トップページで毎週お届けしております NEEDS と SEEDS をつなぐ】は新しいレポートが掲載された後、こちらでバックナンバーとしてご覧いただけます。


2000年夏 / 6月〜 8月

2000年秋 / 9月〜11月

2000年冬 /12月〜 2月

2001年春 / 3月〜 5月

2001年夏 / 6月〜 8月

2001年秋 / 9月〜11月

2001年冬 /12月〜 2月

2002年春 / 3月〜 5月

2002年夏 / 6月〜 8月

2002年秋 / 9月〜11月

2002年冬 /12月〜 2月

2003年春 / 3月〜 5月

2003年夏 / 6月〜 8月

2003年秋 / 9月〜11月

2003年冬 /12月〜 2月

2004年春 / 3月〜 5月

2004年夏 / 6月〜 8月

2004年秋 / 9月〜11月

2004年冬 /12月〜 2月

2005年春 / 3月〜 5月

2005年夏 / 6月〜 8月

2005年秋 / 9月〜11月

2005年冬 /12月〜 2月

2006年春 / 3月〜 5月

2006年夏 / 6月〜 8月

2006年秋 / 9月〜11月

2006年冬 / 12月〜2月

2007年春 / 3月〜 5月

2007年夏 / 6月〜 8月

2007年秋 / 9月〜11月

2007年冬 / 12月〜2月

2008年春 / 3月〜 5月

2008年夏 / 6月〜 8月

● Report No243/ 08月30日


コンクリート構造物の補強

 地震対策に迫られている。柱や梁を鋼材補強となるとその鋼材の重さ分、又、追補強の必要が生じ、追いかけっこになってしまう。コンクリートの中に強化繊維(耐アルカリガラスファイバー等)の配合研究はあるものの既存構造物の補強となると、やはり柱・梁・床材対象にFRPの貼付け措置が妥当。カーボン繊維系のCFRPによる拘束効果は大きく、技術普及の研究会・協会も10指を数える程。本来のCFRP成型物は工場内成型で、オートクレーブ・積層加圧・引き抜き成型等の工程で得られるが、補強施工現場では、常温硬化レジンシステムに頼らざるを得なく、必然的にハンドレイアップとなり、加えてCF基布もUDトウとなると熟達した職工のみが取り扱えるものとなっている状況。含浸用レジンもエポキシ・アクリル・ビニールエステル等、繊維布も強度はCFに劣るも、アラミド・ビニロン等も利用されている。現場作業性の改良と、下記技術も上市。

  • CFRP硬化板(1〜2mmt)を現場で接着貼付け
  • 光(可視光〜遠赤外領域)硬化性レジン配合物の採用
    但し、カーボン繊維系には適さず

 さすれば、これからの注目技法は? と眺むるに…

  • 凹凸施工面に追随性(Conformal性)あるCFチョップ入り光プレチャージ型カチオン重合性モルタルの吹付け工法
  • 現場操作型電子線(EB)照射システム

 おっと、自宅の備えはどうでしょう。補強か?制振か?備えあれば憂いなしですが…。



● Report No242/ 08月06日

注射

 注射の好きな者は居ない。それは針の刺痛ゆえ、特に子ども達には苦行。そこで薬剤の皮下摂取の効率性と無痛化を目指しての開発は盛ん。髪の毛の半分の10ミクロン径の2重内管構造で外側はギザギザ付きの蚊の針、針の表面の潤滑剤シリコーン油問題等経て続々と公表された技術の数々、専門家でなくとも面白分野。

  • ステンレス管の引伸ばし方法の限界を知って、薄板を奉書の如く丸める加工法は下町の世界的開発ベンチャーが
  • 50μ径のアルミワイヤーにプラチナメッキを施し、アルカリでAlを溶出させて得る、エッチング加工法
  • LIGAプロセスによって得るピラミッド型の孔付針
  • MEMS(結晶異方性エッチング)加工によって得るシリコン製剣山状(針は80〜120ミクロン長)アレーにボタン電池を付けたモジュールを皮膚と薬剤布の間に置く方法
  • 上述のボタン電池に替えて、使い捨て型のペーパー電池を薬剤ゼリー層と組合せるアクティブ(強制)浸透型
  • さすればアクティブソースが超音波型、光(VL−NIR領域)型もと
  • マイクロカプセル(水性動物由来)内に薬剤とNanoチューブを封入し、外部エナジーによって活性化すると高圧力生じ、チューブが皮膚に突き刺さり、チューブを通って薬剤が放出される仕組みも出現

 こうなってくると要らぬ心配も。ニコチン化合物のアクティブパッチシステムが出来、場所を問わない喫煙、いや“皮膚喫ニコチン液者”達が出現。でも、一方で解毒パッチも出てきましょう。更には、禁止薬物への利用も密かに進行するかも――注射痕がつかないだけに厄介。

 

● Report No241/ 08月02日

アサーマル(温度無依存性)

 光技術の時代、情報通信・ディスプレー・メモリー・光ファイバー・センサー等が正常に作動・機能する為には周囲環境温度に影響を受けない様な熱収差補正が不可欠。無機系材料(シリコン・セラミック・ガラス・金属)は温度変化に強い(鈍感)なれど、有機系高分子は屈折率の低下度合いが10倍もあり、熱収差の対策を打たねばならない。そこで研究者達は工夫の数々。高分子材料の屈折率の温度依存性は膨張係数に由来している――即ち、伸びが大きい故となれば、その伸びを抑えてしまおうとの発想がベースとなって来る。(例:鉄道のロングレールが夏場に伸びないのは何故?)いくつかの事例を下記。

  • 線膨張係数が負(−)のセラミック基板(アルミナ・シリカ・リチウム系)上に正(+)の高分子系材料をオンさせた光導波路
  • 温度上昇と共に屈折率が増大する無機系ナノ粉末を高分子に分散配合するレンズ
  • 特定のポリイミド前駆体の成膜を一軸延伸によって結晶化し加熱工程経てアサーマル型複屈折フィルムを
  • 有機/無機系ランダム・ナノ構造の微粒子を分散させたガラスレンズ

 屈折率以外の特性項目では重合・硬化時の収縮をゼロにせんと一般のエポキシ(+)に膨張型(−)オリゴマー(スピロオルソカーボネート等)を配合技法も存在する。アサーマル化とは“帳消し―収支ゼロ”措置技法と言えよう。業績評価システムなんてのも一種のアサーマルかな?

 

● Report No240/ 07月22日

単分子の林を逍遥

 アルカンチオール分子(RSH)は、金(Au)の表面ではチオール基(-SH)を足にしてSAM層(自己組織化膜)を形成する。チオール分子は垂直に、あたかも秋田蕗の如く立ち、その中に立ち止まれば、降雨にも葉の部分が疎水性なれば雨宿り出来るし、若し親水性であっても茎の部分は疎水性ゆえに何とか濡れないで済みそう。若し雷が落ちて電場環境が変化すれば、茎が湾曲してお辞儀する形となって葉の部分が隠れてしまうので、空からの雨は茎ネットによって撥水されてしまうとMIT研究チームは証明した。即ち、親水/疎水のスイッチング機構の新顔。

 こんな事出来るなら[足部/茎部/葉部]のそれぞれ化学式の異なる分子を得て、更にそれらの異種分子を複数配列パターン化/積層すればと、ふと感じていたところ、日本化学界春季年会(H17.3月)「多種類のナノ分子を1ステップで規則配列」―半導体からバイオまで―(物質・材料研究材構)の発表に接し、驚嘆し拍手。

 さてこうなると蕗畑としてのデバイス能発揮でこの畑面積をどこまで縮小できるのか気になりだし、若し蕗一本で、即ち単分子でデバイス形成の道は何処にと眺めていると、AND論理ゲートを単分子で成功させたナノ級分子デバイスの発表で更なる拍手(英クイーンズ大学)。あまりにも精緻を極めたデバイス用発光分子とそれを納めるナノ部屋、発光起剤は水素とナトリウム、部屋材料も蛋白質中に存在するとなると、まさしく生体内デバイスにもなり得る。脳の片隅に注射でコンピューター機能付加も。

 

● Report No239/ 07月12日

熱を余さず利用

 一昔前は火力発電所から出る温排水でのウナギの養殖が注目されたことがあった。更に、ぬるい湯の熱エネルギーは少ないから苦労して抽出利用しようとはしなかったが、京都議定書以降、徐々にその熱回収が研究テーマになり始めた。

 工業的には熱い(90℃以上)領域でないと役に立たず、又、冷熱とてLNGの強烈な冷エネルギーならいざ知らず、10〜15℃程度の冷水となると効率的利用が難しい。ボイラーもLNGも無い時代、雪室で雪の冷熱を貯蔵して清酒の保存に用いたとかの例はあるものの、徳川将軍に献上すべく富士氷穴氷をオガ屑桶に詰めて早馬で江戸に届けても大部分は融けてしまう有様では冷熱コントロールも難しい。

 昨今では知恵者達は潜熱が大きな液体に熱を抱かせてそれを移動、即ち、固相―液相の相変換の際の融解熱を利用せんと、脂肪族炭化水素―例えばパラフィン粒を外皮で包みマイクロカプセル化し、液体中に分散、スラリーとして熱移送。冷熱分野となると、-60〜-160℃の世界で相変換が起こるペンタデカンなる石炭系の油など研究が進んでいる様だ。今、薬局の“冷ピタ”なる熱冷まし材として相変換材の利用と見ると旧くて新しい技術品と言えるかな。

 微熱量の回収が存在するなら、物質の相変換反応に於いて、光の放出・振動の放出などはあるのだろうか。粒を針でつついたら光出したりブルブル動き出したり…。

 又、頭が熱くなってきた。この熱気の使い道は?


● Report No238/ 07月05日

光で元気

 人は光を感ずると生気が出る。植物とて同じこと。されば物質にも、と工夫の数々。

 ・ジアリールエテン分子によるフォトクロミックは
  熱不可逆性の光メモリー(頭脳)
 ・光を浴びると膨張/収縮するフォトメカニカル効果を
  持つゲル体(骨格)
 ・視覚に当る、光感応性有機材と磁性材を複合化した
  スイッチ体(目)
 ・光・電子刺激によって構造変化が誘起する、
  遷移金属錯体ベースのナノスケール分子バネの
  集合体(筋肉)
 ・フォトクロミック分子は光によって配向を可逆的に
  制御するので、ポリマー膜・メソポーラス材と
  組合せてコマンドサーフェイス化(皮膚)

 今後、ナノ級オプトメカケミトロニクスが発展して行くと、上記各項を組合せた“光で動く非生命体粒”が出現しよう。初期はミリ級であろうが、やがてミクロン級となり、ついにはナノ級へと。その先のÅ級は思うだに夢の世界。この粒を医薬品に配合して、体内で意のままに薬効成分の放出制御したり、予め刺激因子をインプットした粒子、いや、粉を素材に添加すれば、味蕾の複合刺激は意のままに…、と、いつの間にか空想と夢想の空間に想いは漂い出した。

 さあ、散歩に出かけて光を浴びて生気に戻ろう。

  

● Report No237/ 06月28日

熱さまし

 超軽薄短小時代に入って、小さなボディーに大きな能力となると、否応なしに発熱とその蓄積に頭を悩ますことになる。速やかに放散・雲散・霧消させたいところ。それには熱放射能力に優れるか、熱の伝導化に優れるか、材料屋には素材の組み合わせの妙を発揮できる分野。門外漢でも楽しくなりそうな着想の数々。電子技術製品の場合、どうしても導電/絶縁材とその複合材とも言うべき半導体素子から成っていると、金属は良熱伝導体、絶縁体もセラミックは良、ポリマーは不可の状況下、どうしたらよいの? 更には部材の継目部で熱が貯まってしまう、接触熱抵抗問題等、テーマは盛沢山。成程、考えましたね、と感心した事例を勝手ピックアップしてみると…、

 ・[粘着剤/ポリイミドフィルム/銅箔/
  遠赤外線変換型セラミック塗料]の貼るタイプ
 ・[ポリマー中に低融点合金粒を分散させ、
  熱処理―凝集による]複合材化
 ・[反応性オリゴマー中のカーボンファイバーを
  磁場配向させてのち硬化させる]異方熱伝導材
 ・[ポリマー材自体は本来熱伝導不良材とされていたが
  セラミック粒の凝集制御による]
  有機―無機ハイブリッド材

 小さな粒(液体or固体)で大量の熱を抱き込み、ある刺激でさっと放出(放射)する―そんな粒をマイクロ空間に循環させたら―いや、空間は余計だ。粒を回転させたら…。

 この辺りで脳を冷まそう。

  

● Report No236/ 06月21日

多孔質(ポーラス)

 日本家屋の障子紙の機能のすばらしさは今更列記するまでもないが、弱点は水濡れと直接炎だけ。障子紙の物語だけで子ども達を理工学の世界へ引き込むこと容易と思っている。子ども達は虫メガネさえあればトンボの羽根・落葉の葉脈・木炭・木の切口など覘いて、表面のデコボコや模様の具合を確かめ自然の不思議に触れられる。今日ではプラスチックスポンジや各種のペーパーフィルター類が随所にあるので、それも金属系・無機系・有機系・木質系等と材質も多岐に亘り、理科教材にも最高だ。

 昨今のハイテク多孔質材料となると、虫メガネでは無理なので、一般人には縁遠いものと思えるが、DDSのキャリア材としてのメソポーラスシリカ、合成触媒としての有機金属の担体としてのナノシリカ、結晶性金属酸化物多孔質材のLi電子セパレータ、ポーラス炭素のキャパシタの電極。もっとも夢を抱かせるテーマは、多孔質Mgタンタル複合酸化物を介しての、太陽光による水の光分解―そして水素と酸素を人類は楽々と手に入れられ、石油に振回されないで済む時代がやがて来る。

 一方、スーパー障子紙(?)とも言えるポリマーフィルム・メンブレンの世界では、フィルター・電池セパレータ・紙おむつ・防水シート・包装材料など広範囲に亘り、素材としても、PE・PP・PIが中核となって拡大の一途。これらハイテク材も日本古来の障子紙の延長線上にあると見る時、又しても旧き文化に感謝。

 空気と光は通しても塵埃は通さない個人の知恵の天然多孔質フィルム―障子紙、万歳!

  

● Report No235/ 06月14日

剥がせる接合

 衣服のボタン・ファスナー類、機械組立てのボルト・ナット類は接合と解除の可逆的機能材と言える。シリコンウエハー等を静電吸着によって固定する静電チャック、多孔質セラミック盤による真空チャックも可逆的。接合となると粘着剤や接着剤が代表格。

 粘着剤も颯っと剥がせる様に微粘着にしたり、紫外線を当てて硬化させて粘着性を消したり、感熱型側鎖結晶構造、熱発泡剤を配合したりと、いろいろ。接着剤となると、ワックス類―ホットメルト剤、金属系ならば半田等の易融合金も代表格。ホットメルトや粘着剤に光熱変換剤(染料・カーボン・酸化金属類)を配合し、光照射によって発熱させ接着力を大幅に低減させたり、熱可塑性ゴムの架橋部位を外す措置を施したり、まさにアノ手コノ手。

 接合はヘテロ物質に応用される例が多いし、IT時代、そのコア部品たる半導体素子の組立・実装工程に於ける剥せる接合は、と思案していたところ、水素吸蔵合金をベースにした接合技術(東大)が出現。金属の水素脆性を逆手にとっての発想。そう言えば、接着剤にもガス内包マイクロカプセルや発泡剤を配合した技術もありました。

 リユース・リサイクルを大切にする“もったいない”時代、この種の技術が欠かせない。“開けゴマ”ならぬ“剥れよゴマ”の特殊エネルギー探索レースは既に始まっている。

  

● Report No234/ 06月07日

複合レンズ

 光の時代、レンズは極めて重要なデバイス。その中でも非球面レンズは特出。ガラスで製作するとなると、生産性・コストに問題あり。そもそも非球面レンズは少なくとも一つの面がレンズ光軸に対して回転表面を形成し、球面を除いたもの。さすれば荒成型したガラスレンズを芯にして、表面に非球面精密転写パターン層をUV透過性成形型とUV硬化性レジンによって形成する、所謂“インモールド透明ライニング”がコスト問題の解決手段となって来る。とは言っても、理想の転写層の形成は一筋縄では得られない。

・転写層表面の超平滑性を得る為の
 スタンパー表面の濡れ性コントロール
・UVレジンの盛りつけ後に光軸中心に押し拡げる技法
・UVレジンの厚さに応じた部位照射光量コントロール
・UVレジンと芯材ガラス接着面の接着力向上措置の数々
・UVレジン硬化後、成型治具類から易剥がし構造の工夫
・更に、UVレジンの光学特性、化学的・物理的特性に
 優れた構造のモノマー・オリゴマーと助剤類  等々

 これらを眺めると、何か子弟の教育に重なって見える。即ち…、

・荒成型のガラス芯材に ―素材/子弟
・光透過性の転写層に衣を着せる ―教育

 そうは問屋が卸しませんよの数々を上述項に照らしてみると教育の難しさ改めて実感。