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● Report No133/ 02月27日

光で作るゲル化合物

 最近、機能性材料としてのゲル複合材を形成する技術手法に、硬化性レジン(液体)と機能性液体の組み合わせが多く見られる。硬化性プロセスは単に液体の配合物に光を照射するのみで済むばかりではなく、液体を任意の位置に任意の形状でゲル化(固体化)させ得るので、その生産性は高さから広く利用されている訳。古くは、揮発性成分の香料、防虫剤、殺菌剤等の徐放性ゲルがあったが、近頃はIT時代に相応しい技術が開発されつつある。
 ・光硬化性アクリレートと液晶−電子ペーパー
 ・光硬化性シリコーンとシリコーン油−衝撃吸収材
 ・光硬化性エポキシと電解質溶液−リチウム電池固体電解質
 ・光硬化性ウレタンと合成油−電子筐体ガスケット
 光硬化性レンジは僅か10%以下の量で機能性液体を擬似固体(ゲル)に変化させられるので、液体があったらこの組み合わせで考えてみると特許になるかも知れませんよ。

電子部品内蔵基板

現在花盛りのSMT(表面実装技術)方式は、超軽薄短小のニーズに徐々に対応しきれなくなり始めているだけに、電子部品を基盤に内蔵する方式が徐々に注目されている。抵抗、キャパシター等のチップ部品、果ては裸のICチップに至るまで基盤の中に埋め込んでしまえば、究極のシステムパッケージともなろう。理屈では成り立つが障壁は多々あり。誰が主体で開発するの?生産は誰が?。現在の基板加工専門会社では裸チップは扱えない。チップ業者からすれば複合材システム的なトータルハンドリングは厄介だ。いわんやCRLチップ業者は無理。又、C.R.チップを基板に作り込みとなると尚更のこと。更に配線・発熱処理・高絶縁材料・異種材料接触箇所の応力緩和、等々限りなくハードルが多い。しかしそこが開発テーマたる所以。ハードルの向こう側に蜜があるとなると人は頑張る。 既に下の分野でも激しく迫りつつある。
 ・新規の放熱材料
 ・キャパシター、抵抗、コイル、導体パターンのポリマーフィルム上への形成
 ・ポリマーベースの高誘電膜・低誘電率材・高透磁率材
 ・印刷用ポリマー系導体ペースト   等々。
  さあ、SMTの世界の大地殻変動期をのり越えるのは誰か。

 

● Report No132/ 02月20日

プラスチックで複合化

 プラスチックは他の物質の結束剤として効果的に利用出来る。それは単なる結束能のみでなく、耐薬品性に優れ共たる物質の特性を生かしたまま成形(フィルム化、板状、塊状など)が自由。この種の開発事例3件。
 ・故紙とポリプロプレンを練り合わせペレットとし、射出成形によってエンジン  部品・建材・食器などを製造。紙繊維は高強度かつ、焼却時のカロリーも一  般プラスチックに比べて40%も低いという。(北越製紙)
 ・フェノール樹脂の合成工程で石膏を加えて固化せしめ、本来耐水性の無い  石膏複合体は吸水によって更なる強度アップする技術。(桐陰横浜大学)
 ・植物繊維中でも高強度を示す竹繊維とポリプロピレンと無機系の充填剤を  ペレット化し、射出成型によって高強度でかつ30%以上低い燃焼カロリーの  環境負荷の低い物体が得られ、照明器具から実用に入った。(松下電工)


次項で紹介するタイヤサイクルの微粉と組み合わせるとどうなりましょうか。

タイヤリサイクル

 大洗港口で北朝鮮貨物船が座礁。タイヤチップを大量に積んでいた。エネルギー源に困っている同国は、先進国から社会問題となっている野積み廃タイヤをカットしたチップに着目した訳。タイヤは燃やせば25GJ/トンの高発熱量の炭素の塊。しかし、やたら燃やしてしまえばそれ迄。ゴムは本来高度な化学材料。サーマルリサイクルではなく、マテリアルリサイクルを工夫すべき。途上国では摩擦タイヤの表面に溝付けライニングによっての再生化更生化は勿論当然。  一方米国では微粉砕してタイヤ製造時の原料フィラーとして利用すべく、150メッシュ以下を狙って水中粉砕法(100〜120メッシュ)や凍結粉砕法(40〜80メッシュ)の開発が進められている。日本では高速高温剪断法によって加硫構造を崩し未加硫状態にしようと、ブチルゴムから試しているとのこと。リ・ユース、リサイクル技術の優劣が企業の盛衰にだんだん大きく関りだした様だ。脳ミソもリサイクルして考え方を変えねばならない様だ。

 

● Report No131/ 02月13日

CPUの放熱

 電子機器の高性能化・小型化が進む程、内臓部品の発熱を何処にどう逃がすかが極めて重要になって来る。心臓部品たるCPUなどは動作時には半田ゴテなみの発熱なので大変。そこでヒートシンクをCPUに接合させて放熱するには、接合面には元来微細な凹凸があるため隙間を埋める材料、例えば放熱グリースや熱伝導性ゴムシートを介在させるのが普通。しかし乍ら、急激な温度上昇(或は下降)に伴う膨張、収縮に追随するには超軟質でなければ対応出来ない。グリースだと微粘着なれど周辺部位を汚したり、高温ではみ出し滴下したりしてしまう。さりとてゼリー状シートでは実際上取扱いに不便。さすれば、こんなものがあればと期待。"常温では熱伝導性粘着シート、一定の温度領域では超軟質体となり、常温に戻ると再び粘着性が再現する様な組成物"を。少し調べてみたところ、もどきレベルの技術はありましたが、未だの感。さあ分子設計者の出番ですね。か様に補助材であり乍ら、その特性何如では主役の生殺与奪権を持っているとなると重要テーマになる。

非水性ゲル

 食品に良くあるプルプルした感じの食材で豆腐、プリン、ゼリー、蒟蒻などはゲル体。しかし乍らこれらは水分が主成分の所謂水性ゲル。一方非水性ゲルは非食品分野の工業分野では古くからよく利用されている。固体と液体の混合によって、固体をマトリックスとして液体がその隙間に宿る形となる為、量的には主役の液体が見かけ固体形状を呈示する次第。単に形状のみならず双方の特性が掛算で発現されて、個々では為し得ない材料となる。いくつかの事例。
 ・微粉末塩ビ + 油状可型剤 → 軟質プラスチック成形物
 ・ノルボルネンゴム + 鉱物油 → 振動衝撃吸収剤
 ・ワックス + 芳香液 → 徐放性芳香剤
 ・熱可型ゴム + 合成油 → 健康 ベットクッション材
  これらは、身近にあり、目に触れるものがなのでああそうかと直ぐに思い当たりますが、材料や加工プロセスでよりハイテク型にしたら、との開発が当然考えられます。それが別項(452)の"光で造るゲル化物"の応用例です。

 

● Report No130/ 02月06日

 

ウェアラブル太陽電池&ディスプレイ

 色素を用いて光への感度を増大させる技術は写真の銀塩に添加するのに始まり、光ディスク、LCD、フォトポリマー印刷製版や、有機ELへの蛍光色素、エレクトロクロミック(EC)等表示分野でのキー材料になりつつある。太陽電池でもローザンヌ工科大学グレッチェル教授による色素増感型は革新的。それはナノ級酸化チタンの表面に吸着した金属錯体系色素が効果的に太陽光線を吸収し、今や10%の変換効率至ったとか。今のところ未だ透明導電性ガラスによるサンドウィッチ構造であるが、将来高光透過性ポリマーフィルムやゲル型電解液と相俟って、ウェアラブル太陽電池シートも可能になると酷熱の砂漠でも衣服内部にプリントされたペルチェ素子アレーによる冷却効果で、快適に過ごすことが出来るようになろう。又、それは酷暑の下での労働を余儀なくされている冶金工場、電気保線工や、夏の屋外作業員のクーリングウェアとしても期待出来る。更には熱帯夜を感じさせないパジャマまで可となるか。一方、最近有機ELでフィルム上ディスプレイ(厚さ0.2ミリ、3グラムのテレフォンカードサイズ)が開発された(パイオニア他)とあれば早速太陽電池と組み合せましょう。だんだん腕時計、携帯電話、定期券が外出時に不要になって来ますか。それとも・・・。大産業分野になりそうです。

修繕

 戦前、日用品は修繕修理して使うのが当たり前であった。金属釜の鋳掛屋、蝙蝠(こうもう・・・洋傘)のこうもりや、鍬(くわ)、鎌(かま)の鍛冶屋、磨り減った下駄の歯のつぎ足しの下駄や、の他、割れた瀬戸物は金の鎹と麦漆での接合や、漆塗り椀の塗り直し、などなど。現在の使い捨て文化に比して"継続の文化"とどなたかが主張。人は誰でも使い慣れ・・・愛着の指向はある。良い物を長く使う心根は美しく映える。脱線話で、仮に先端技術材料で出来たものの修理修繕やは?と。
 ・シリコン結晶体のお箸には・・・プラズマ接合や
 ・デジタルペーパー製ジャケット(上衣)には・・・エリアモジュール張替や
 ・光ファイバー製カーテンには・・・マイクロかけはぎや 一方あまりに物の寿命が長くなると消費経済に影が射すのではとも思はれる。現在では靴の修繕やのみ存在するのかと思ったら楽器の世界では極めて当たり前のことに思い当たった。

 

● Report No129/ 01月30日

 

有機金属複合材料

別項で触れた錯体とは別に、有機物と金属をナノレベルで接触させると、特異性が出てきます。故に、この種の研究も盛んです。

方式
狙い目
研究機関
・ジアセチレン化合物で被覆された、球状の銀ナノ結晶物 光・電気・磁気・ナノデバイス 東北大
・金属ガリウムを注入したカーボンナノチューブ 微小空間温度計 物質材研
・DNAネットを金の微粒子でつなぐ配線構造 DNA分子チップ 大阪大学
・CNTに2ナノレベルのプラチナ粒子を付着させたパターン FC用電極 NEC
・ポリシラン表面のパラジウム層上に無電解メッキ用レジストとしてのアルカンチオール膜 マイクロ配線 信越化学

 ナノテクが国家プロジェクトの時代、どんな子が産まれることでしょう。新聞の先端技術ページが楽しみ倍増になります。10年後、20年後にそれらがどれだけの産業規模になっていることやら・・・。

石炭の液化

 主役がいつ迄もスターであることは難しい。石油とて枯渇が見えている。石炭はその埋蔵量は石油の幾倍もある。唯、固体だから取り扱いが面倒。そこでそれを液体にしようとCOM(Coal Oil Mixture)-重油の中に石油微粉を混ぜたり、オイルの代わりに水を使って微粉炭をスリラー状にしたりして発電所の燃料に用いたりしている。  昔、石炭の液化の研究に少々触れた物としては、当時から今日まで続く石油主役の中で、研究者達はがんばって成果を挙げつつあるのは関心深い。最近のレポートによると、FCCプロセスによるガソリン製造で多量に副生するLCオイルとモリブデンDTC触媒の存在下での液化率は、無触媒に比して2倍にもなったとか。一方NEDOL法なる石炭液化プラントでは液化油5%、ガス5%、水分10%、残液(CLR)と称する(有機分+灰分+触媒類)が20〜30%とあり、これらも更に水素化分解反応によって低分子有機成分に転換されるとか。  人類は、現在の地球資源を余すところなく有効に利用することが今日、最も求められているだけに、見かけは無骨だが頼り甲斐ある石炭の研究は欠かせないと改めて感じた。

 

● Report No128/ 01月23日

 

水素の運びや

 燃料電池自動車がいよいよ市場に出てきた(トヨタ・ホンダ)もっとも。高価すぎるので官庁あたりが政策的にリース料で採用するとか。これらは燃料源たる液状の炭化水素(-CH)から水素(H2)を得る方式ではなく圧縮高圧水素タンク搭載方式だ。GMでは一歩遅れて?液化水素方式で上市するとか。水素をどの様に得てFC(燃料電池)に送り込むかで激しいレース中。その中の一つの技法にデリカン方式が面白い。デリカンはテトラリン(MP -36℃、BP 208℃)と言う室温で蒸気圧ゼロの安全液体を経て得られ、300℃以下で水素(H2)を放出するとか。そうなるとガソリンならぬデカリンスタンドで車にH2が消費されてしまった残液たるナフタレン液を抜き取り、次いでデカリンを給油してやれば良いと言う。その意味ではナフタレンは水素の真の運び屋と言えます。今のガソリンは一度に燃やして何も残らないから草で言うと1年草。デカリン方式はH2と言う果実のみつまみ出し、木(ナフタレン液)は、そのまま又果実(H2)をつける多年草。安全な液体を現行のインフラシステムで使えるとなると大注目したくなる。

補強

 補強一文字通り強度を維持若しくわ増強する為の措置。 近年、大問題になっているのはコンクリート構造物の劣化問題。海砂による鉄筋腐食やコンクリート中性化による崩壊の危険。更には地震への対策も加わり国挙げて補強活動に入る次第。そこで登場したのがハイテク材料のカーボンファイバー布の貼り付け工法のいろいろ。ところがこの種の工事は3K(きつい、汚い、危険)の代表クラスで熟練工の慢性的不足。さりとて安全に関わることだけに手抜きは許されない。これらとは別に地下−即ちガス埋設管の補強も重要。旧い管を掘り出すことなく、そのまま補強できないかと研定の結果、反転シール工法なる技術が出現。管内に球(ピグ)/接着剤/シールホースを入れピグ側から吸引すればホースは反転しながら内面に貼りつく仕組み何十万キロメートルもの長さ、大地震が来る迄に済ませねばと業界積極的に取り組み中。偶々、漆芸家室瀬和美氏の記述によると蜂は吸った漆液を自分の粘膜を混ぜて巣のつけ根に注入し徐々に大きくなる巣の重さに耐える様にしているのだと。したがって漆の木の無いアフリカの蜂の巣はみな小型で数多く並ぶのが普通だと。やっぱり賢い生物だけが生きながらえているのですね。

 

● Report No127/ 01月16日

 

 色(1)

 色や香り、味を言葉によって正確に他人へ伝えるのは至難の業だ。何かになぞらえて表現するのが一般的だろう。もし相手との間に知覚と経験の共通認識があれば、かなり正確さが増す。日本には、自然物の色合いに因る独特の単語が数多くある。茄子紺(なすこん)芥子(からし)山葵(わさび)赤銅(しゃくどう)・・・・・・万葉の世界からは木賊(とくさ)萌黄(もえぎ)桧皮(ひわだ)蘇芳(すおう)などなど。外国でも空や海や炎、鳥獣や昆虫、花草木や木の実、土や石になぞらえた色の表現が多い。CCD(電化結合素子)による結像―プリンタによる色出-しは万の桁台で、人の知る色は全て表現できるとか。標準色としてのマンセル記号やJISZ8102は約2000色あり、人が造れる色は1万色だとか。ところが人間の識別能力は100万色に及ぶと言う。藍の微妙な色合い、そこには祖母の愛用着の香り、手触り、立ち振る舞いまで、その色の裏に潜んでいるものを人は感じ取れるからなのだろうか。

仲人

 仲とは人と人との間柄。従ってその間に割り込むのが仲人。結びつけて結婚に至らせる役。希にその反対の場合もあるが、仲人の腕次第では驚くようなカップルも生まれる。
 水と油と言って、混じり合わない代表で例えられるが、最近ディーゼルエンジン用に水50%を含む水エマルジョン燃料が新開発の界面活性剤(仲人)によるもの。また、プラスチックも種類によっては混じり合わないが、相溶化剤なる仲人の出現で双方の特性発揮の子供(?)(混合物)が得られるようになった。
  技術開発に於いても、壁に直面した時は仲人が欲しくなる。弊社は精密成型分野ではいつもそのお役に立ちたいと願っております。

 

● Report No126/ 01月09日

 

糊なし接合

 のり(接着剤)を使用しないで物品を接合する方法で、半導体封止用ガラスケースの封止技術のニュースが40年も前なのに今でも妙に記憶にある。それは熱による融着接合ではなく或種の表面活性化による自然?瞬間接着法であったから。その後バッテルジュネーブ研究所のPETフィルム同士の長尺合せ試作品を見て、同じく表面活性化によるものと知り、不思議な気持ちでぺりぺり剥して感心したものだった。後プラスチックの超音波接合などが実用化されるのに至り、のりなし技法の開発マインドも他分野で強く研究開発されるようになった。ウェハーの積層接合に、イオンビーム照射による表面クラスターの活性化を計り、常温接合する技術はアルゴンプラズマによって可能となり(東大/東レエンジニアリング)又、金属同士の接合も充分可能と言う。もともとプラズマは物質の表面分子に影響を与えられるので、化学分解気化現象を利用する洗浄プロセスとして既に広く市場には有る。最近異種金属同士でも摩擦攪拌接合法なる技法によって、アークやレーザー溶接の様な高温ではなくても可能になったとのこと。銅/アルミ、鉄/アルミなど可能。(日立研究所)仲人なしで本人同士の気持の高まりで結ばれたカップル程その絆は強いのでしょう。

ダルマさん転んだ

 子供の遊びである"ダルマさん転んだ"は、鬼が振り返ったときに動いてはいけない、というルール。二昔前、光硬化性レジンと磁性粉を混ぜてプラスチックシート上に塗布し、裏から磁石で磁場を与え、磁粉を軽列化させ、直ちに光照射によって硬化固定する、といった実験をしていたことがあった。当時は軽い遊びの気持ちで終わらしてしまったが、近年同様のコンセプトでのハイテク技術が出現した。「磁性粉+光硬化性レジン」の代わりに光硬化性液晶モノマー、磁界の代わりに電界を用いてモノマーを配向させ、φ100ミクロンのマイクロレンズのアレーを作成するというものである。
 テクノシーズとしてまだまだ利用例は増える"ダルマさん転んだ"である。

 

● Report No125/ 12月26日

平面コイル

 コイルと言っても鉄板をロールまきにしたものではなく、電気コイルのシート状のもの。一昔前某ベンチャーが開発した印刷で作るスーテーターコイルではなく銅線をクルクル巻いて偏平に押し潰したやつ。こんなコイルがどんどん一般人には見えないところで増殖しだした。アンテナ平面コイルを内蔵した非接触ICカード、電子荷札としていよいよ流通が始まるIDタグ、シート状スピーカーを形成するボイスコイルなどなど。
  昨今プライバシー保持度合で論議の"住民基本台帳電子ネット"も若し将来IDタグが個人ペンダントとして保持が義務付けられたりしたら、日常の行動経路、範囲を全て記録されるので、これに比べればものの比ではない。又、IDタグから発信される膨大な情報はEDF平面コイルシーとなる光増幅器で通過処理され何億人と言えども瞬時にその所在が確認可能となる。政治家の秘密の会合、恋人同士のデート、企業トップの行動等々全てが把握されてしまう事になる。こんな薄っぺらで扁平の平面コイルに押しつぶされない様な丸い人生を組み当てる為の防備、工夫も必要になってくる。

有機CVD

 軽薄短小の時代、薄の分野では薄膜、その形成法はいろいろあるが、ポリマーの薄膜形成それも複雑な表面形状となると硬化性液状物の塗付では不可能。凸凹や鋭角突起は表面張力の関係から充分かつ均一に被覆し得ない。そこで考え出させたのが、反応性(重合性)ガスによる沈着重合コーティング法。30年前に米国U.C.C社によって開発されたパリレンコートシステム。それはポリパラキシリレンのダイマー(=量体)を加熱してガス化し、真空チャンバーに置かれた部分に接触させてやるもの。チャンバーは常温なので、お遊び実験でバターや角砂糖でも塗れた。前者は後でバターを溶かしてしまえば薄膜(0.5ミクロン厚〜)が得られるし、角砂糖も薄コート後沸騰水で、煮れば隙間の逆転層のみ残るスポンジが得られた。超薄で透明、耐熱、耐水性などに優れているとなると電気電子部品のみならず、医療部品(カテーテル、チューブなど)への応用開発も盛んに進められている。又、より耐熱性のある膜の形成にはフッ化系ダイマーやポリイミド前駆体を加熱真空チャンバーと組み合わせる技法なども上市されている。表面張力の制約の無いガス体でポリマー膜を形成するプロセスは一層その広がりを見せるでしょう。
  前述のバター、角砂糖の事例を参考に他のアイデアを出してみませんか。

 

● Report No124/ 12月19日

数珠つなぎ

子供の頃、法事で見る数珠のいろいろは、黒光り、透明ガラス玉状、木製で茶色のつやつやのやつ、大人が手に持てば丁度子供の目線の位置ゆえに、やがて数珠を見れば誰のものか判るようになった。その延長でのビーズのいろいろ情報が気になるところ。  
 ・寸法はミリ径、ミクロン径、ナノ径
 ・材質はガラス、シリカ、ポリマー、表面に何か蒸着
 ・天然ビーズと言えばシラスバルーン、バルーンだから軽量
  −プラスチックに混ぜてみよう−
 ・ガラスは透明、光の屈折、反射散乱材に
 ・ビーズを空気と共に吹き出せば研磨材になる
そんな頭の状態のところに3年前のマイクロマシン展で見た5ミクロン径ビーズをマニュピュレターを用いて5段階に積み上げ光硬化型接着剤で固定されたマイクロサーカス?を思い出した。又、そのあとに1ミリ径シリカビーズの表面にパターニングしたボール半導体の出現ニュース。早連このボールにミクロンビーズを配列接合してみたくなります。

マスク

小心者のスタンリーは謎めいたマスク(仮面)を拾う。それを付けたとたん怪人に変身・・・と言う映画「マスク」。野球捕手の面の他、紅葉を紙に置いて色液をふりかけ葉を除くと抜き絵が出来る子供時代の遊び、これもマスク。このマスクのコンセプトをハイテク分野での利用は増大の一途。事例をいくつか。
 ・RP(ラピッドプロトツーリング)システムに於いて、光硬化物の積上げ方式ではなく、写真フィルムのネガ(ポジ)をマスクとして立体物を得るグレースケールマスク方式(東大・トヨタ)
 ・PCで得られたパターンプリントを印画した35m/mフィルム或はマイクロフィシェを マスクとしてフォトレジスト層に当て、迅速かつ安価にマイクロパターンを得る方法。(ハーバード大学)
 ・EB加工等で得られたマイクロパターン原型から、シリコーンゴムレプリカスタンプを得、アルカンチオールをインクとして蒸着金膜に印し、ヨードチンキ剤にてエッチングすればインクがマスク剤として作用するので容易に金のマイクロパターンが得られる。更に基板をエッチングにて除けば金パターンのみが得られ、折り曲げれば3次元ナノ金線のかごが得られる。(ハーバード大学)
 ・音波の分野でも特定の周波数のみ通さないマスク技術があるそうね。お説教のみマスクする耳カバーもあったら・・・。

 

● Report No123/ 12月12日

水の振る舞

 古来より水は不思議なもの故に神水とか霊水と崇める風土があった。近代に入り"水の本性"を把えんと科学的探求が広く進められ今日でも新しい発見が次々と発表されている。基礎的な知見として、水も氷もスキマだらけ、融けても残る隙間、水は液体でも構造を持つ、電磁波の下での特定の挙動などなど。最近の研究で水の流せないニュースいくつか。
・液体と気体の区別がつかない超臨界水(220気圧以上+374℃以上)でPCBやダイオキシンを分解無害にしてしまう−オルガノ社
・単純な分子構造の水が4℃で密度極大かつ低温になる程圧縮されやすい特異現象は「液体−液体」臨界点の存在に基因すると解明。−物質材料機構研究所
・水分子を太陽光の中の可視光線部エネルギーによって分解してクリーンエネルギーの代表格の水素(H2)を効率的に得ようとし、[金属/窒素/酸素]からなるオキシナイトライドを用いて可能性が出つつある。−東大先端研
 水と言う膨大な量の資源の高次元での利用方法は人類の行く末に計り知れない効果をもたらすのは明らかです。

薄膜が形成されるかな?

 薄膜形成にはいろいろな技術があるが、若し真空蒸着やCVD(プラズマ・光)、有機CVDで下記の様な一時的仮固定用担体に膜形成を考えたらどうなりますか。若し可ならば何に利用できるでしょうか?
  ドライアイス(シート、粒)
  バター
  ワックス
  氷
  テフロンシート
  イオン性液体    など
 更にパターニング化も工夫すれば転写によって機能材の道も拓けるかも。
 こんな素朴な問題/アイデアは散歩中の頭の体操に好適と思はれますが・・・。

 

● Report No122/ 12月05日

剥がす

 物造りの工程で接着接合は重要な手法だが、逆に剥がすと言う工程技術もハイテク分野では注目されている。
 ・チップ分野用セラミックグリーンシートの切断時に用いるキャリアー粘着シートに熱時発泡型マイクロカプセルを組み込んでおくと、容易にバルク様チップが得られる。(日東電工)
 ・FPC用極薄(3〜5μ)の銅箔に予め無機層を介して35μ程度の銅箔をラミネートしたものを基盤にプレス接合し、所定の加工後35μ銅箔を剥がせば、極薄箔の加工貼付けが出来る(日本オーリン)
 ・シリコンウェハのダイシングに於て、厚み方向内部に形成した改質層を起点にしてしてレーザーによってチップ分割剥離する方法(浜松ホトニクス)
 ・ガラス基板に形成したTFTをプラスチック基板に転写するに当り、予めTFT層上に設けた仮保護シートを剥がして得られるフレキシブルディスプレー。(ソニー)

 剥せるとは工程上の必要レベルの接着接合強度は保持しているも、必要に応じて容易かつ接合面に損傷を与えない条件がつくだけに高級技術と言える。

手術

 医療現場の手術に工業技術が転用されている例が多い。
 ・シアノ系瞬間接着剤が縫合に代わる切断面の接合に。
 ・血管に挿入されたマイクロバルーンにカテーテルを通じて光硬化性樹脂を注入。光ファイバーより光照射硬化による血管寒栓の形成。
 ・表面に磁性材を付したナノ素粒子をガン部に注射し、外部より誘導電磁エネルギー付加により、熱に弱いガン細胞を焼死せしめる。
 ・二酸化チタン(光触媒)を坦持した金粒子をHeガス圧力でガン部に打ち込みUV照射による皮膚ガンの治療。

 この他合金、セラミックなどによる人口骨なる構造材料もあるし、工業界で言うとところのコーティング、ライニング、シーリングなどの補修プロセスが、転用、展開される様になろう。