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Report No204/ 08月31日

潜む

 昔の忍者(敵地に潜む草)は今日のスパイ。戦争では、小は地雷、大はミサイル原潜が“潜”の代表格。じーっと身を潜め、一朝事あれば牙をむき出すもの。

 同様に、溶接部の欠陥や材料の応力ゆがみ亀裂などは普通は見えずとも瞬時に機械装置を停止に追い込む。又、ビタミン欠乏症や菌感染症(結核菌、C型肝炎など)なども、ある日突然顔を出す。かようにあらゆる分野で“潜”の例は多い。

 開発業務分野でも、
・潜在的市場ニーズが正しく組み込まれている開発諸元か?
・開発スタッフの専門能力の潜在性評価がなされているか?
・潜在的技術脅威を予見しているか(サブマリンパテント等)?
など。

 又、高分子分野でも熱重合触媒や光重合開始剤など、普段は大人しく隠れているも、熱や光が照射されると、やにわに躍りだしてポリマー化させる、所謂、触媒“草”といえる存在も工業界では重要な存在。

 “隠れたるより見るる(あらわるる)は莫し”と言われる如く、本性はやがては表面化するものと。とはいっても潜むものが何たるかを知る眼力は欲しいもの。

 

Report No203/ 08月24日

サステナブル・グリーン

 物やサービスを買う時、環境への影響を考えて拱択する人をグリーン・コンシューマーと称し、現在は30%にとどまっているが、2025年には85%にしようと目論むのが環境省。

 当然、もの作りの業界でも、貴重な資源の回収、バイオマスの更なる有効利用、耐久性ある造作物など目指して努力中。

 例えば、現在の戸建日本家屋は30〜50年で建替えか大規模補修を余儀なくされているが、戦前の田舎の茅葺家屋などは100〜200年間はザラにつかえたもの。今日では新建材と称して企業が精魂を傾けて開発した割には、エネルギー大喰い工程、有害揮発成分の放出など、グリーンには程遠い。屋根は茅や杉皮、壁は練り土や焼き板、床は木材や天然草(藺草<いぐさ>)で構成された建物はグリーンそのもの。

 そんなところに塗装しないでも錆びない鉄の出現。初期の発生錆びが逆に防錆層となる逆転の発想。さらには海岸地帯の塩分にも耐えるグレードまで上市されているのを聞き、拍手。

 途上国での家屋材料として圧倒的に多い日干し煉瓦も土と水と太陽とで造られたグリーンの代表格。では、ガラスはグリーンレベルのものありやと探すも見つからず。

 でも、ハイテク分野では常温プロセスで得られたセラミック層技術があった。ゾル―ゲル分野での有機基を付したシリカゾルを光で成膜するもの、又、アルミナ(Al23)粉やPZT粉をAD法なるプロセスで常温で成膜する技術(AIST)も驚きと拍手。膜は透明でも、技術はグリーン。

 ここでも土と水と太陽がキーワードでした。

 

Report No202/ 08月17日

芳香族に触れ合う

 何年も前のこと、自動車エンジン用ゴム品の耐ガソリン性の測定値があまりにバラツクので、市販ガソリンの成分分析したところ、芳香族成分に2倍も差があり、蒸留ものとは言え原油の産地によって大差がある事を知った。又その頃アルコール添加のガソリン(ガソホールと称す)の検討も業界で進められていたので、試験してもゴムが激しく膨潤してしまう事も知った。

 上述の芳香族は、ベンゼン核をもつ炭素化合物を指し、トルエンなどは大気汚染の元凶として締め出されるも、有機化合物の最重要出発原料であることは揺るがない。今日の様に合成技術が発展する以前は、主として石炭から得られていたもの。

 昔、石炭の液化の研究に関わっていた陳者からは少々の感慨も沸くのは、最近米独で効率良く石炭からベンゼンを生産する技術が開発されたり、日本では製鉄高炉反応を利用して生産を研究しているとかのニュース。

 芳香族と対比される脂肪族化合物は、汎用プラスチックを主とし、地上に溢れているが、特質・機能の面では芳香族を組み込んだものが多い。PPS、PEEK、PSFなどのスーパーエンプラは如何なく芳香を放っている。

 脂肪と芳香、異質だとて争ってばかりではつまらない。時と場合、手を結んでこそ新しく価値が生まれる。芳香族ポリアミド(アラミド)などその好例。他人事ではありませんね。

 

● Report No.201/ 08月10日

或る開発レース

2004年中には実用化が始まる定置型の高分子電解質型燃料電池(PEFC)は水の電気分解とは逆に、水素と酸素を反応させて電気を得る方式。この電池の心臓部は、白金触媒を両面に付着させた電解質膜とそれを挟むバイポーラプレートから成っている。このプレートの表面にはガス体が迅速に流れる様に緻密な溝パターンが形成されている。

プレートは、高度な導電性・耐酸性・強度などが要求されるばかりでなく、移動型―自動車用FCとなると軽量性とコスト、それも1〜2ドル/500cu(米国エネルギー庁目標値)の苛酷さ。それでも膨大な量の市場が見込めるので、各社入り乱れての開発レース中。

カーボン系の会社はコストダウンにポイントを置き、金属会社はステンレスを中心に表面の特殊加工でハードルを越さんと[プラスチック+導電カーボン]材料を射出成型で、いや圧縮成型ではと。化学会社、電機会社も注力中。国としてもナショナルプロジェクトとして全力投球中。

いつの間にか、基礎化学品、合成、金属、電気・電機、プラスチックの会社、更には多くのベンチャーを巻き込んでオールジャパン的なレースとなってきており、三ッ巴・四ッ巴的連携競争が進行中。どの方式が優勢なのか予断を許さないが、同じ山頂を目指すのに、まったく異なる登攀(とはん)ルートを採っている開発レースは珍しい。

この“競争”は、今のところ“狂騒”の気も感じられるが、材料と加工プロセスの独創的“協奏”によって決着するのではなかろうか。エネルギー関係の大テーマだけに目が離せない。

 

● Report No.200/ 07月27日

多重包み

 猿にらっきょうを与えると、次々と皮を剥いでやがて何も出てこないので怒るとか。最近の菓子包装も、段ボール箱―カートン箱―プラフィルム包―個別セロファン包と多重の極み。まさしく、平安時代の女官の正装、十二単(ひとえ)の如し。(尚、12枚の重ね着かと思ったが「十二」とは多いの意味語と知った。)

ロシアの郷土玩具のマトリョーシカ、箱根細工の七福神などもまさしく入れ子構造。先日('04年4月)「空海と高野山展」で、重文の経筒を拝観―それは木筒、その上に銅筒、更にそれを陶器筒に収めたもの。大事に包むとなると金属キャスタに納めた核物質、プラで包みドラム缶に入れ地中に納める低濃度固体廃棄物。

又、どうやって彫ったのか考えただけでも疲れる台北の故宮博物館の多重彫ボール、ところが別項で記述のRP(ラピッドプロト)で簡単に作ってしまうとはハイテクの為せる技か。ハイテクで多重となるとカーボンナノチューブ(CNT)それも多層(MWCNT)型。それを作るには化学気相成長法(CVD法)によるようだが、何層までできているのか知りません。

この筒の芯部に何か納めてみたくなりますね。金属元素、いやイオン種、いやDNAのかけら…。竹(筒)を切り、筒を割ったら十二単のMWCNTに包まれた不思議な芯が出てきたなんて映像は未来的かぐや姫。多重包みは丁寧さの形と知った。

<情報>東大・中村教授研究グループが「カーボンナノチューブに1ナノの穴を開け、金属ガドリニウム原子30個をチューブ(筒)の中央部に納めた。」成果を近々米国アカデミーで発表する予定とのこと。(5/25 毎日)

 

● Report No199/ 07月13日

形造り(3)

 好物菓子の一つが落雁。煎り麦粉と砂糖とシロップを揉み混ぜし、木型に詰めて叩いたもの。そこでふと思い出したのはアルミ缶。金型にアルミ粒(塊)をいれて雄型でパンと叩いて作るもの。

さすればひょっとして王冠のプラスチックライナーも叩き成型かな、と。そう言えば火薬屋の知人が金属板の圧接成型に爆薬を使う技法があると。これらを一種の圧縮成型と見ると、コイニングやインデンティングや仕上げ打ちも入りますか。

一寸、身のまわりを眺めてみたら、屋根瓦やカメラのレンズも一種の叩き成型かと。瓦は粘土の押し出しシートをプレスカットして作り、レンズはガラス塊を赤外線で熱しながら叩き押圧成型したものでした。

 いつの間にか眺めも塑性成型全体に及んできました。型に従うように材料を塑性化することは成型において最も肝要なこと。しかし弾性体のままでは成型はし難い。又々子弟の教育に絡みそう。頑固に背を向けている子に叫んでも駄目。こちらに向かせて、心が暖まってからにした方がよいと。叩くか、暖めてゆっくり押すのか、イソップの寓話の網に又引っかかりました。

 

● Report No198/ 07月06日

形造り(2)

 RPは日本人の児玉氏の発明によるも、3D−CADレーザー方式により米国で先に実用化されたとのこと。

光レジン/コンピュータソフト/装置の組合せシステムはマスターモデルや少量製作に適したものであったので、試作品・医用モデル・型の用途で急速に普及している状況。液状レジンではなく粉末材料をレーザーで固めて微細隙間に金属を含浸させるものまで出現。いったいどんな状況にあるのか手元の切抜き・文献を並べて要素つまみをしてみました。

・フェムト秒レーザー/2光子光重合型レジンによる
・10ミクロンサイズの牛成型物
・コイルスプリング状マイクロ(7μ)螺旋構造物
・滑らかな曲面造りには濃淡あるグレーマスクを利用
・光も斜めから入射して積層段差の解消
・集光レーザーを液状レジンの内部に当て液中成型法
・フォトニック結晶の形成と光MEMSへの応用     等々

 中でも個人的に感心したのは、常温では固体ゲル、100℃では低粘度液体を用いたゾル―ゲル変換・サポート不要型光RP方式。これは液中成型。さればいつの日か気中成型なんて出現するかも。宇宙、その中の星の誕生はまさに気中成型でしょう。型は何だろう。 

 

● Report No197/ 06月29日

形造り(1)

 もの造りの中心は材料の形造り。材料にもガラスあり、リサイクルアルミニュームもあり、半固体の素材もあり、その種は数千種にも及ぶ。

 更には精密度、サイズ、価格、納期などの要素が絡んでくると、造り方も変わってくるのは当然。金型(金属の型)で圧し潰したり、その隙間に流し込んだりなどの普通のやり方では追いつかず、人は工夫の数々。粉ものをゆすって超音波を印加、CAD/光エネルギーを組み合わせた光ラピッドプロト(RP)、中空ものを作るのに有名なロストワックス法のワックスの代りに熱消滅型発泡プラスチックを中子にしたロストフォーム法、半導体製造に用いられているフォトリソグラフィープロセスを利用して微細構造のMEMSや光ナノ金型など独創工夫のとどまるところない。

 型のことになるといつも思い浮かべてしまうのが教育問題。人という材料を教育という型に嵌めること。物の成型の場合は型が主=絶対なれど、教育の場合は人が絶対。教育あっての人ではない。さりとて型なければ形にならない。そこに教育の難しさあり。さしずめ自由伸縮能を持つゴム風船みたいな型ですか。

 とりあえず、別項で光ラピッドプロト、叩き成型を覗いてみました。光を当てたり、叩いたり、これとて当て方・たたき方が多々あること知りました。  

 

Report No196/ 06月22日

金泥屋

 金泥なる金絵具材料があることを知りました。文字からすると金/泥(セラミック)の複合組成物かなと思った。

 別項で触れた金箔作り、その残材からうまく作っているようですが、よくは判りません。漆と混ぜて、絵画はもとより、漆器、仏壇仏具、陶器などの金色付けに用いられるとか。

 京のこの金属屋(会社)はやがて、叩き箔から圧延法、次いでは電解法で、電子産業向けには携帯/電池・EMI、医療産業向けには抗菌剤などと、企業変身は時代を感じさせます。

 金箔を使った装飾技法に“揉み箔を撒く”があり、中世のハイテクと言えるか、即ち、三椏和紙に金箔を貼り付け、手で揉み凹凸を付け、様々な方向から着色を施すと、平面に戻しても立体的に見える表示技術があるのは驚き。

 金・銀の持つ装飾的色彩から脱して導電性、電磁波遮蔽性などの機能を求めての進路展開はやがて酸化金属・セラミックや導電性ポリマー・カーボン材料などとの競争に当面するようになる。しかし乍ら金・銀が単独で闘うよりも、これらの素材と組み―複合化して更なる自己特長を発揮することが得策と、研究者達は閃きをアクセスしている模様。

 多分下記のこれらも研究中のことでしょう。海島構造物、DDSキャリア、生体ナノ磁石、デンドリマー系錯体、セラミック複合体、自己組織化ナノ配列、導電性圧電体…など。

 

Report No195/ 06月15日

液体サンドイッチ

 食品の事ではありません。色々な材質のシートの間に色々な液体を挟んでみました。液体でもニュートン液体はソフトクリームやトマトケチャップの様なポテンとしたチクソトロピー性(高稠密度性)、片栗粉+水 の様に混ぜる程硬くなるダイラタンシー性のもの等色々。

 ・デシケータのガラスフランジに塗ったワセリンは
  空気・湿分の流入を遮断
 ・固体電極の間にイオン性液体ゲルを挟んだリチウムイオン二次電池
 ・電極付きガラスで液晶を挟んだ液晶ディスプレー
 ・磁性流体を溝に充填して篏合した形の可動性シールリング
 ・鋼板の間にゲルポリマーを挟み積層した免震材

 レンズでも2例、目に付きました。

 ・2枚のガラスレンズの間にシリコーン油を入れ、
  手動型超ミニポンプで液の増減によるレンズ位置の移動、
  その結果レンズ度数が変えられるとか。
  未開地の老人向け(英国製)
 ・電圧で挟んだ液の表面張力を変化させ、
  その結果、液表面の凸凹度が変る可変レンズ(オランダ)

 さあ、考えてみましょう ― X板の間にY液体を挟んでZエネルギーを与えたら…と。何か人間関係みたいですね。人と人との間に挟まれた言葉や表情によって、人がくっついたり離れたり。

Report No194/ 06月08日

有機圧電材

 無機の機能性材料を有機系で出来ないかとの研究はいよいよ盛ん。1940年代シリコーン樹脂の出現時、骨格がSiだから無機材よと喧伝されたもの。硝子レンズもポリマーで、ELも有機系が躍り出し、半導体までもが無機系で封止していたのが今ではポリマー封止が主役。

 機能性材料として注目を浴びている圧電セラミック(PTZ等)も有機材での開発が進行中。セラミックと異なり有機材となると、当然の事、柔軟性・作り易さのみならず、特性面(高g定数、水や生体とのマッチング、広範囲の周波数応答性、大入力が可となり、高焦電電圧感度 等)でも、その利用範囲に期待できる。

 材料的には何と言ってもポリビニリデンフルオライド(PVDF)、その後ポリ乳酸、ナイロン等も効果性が見出され、殊に薄膜加工で特徴を生かそうとしていると。その狙いも診断画像、遮音・消音デバイスや超音波スピーカー等にあると言う。

 殊にPTZの“P”=Pb(鉛) 分は環境汚染の元凶なので、有機系の追い風になろう。とは言っても長期的にはPVDFのF=フッ素も、その廃棄物処理では問題となるので非フッ素系の材料がやがて主役になるのか。

 主役交替は世の習い、いつ迄も胡座をかいてはおられぬ。外部から刺激(歪み)を受けると電気分極や磁界が発生する現象が圧電性なら、自ら感じているかも?

 

Report No193/ 06月01日

環境に優しいコーティング

 今日では、BTX(ベンゼン・トルエン・キシレン)を多量に含む塗料は許されない。よって、BTXの少ないハイソリッド型、粉体型、水性、電着、光(UV)硬化型等が進展。更には水性粉体、光硬化型粉体、水性光硬化等の複合システム、又、貼るタイプのフィルム状塗装方式も出現。この種の分野の一番のリーダー役たるEPA(米国環境保護庁)のペーパーを覗いてみたら、面白い新型3種が紹介されておりました。

@硬化剤蒸気打ち込み方式(VIC)
 2液性ウレタンで、ブロック化反応促進剤を含むコート。
 ジエチルエタノールアミン蒸気を加えて硬化。エネルギー消費量が少ない。
A臨界炭酸ガス液を稀釈溶剤とするコーティングシステム
 塗装スプレーガン直前にハイソリッド塗料を液体CO2と混合。
Bレーザー/熱硬化型コーティングシステム
 レーザーによる反応架橋と熱硬化の相乗効果狙い。
 殊に、フッ素系ポリマーコートに便。又、今後、粉体、水性ものにも展開とか。

 これらの技術コンセプトを食品加工に利用したらどうでしょう。@は蒸す、Aは衣付けBは部品加工等と。一枚の切身で 刺身/天ぷら/焼きもの が混在。食べる気がしますか…?