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Report No214
/ 11月30日

溶解剤


 塗料用シンナーとして、アルコール・ケトン・エステル・グリコールエーテル等の他、芳香族炭化水素系の溶 剤が広く利用されている。

 しかし乍ら、硬化塗膜を溶解させるとなると一寸大変。例えば、集積回路における微細加工用のレジマト膜の 溶解となると基板金属を傷めず・低コスト・非危険物・リサイクル性等の条件から、エチレングリコールの環状 炭酸エステルであるエチレンカーボネートが注目。又、樹脂で封止された電子部品も裸にしたい時に使われる溶 解剤では、エポキシ用・シリコーン用なども上市されています。

 FRPの不飽和ポリエステルは、アルコール系のDGMMにリン酸カリウム水和物を組合わせると常圧下で溶 解できるので、結果としてガラス繊維も回収できるとのこと。金には1硝3塩(王水)と学校で学んだが、マク ロ腐蝕用であって電子部品の微細加工には向かない。

 ヨウ素(I2)をアルコールで溶かしたヨードチンキにヨウ化アルカリを添加すると金箔は常温でも溶けるし 、又、廃液処理も簡単。今日では金属のエッチング技術は極めて重要で電極形成等では不可欠。又、溶け難いセ ルロースもチオシアン酸/ヒドラジンの組合せで牛の胃液並み(?)。そう言えば、ガラスも弗酸で溶解でした。

 それでは頑固な気持を溶かすには何でしょう。多分“暖かい心”が正解でしょう。王水型ではなく、ヨードチ ンキ型の心でしょう。

 


Report No213
/ 11月23日

ギュー詰め


 今日のような洒落た玩具の無かった時代、粗末な板を甲板に見立てて竹トンボ・水鉄砲・紙鉄砲を武器とし、空薬莢や釘を糊付け、竹筒を煙突に見立てての立派さは機能満載の軍艦。

 今日、華のIT技術のシリコンチップでもギュー詰め盛り沢山は当然の方向。ウェハーのダイシング時の固定剤とダイボンディング剤を一体化したり、更なる高密度化を狙ってのSiP(システム・イン・パッケージ)は

MCP(同一半導体部品の集積小型パッケージ化)
 ↓
LSI SiP(メモリー等の部品による機能のパッケージ化)
 ↓
パッシヴ集積 SiP
 ↓
全パーツのワンパッケージ化

の方向で進みつつあると。即ち、ワンパッケージは部品ではなく製品であるとなると夢は目前ですか。

 とは言っても、立ちはだかる障壁も厳しく待ち構えている。EMC/高周波特性は? 部品相互の干渉は? ワイヤーボンドは? ダイアタッチの方式は? ワイヤーショートの問題は? 高温耐性は? 等々、開発ものはいつも心配の山。

 それでも、“あれもこれも盛り沢山”を人は望むもの。日頃、日本人は食品で寿司・刺身の盛り合わせ、幕の内弁当、揃え膳に馴れている、いや、慣れているので違和感は無い筈。さあ、進んで行こう。

 


Report No212
/ 11月16日

無液性・一液性


 昭和30年代初頭は塗料・インク・接着剤などは殆んど有機溶剤型。無溶剤でありながら常温で硬化する液体は夢のテーマだった。乾性油ベースの硝子パテなどは古典的事例。

 そんな折、瞬間接着剤シアノアクリレート、嫌気硬化性封着剤が米国で出現。更には湿気硬化型シリコーンRTV等、エンジニアリング接着シール剤の開発進展によって、機械機器の組立革命が自動塗付装置と相俟って拡大してきた。

 一液性の組成物を常温で硬化させる時に、空気中の酸素による酸化重合方式では鈍(のろ)いので、湿分や接触金属イオンを硬化トリガーにしようとした科学者達がいた。彼らが苦労したのは反応性ではなく、商品としての保存性(棚寿命)の確保であった。これらはかなりの成功を収めるも、厚膜硬化性や硬化速度等で、不満あり。熱以外のエネルギー付加(負荷)で出来ないかと「光」―それもUVから始まり、VL(可視光)、EB(電子線)領域での硬化まで開発されるようになった。

 昭和50年頃、米国の某研究所でプレゼン的に見ることが出来たMHZ級電磁硬化エポキシ、超音波硬化エポキシ、電流付加によるアミン放出機構によるエポキシ硬化など、その後どうなったでしょう。

 無液剤・一液性のテーマは依然として現存中。いつか誰かが、硬化伝播性組成物を作り出すかも。それはハリーポッターの魔法の杖で触れると硬化する液体のこと。

  


Report No211
/ 11月09日

抽出・搾り


 若い頃、石炭の液化―溶媒抽出研究に少々携わっていた事があった。液体を得るのに、力まかせの搾り方法で得られるのは、オレンジジュース、食料油など。優しく誘い出す方法―溶媒抽出―では、コーヒー、茶、ハーブ、精油類など。

 食品に限らず担体から含有成分を引き出すニーズは多方面に亘る。地中の油層、それも貧油層から効率よく搾り取ろう、いや抽出しよう、いや押出そうと石油会社はアノ手コノ手―熱水はもとより、特殊溶媒、圧力、スラリーなどと。

 食品分野で、昆布・鰹節からのダシは熱湯抽出。後に残った“粕”成分の処置が又問題。無料で引き取ってもらえるうちは良いが、廃棄物扱で有料始末となると大変。

 そこで何とか廃材を以って高度利用成分に変換できないかと研究多発。豆腐のオカラ、コーヒー豆粕、ビール粕、ミカンジュース粕、砂糖黍のバガス、茶がらなど健康食品原料に、いや出来得れば医薬品の素材にと熱いレース中。又一方、抽出溶媒も有機系ではなく、水性塩を用いてビタミンB12やNi・Coなどの金属を抽出する環境に優しい抽出法も発表されている。

 誠にこの時代は“頭を搾って智恵を(抽)出す”ことに尽きましょう。もっとも搾るには智恵液の素(もと)を充分にインプットして置かないと、乾いた雑巾を搾ることになってしまいますね。

  


Report No210
/ 11月02日

スーパー新技術


 画期的な新技術ニュースに接した時、人は驚き・拍手し・やがて自分がどのように関わったらよいか考える。「ふーん、成る程ね」と、3回も心の中でつぶやくようなニュースはスーパー級だ。

 最近の私的抽出スーパー級ニュース5項。

  • 木材成分のリグニンのマイクロ波プラズマによるガス化過程で、自らH2の発生促進現象が発見された。即ち[木材+水]から効率的にH2、COが得られた。(千葉工大)
  • 閾値(しきいち)ゼロの半導体レーザーも可能であり、電子励起状態を保持するメモリー機能有する3次元フォトニック結晶を得た。(京都大)
  • ヘキサベンゾコロネン(HBC)なる物質に親水性・疎水性基を付加することにより、常温状態で単に溶剤中に入れるのみで得られたグラファイト構造の導電性ナノチューブ(ERATO相田ナノPJ)
  • 表面プラズモン共鳴干渉ナノリソグラフィーの可視光領域で、50ナノ幅の銀(Ag)微細パターンの転写が可能になった為、従来の露光装置で超々LSIができると。(理研)
  • 普通は1500℃以上の焼成を必要とするセラミックも、エアロゾルデポジション(AD)法によって、α―Al23 を吹き付け、1μ以上の膜を金属基盤上に形成したもの。高分子膜状でも可能となると。その利用範囲は膨大。(AIST)

 これらスーパー級を産み出した研究者はウルトラ級だ。凡人にはウルトラ級はとてつもなく偉大に見える。

 


Report No209
/ 10月19日

ハイテク靴

 新素材を駆使して運動性や軽量性を追求したオリンピック選手用の履物とは別に、健康・医療・安全等をキーワードに研究されつつある靴が面白い。足―歩行―健康―靴の関係で機能増進と機能回復に注目。

 それには生体情報(脈拍、血圧、呼吸、加速度、血中酸素量など)のデータ収集・分析・予測が必要。その為には、靴自身に情報発信機能を持たせればと。電源(電池の歩行発電機)内蔵し、加えて、センサー・コントローラー、さらには発信機能をも含むGPSシステムまで、踵や靴皮の中に組み込まれた靴となるとやり過ぎか・・・、と思いしも、調べれば特許多数あり。

 歩行者の位置・歩行パターンが判れば徘徊や転倒防止に対処できようし、敷衍すれば高齢者生活支援・痴呆症対策・疾病予防・生活習慣改善(肥満防止)など、その効果性は広い。足/靴だけ眺めてもこの凄さ。他の身体部位はと見る時、脳波・眼球運動・体動加速度・脈拍・皮膚状態(温度・導電率)などの専用チップが下着に組み込まれ情報発信―(いやいや今のケイタイに生体センサーを組み込んでおけばよいのかも)―の日常生活は目前か。

 将来、その人の心理状態まで読み取るセンサーと解析ソフトが出てくるかも。デートや商談に必携となるか。先ずは目先の発電靴を待ちたい。その次が発信靴か・・・。

 


Report No208
/ 10月05日

大豆

 戦後、米国から食糧援助で輸入(マーシャルプランで無償)された脱脂大豆を炊き込んだ米飯で何とかたんぱく質補給が成されたと聞いた。今では大豆は醤油・味噌・納豆・豆腐等日本人の食品の主原料。いや、日本のみならず、大豆の発酵食品は東南アジア・中国とて同じこと。

 その大豆が食品以外に次々と利用されようとしている。それは何と言っても天産品である安全性のみならず、コスト効率、価格的に安定、世界的に入手可能、更には再生産可能な資源などの理由による。

 ところが、いつの間にか自動車用塗料・印刷インク(米国新聞インクの大部分は大豆系)・2サイクル用エンジンオイル・ポリオール化によるRIM成型構造発泡体・SMC成型材料・カーペットの裏打ち剤等へと知らず知らずの内に大豆油に人は浸りだしているようだ。

 それでも開発者たちはその手を緩めず、次なる利用を目指して研究中とか。
  ・グリセリン・メチルエステル化によるジーゼルエンジン油
  ・非毒性・生分解性による流出油除去用洗剤
  ・コンクリート型枠離型剤
  ・[大豆粉+古新聞紙]基材の建材パネル

 昔、日本の城内の倉壁には[土+穀物]を篭城に備えて塗りこめたとのこと、原油の国家備蓄ならぬ大豆備蓄なんて時代が到来するかも・・・。


Report No207
/ 09月28日

“金属は重い”3話

・湾岸戦争とイラク進攻戦では多量のウラン劣化弾が使用されたとの事。これはウラン放射線を利用したものではなく、使いカスのウランがあり、それが高比重なので破壊力の強い弾が得られる事から来ていると。放射能は悪いオマケのようなもの。

・一転して、平和の営み代表格の魚釣り。使われる錘は鉛。これも高比重品の代表格。ところが、これにも悪いオマケ、環境汚染。鉛は重金属の悪役。ある開発者は鉄に置き換えようとするも水中への沈下速度が遅くて駄目。知恵ある開発者は胴体部分に立て筋を入れ尻尾を鰭(ひれ)形状にしたところ解決。材料コストの安い、汚染のない錘が出現しだした。形は追撃砲の弾にそっくりだから皮肉。

・平和でも戦争でも役立つ鉄の塊―ブルドーザー。乗用車などは設計段階で1グラムでも軽くしようと汲々としているのに、この業界はいかに取り組んでいるか知人に聞くと、曰く「下手に軽くすると逆効果ですからねー。でも工夫はしているのですよ。軽くなった分だけ重量当たり安い材料を積むのだよ」と。言うなれば鉄1トン節約できたら1トンの岩石を乗せる訳かと。別の言い方すれば重量減らさずにコスト減らせ、ですね。

 そう言えば、ロシアの戦車は外側全面にセラミック板のようなものを不細工にぶら下げて弾速殺しにしていました。


Report No206
/ 09月14日

遠心力

 子供の頃、室伏選手のハンマー投げもかくやとばかり、泥水入れた空き缶を振り回し、砂と透き通った水に分離する遊びがあった。

 遠心力の利用は多方面に亘り、大はコンクリート電柱やヒューム管の製造から小は血液成分の分離にいたるまで、比重の差を利用して層形成を計る技術と言える。各々、特質ある材料を故意に混合して遠心力を付加すれば、単独層/混合層/単独層と分かれ、この混合層も成分比率が徐々に変わる傾斜勾配を示す。

 その特質を、屈折率・熱伝導・電気伝導・膨張率・柔軟性などの新規性材料を得るための加工技術とすると、面白いテーマになる次第。片面が金属で反対面がセラミック、あるいはプラスチックとセラミック、金属とプラスチックなどにとどまらず、金属/セラミック/プラスチックの3層系もありえる。金属もナノ級が出現しているとき、超遠心力でもハンマー飛び(?)しにくいなら超音波・電荷を掛算してみよう。それで得られるミクロン級複合フィルムは何に使えそうでしょう。

 影から、そうは問屋が卸しませんよ、の声が聞こえてきそう。でも、散歩中のボケ防止用思索テーマに好適と思いますが。但し、道路上では別のテーマの方が良さそう。遠心力で車に接触する恐れあり。

 


Report No205
/ 09月07日

ロール to ロール

 基板シートのロールを送り出して最終ロールに巻き取った時には機能性部材、部品、モジュールに化けていることを指す製造コンセプト。軽薄ものにはうってつけのプロセス。

 粘着テープや写真フィルムもその範疇なるも、最近ではITハイテク分野技術が多い。金属やポリマーのシートを舞台にして、PVD・CVD・各種エッチング・精密ポリマー加工・印刷パターン化・複合化・立体化・接合・成型等、あらゆるプロセス技術を駆使して目的物をシート長尺のままに得んとする製造方法は、ニーズに適っている。ウェアラブル太陽電池、導電性ポリマー薄膜型トランジスターシート、フレキシブルLCD、有機ELシート、非接触カード、電子タグ等、今を時めくテーマがゾロゾロ。

 しかし乍ら実際には、ピース型製造プロセスに比して、何倍もの技術難度が立ちはだかる。長尺ゆえの真空・ガスプロセスへの対応の難しさ、局所高温処理へは、テンション問題、大型の補機類の組み込み整合問題等々、殆んど既存の機器、材料、プロセスでは間に合わず、それらの開発・改良に引き込まれてしまう運命。

 人はそれでもロールtoロールを夢見る。ラボでの試作品が夢レベルでも量産技術が稚拙であれば、コスト・品質で不可となることを知っているから。

 業界は自動テープマウント方式の経験を積んでいる。これからはテープ上でガスや化学薬剤・反応性オリゴマー・ナノ金属をどう踊らせるか、いろいろなショーが楽しめそうだ。それだけに舞台の裏方は大変だ。