りのLCDも近々プラスチック基板(0.4〜0.5_)の出現も間近と聞く。頭脳たるLSIも早く薄っぺらくなってくれと、皆が待っている。

錯体
 配位化合物とも言う。いろいろな配位のスタイルによって特異性がでるのでハイテク時代多くの化学者たちはそれを追っている。門外漢にも何か追っかけてみたくなるだけにキーワードに置きたいところ。最近のトピックスをいくつか・・・
 ・ プラスチックレーザーに実用可能な、
   強発光錯体(ユーロピラム、錯体)の開発に成功(大阪大学)
 ・ 電子デバイスや水素貯蔵に利用できる、
   フラーレン充填したCNT(カーボンナノチューブ)は、
   新規の金属ポルフィリンによって得られる(東京大学)
 ・ 有機金属CVD剤としてのDPM金属錯体の量産技術に成功。
   これは蛍光体、強磁性体膜、絶縁膜等FPD分野において、
   広い応用が見込めるもの(昭和電工)
 ・ βジケトナートを有する金属錯体は広い範囲の波長領域で
   光吸収性の高い色素を用いると、光電変換素子、光化学電池に利用可。(産能研)
 ・ 水溶性フェロセンとポリジメチルシロキサンのブロック共重体は、
   自己組織化膜を形成する。パターンニングに利用可。(トロント大学)

  こう眺めると、謎かけ一題。
   錯体とかけてアニメの「千と千尋の神隠し」と解く
    心は − お化けゾロゾロ