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● Report No145/ 05月29日

なだらか

 自動車のトランスミッションがオートマになっても、幾分はギヤの段階を感じるが、CVT方式では、継ぎ目の無い傾斜勾配的ななだらかさ。東京シティターミナルのスロープ型エスカレーターは階段なし。水墨画も墨の濃淡が連続的に変化しているところが魅力で、まさに絵師の技倆のポイントとされている。斯様に連続的な(断続の接ぎ合わせではない)組成勾配をもつ傾斜材料の開発や利用にも注目。
  ・ 墨絵のようなフイルム(ポジor ネガ)の濃淡による光の透過量によって、
    光硬化性レジンの硬化深度を得て作る立体オプト成型物。
  ・ エネルギー変換材分野では、 複合エミッター電極材料やTiC/Mo系集熱材料や
    カーボンファイバーを傾斜配列したC/Cコンポジットなど。
  ・ 形状記憶合金繊維布の熱挙動を利用して含浸組成物の濃度勾配。
  ・ ポリマー中に磁性紛、セラミック粉の勾配配合物。
  ・ 遠心分離法による合金中の一成分の濃度勾配づけ。
  ・ ポリマー系光ファイバーに於ける低屈折率フルオロ系成分の
    表面移行(マイグレーション)によるワンプロセス成型方法。
 人は社会では、二面性は往々にしてトラブルの基ですが、材料の世界では重用されることが多いのです。

ハイテク・シール

 シールと言うと、工業分野の水密・気密のパッキングやガスケットを想起してしまうが、大英和辞典によると次の様に・・・、
  ・ 印形(紋章・略字・符号を金属、石材などに彫ったもの)
       (ロウ・鉛などに印で押した印章)
  
・ 封印     ・ 秘密を保つもの     ・ 手紙などに貼るシール
  どうも全体のイメージは"情報"の封(シール)の感じ。
  偶々、手元の薬ビンの栓の封ラベルを剥がしたところ「開封」なる文字のみが残っていた。さしずめ、メーカーの封印。そこでハイテクシールたるID用封技術はと手元の資料を眺めると結構多いのに驚いた。その中の2点。
  ・ 粘着テープの製造時、光重合型工程で特定のパターンのマスクを通して
    光照射により、粘着力に差のあるテープが得られ、再貼付不可と。
  ・ 自動車用塗料で、直径1ミリのポリエステルビーズが配合されており、そのビーズには
    17桁の認識番号が5ヶ所以上に散りばめられている盗難防止を狙ったID塗料。
  この種の技術発展は仕方の無い事ですが、あまり愉快な事、心地よい事とは思えませんね。

 

● Report No144/ 05月22日

表面重合

 ハーバード大学の G.M.WHITESIDES 氏らによって拓かれたソフトリソグラフィのマイクロパターンニング プロセスに拠る新規性のデバイス研究が活発だ。それらは、自己組織性を示すチオール/金の組み合わせが主であったが、産総研ではアミノシランを酸化物層にパターン形成し、その上にDNA を拱択的にオンさせたり、TPC と0DA を交互に蒸着し、脱HCLすると芳香族ポリアミドパターンを形成する成果が出ているとのこと。このように、重合物をパターン化するのではなく、パターン領域のみでの拱択的表面重合は、その応用の可能性の広さを感じさせる。それでは、こんな分野で応用をするとしたら、どんな機能性材料が期待されるでしょうか・・・光触媒、導波路、撥水、ラピッドプロト、導電回路、熱伝導・・・

人工筋肉

 動物の筋肉ほど、物理屋、殊に機械屋からみたとき面白いものはないようだ。生身の人間が少々の食事で36℃前後の温度状態のままで、何時間も、何キロもの荷物を持って、かなりの距離を動かせる、その機構と作用機序には畏怖すら覚える。現在のロボット類の駆動系は全てマシン構造で回転トルクモーターが主役。動物的人口筋肉の研究は材料やアクチュエーターに焦点が合わされて、柔軟性、省エネ性、軽量さ等に単純構造が求められるので、今迄はゲル状物質の熱、電気などの刺激応答性ポリマーに求められた。そこで、脆弱さの克服で、ポリマー/金属の複合も探求されつつある。
  ・ ポリウレタン膜に金の蒸着によるもの (長野県技術試験所)
  ・ フッ素系イオン交換レジンに金メッキすると2Vで屈曲し、
    それに伴う内部液体の移動が出来るアクチュエーター (産総研)
  ・ 電気制御で収縮する導電性ピロールフィルムを
    他のフィルムにラミネート (山梨大)
  ・ バネ状の金属の表面に導電性高分子の薄膜を作る事で得られる、
   φ0.25_のファイバーを束にしてアクチュエーターを形成(イーメックス)
 NASA-JPL (ジェット推進研究所)/日本宇宙科学研究所が計画の小惑星探査機にも随所に人工の筋肉が搭載されるとの報道があったり、産総研/東北大では、細胞内でさまざまな物資を運ぶ「分子モーター」と呼ぶ微小蛋白質が動く仕組みの一端が解明されたと。極めて広範囲の人々の興味をひくテーマです。

 

● Report No143/ 05月15日

大昔のものづくり

 人は道具を作り、火を操る動物と言われる。  道具とは当時は石器であり、火を操って土の焼物を得た。石器で木材や石材を加工し、火で粘土を焼くだけでなく金属の精錬と加工を可能にした。それは刀子(とうす)、鉄斧(てつおの)、鉋(かんな)、鋸(のこ)に発展して行った。金、銅、亜鉛などの扱いを経て、6世紀後半〜7世紀初頭、西日本製鉄製錬所が発生し、鉄製道具社会が動き出した様だ。一方石器道具と相俟って木材、草木繊維、顔料、漆などの天然素材の材料化が進み、更に金属加工技術とも合体し、社会組織の物質の中核を形成する礎となって行った。技術情報というものが極めて乏しい昔時代、当時のものづくりパイオニア達はどんな心情・動機・着想・知識状況であったのかに思いを至すとき、今日のR&Dのテーマ設定と遂行は如何に楽なのかを改めて感ずる次第。それにしては、ビッグアイディアの出ないことを反省。

吸振材 ワイガヤ

 昔、コンクリートも振動吸収機能に優れているので、鋳物に替えて工作機械の本体、台座に使われていると聞いて"ものは見掛けによらぬもの"と反省した次第。そんな話をしているところに、オーディオ狂の一人が曰く、オーディオ機器こそ吸振材・・その機構がいたるところにぎっしり詰まっているのだぞ! トランス収納ケースにアルミ鋳物、駆動メカの特殊カバー、重層構造のボトムカバー、プロテイン配合の防振塗装トレイ、吸収型インシュレーター等々。それを聞いていたワイン好き曰く、ワインのコルク栓は黴や細菌に侵されず、且つ、ワインの呼吸を可能にするよ。1?サイコロの中に4千万個の細胞があり天然のマイクロ異方性集合体でクッション性も最高よ。そこに、ポリマー屋割り込んで曰く、いやいや金属もコルクも良かろうが、使い勝手からすればポリマーよ。それもシリコーンゲルはスマートだよ。 又、粘着剤は金属でもコンクリートでもコルクでも貼り合わせ、複合化出来るので万能型よ。そこに工事部門の技術者現れ曰く、振動にも微と重があって対応が違う のよ。ゴムも良し、プラスチックもコンクリートも良し、使い分けが肝腎よ。でもこの工事分野では振動減衰率とヤング率のバランスが無いと駄目ね。多孔質鋳鉄なんて新顔も出てきた・・。  結論、お互いすっかり勉強になったところで、ベル。

 

● Report No142/ 05月08日

錯体の出世

配位化合物とも言うものです。遷移金属(Na,Co,Feなど)のイオンを内包する化合物です。先生(金属)を中心に生徒(配位子)たちが輪になって取り囲んでいる形に例えることができます。例えば、瞬間接着剤のシアノアクリレートもフェロセンなる鉄錯体を微量加えると、光だけで硬化するようになる優れものの調味料。最近はそれが主役の主張を始めました。
先生(金属)
生徒(配位子)
狙い目
研究機関
ニッケル
ピピリジン
分子スイッチ
富士通
ルテニウム
N化合物
超薄膜コンデンサー
中央大学
プラチナ
硝酸
カプセル状分子
名古屋大学
コバルト
SQ/CAT
光感応磁性スイッチ
KAST
そう言えば、某大手セラミック会社がエレクトロケミカル会社を買収したとの記事に触れ、ひょっとしたら・・・と感じました。

アレイ(二)

国家間、企業間で熾烈な競争が繰り広げられているナノテク研究。原子・分子のあやつりだけに一筋なわでは行かない。特にナノ粒の整列となると、余程うまい号令をかけないと生徒(粒たち)は校庭に並んでくれない。最近上手な先生方も現れており父兄席から見ても頼しく思えます。偶々、目についたゲームですが・・・・・・ ・自己組織化現象を利用して、陽イオン化ポリスチレン(200ナノ径)粒の分散液に基板を浸すだけで均一配列が出来ると。そうなるとこの粒に導電性や磁性を付すとすごい用途が。(山形大) ・コバルト・鉄・白金系の合金粒(10ナノ径)に自己組織化機能付与によって配列。(東北大) ・PEG/チオール混合液中で5〜40ナノ径粒を得、これをリガンドとしてラクトースやマンノースと組合せた錯体をDNA分析キットに(東京理科大) −これら3例は先生の号令型でしたが、先生が直接生徒に触れる技術もありました。 ・常温溶液中の分散ナノ粒子は、レーザー光集光スポットに捕捉されるとともに、局所光反応によって任意の場所に固定化できると。粒としてポリマーや80ナノ径Au粒を(大阪大) ナノ級粒の性格、性行をつかみ、言うことを聞かせるようにするコツ、つかみ競争ですね。

 

● Report No141/ 04月24日

研磨

時代劇を見ていると、女性が鏡を見ているシーンがある。当時は、ガラス板は無く、いわんや銀鏡処理なぞある筈もなし。そうなると、銅合金製の鏡の反射度維持にはさぞ苦労したと思われる。調べると砥の粉(粘頁岩の粉)や炭酸カルシューム(石炭岩の粉)も用いられたが、優れたものは木賊(とくさ)だったと。それは天然の繊維に硬いシリコンの微細粒が付着している構造であったのが近年、顕微鏡で判明した次第。今日の工業化社会では研磨は不可欠な工程技術として、自動車のクランクカムシャフトのラッピングフィルムによる方法、半導体シリコンウエハーのCMP(化学的機械研磨)、フェルールに挿入した光ファイバ−先端の金型転号方式、などなど。パドレス複合粒子技法、磁場援用技法、電解砥粒法などの最新の研磨技術を通じて、最近では鏡面加工は金属のみならずセラミックス、新素材等へも拡がって来ており、面粗さ(Ra)が5nm(ナノ)以下で、材質によっては1ナノ以下でも可能と言う。こうなると原子層の積み上げ方式との競争か。又、磨くだけの機械では済む訳なく、表面の粗さ計、平面度測定器、果ては使用工具の検査顕微鏡、スーパクリーン恒温室などシステム軍団の形成が不可欠と。調べると人工ハイテク木賊もどきの研磨材もあるようです。ナノの世界はきりが無い。

空洞づくり

鐘乳洞は、石炭分が雨水で溶けて出来た空洞。蝉や蛇の抜け殻も空洞。ポン煎餅は水分が爆発的に逃げたミニ空洞の集合体。今迄そこに有ったものが居なくなれば空洞が出来る。当たり前のことを工業的に利用した事例は古くからある。ハイテク分野でもナノ空洞は多々。

ロストワックス法 ワックス成形品を砂で囲い、熱でワックスを融解除去し空洞を作り、熔湯を注入して得る鋳物。更には、砂の代わりにワックス表面に無電解メッキ層を形成し、次いでワックスを除去して得られる空洞形薄膜金属成形品も。
光硬化レジスト法 マスクを通して光照射後、現像し、微細溝の形成。積層すれば、トルコの地下宮殿都市"カイマクル"状マイクロトンネンルネット。蟻もびっくり。
CVDすきま法 有機CVDポリパラキシリレンはガス体。角砂糖の粒間すきまに入り込み、重合固化。そのあと熱湯で砂糖分を溶出すれば逆転層の立体スポンジ字が得られる。

 されば、ワックス型に光硬化レジンや有機CVDのコーティングの後、ワックスを除去すれば、タイガーマスクやサブミクロン風船が出来ますね。

 

● Report No140/ 04月17日

舞踊(ぶよう)

舞うと踊る、少々違うようで、前者は水平に動き回ることを主とし、後者は上下動き、即ち跳ねるを主としているようだ。人は音・リズムによって舞い踊るように、物質もエネルギーによって舞い踊るどころか、さらには変態までしてしまう。そのエネルギーの種類には、
 光(・・・可視光、紫外線、遠赤外、レーザー光等々)、
 熱(・・・雰囲気温度としての熱、超低温〜超高温)、
 波動(・・・超音波、電磁ヘルツ)、圧力、電圧、電流などがあり、
物質の周りで奏でられると舞い踊るはずと。それも楽器(エネルギーの種類)と曲(負荷条件)によって「をどり」具合が変わるので、いろいろ新しい知見が得られましょう。  楽器の組み合わせ、曲を考える毎に楽しい。今まで見たことのないスーパーモダンダンスが見られるかも。

相分離−別居でハッピー−

プラスチック成型物の為の異種材料のブレンドはSP値(溶解性パラメーター)が近い似た者同志程良く混ざり、そうでない場合は仲人たる相溶化剤を配合する。ところが成型時の高温では相溶状態にあるものの、急冷すると、準安定状態で起る折出核の形成によって二相分離(スピノーダル現象)が発生する。この分離も極微サイズか、相互に網状での分離か、いや低分子の方が表層へ移行する形か、SP値の差/分子量/温度/冷却勾配等によって千変万化。折角混ぜたものが分離するなんて・・・と悪視するのではなく、むしろ積極的にこの現象を利用しようと開発が盛んだし、実施例も多々。
 ・アスファルト + ゴム → 高靭性アスファルト
 ・ノルボルネンゴム + 油 → 衝撃吸収材
 ・ポリプロピレン + ジェチレンカーボネート → Li 2次電池セパレーター
 ・エポキシレジン + ブタジエンゴム → 構造用接着剤
 ・シリコーンゴム + BN + シリコーン油 → 熱伝導インターフェース材
相転移(No119参照→クリック)は苦虫顔の頑固オヤジが笑ってハッピー。相分離は家庭内別居でファミリーハッピー。

 

● Report No139/ 04月10日

糖・3題

 ・飯粒を箆(ヘラ)でつぶして練り上げた糊を"続飯(そくい)"と言う。弁慶のそくい作 りと言って力まかせではうまく出来ないたとえ話を子供の頃聞いたことがある。名人のそくいになると天井へ投げつけてもへらがゆっくりぶら下がり乍ら下りてくるそうな。米の澱粉には多糖類のアミロースと架橋したアミロペクチンがあり後者がのりの本体として作用するとか。表装にはアミロペクチンは不可欠。
・澱粉を糊ではなく、プラスチックと混ぜれば成形出来る。  生分解性あるポリエステル系のPBS、PCLを澱粉と混合したり、又、マレイン酸付加したポリエステルを澱粉と反応させたりしたもので、射出成形物が得られる(ミネソタ大)
・ 澱粉のサッカライド由来のグルコースを幹に重合性官能基を両端に付した糖マクロマーレジンを得、それに特定ビニールモノマーを共重合させて得られる粘着剤・接着材(ミシガンバイオ技術所)

 これらの情報を弁慶やそくい作り名人に教えたらその反応は?

七つの顔をもつ金属錯体

 ナノテク時代。原子・分子そのものが特異機能を発するならば、どう利用するかが当然としてテーマとなる。特にディスコティック金属錯体は固有の電子状態を現すので、映画「多羅尾伴内・・・七つの顔を持つ男」風。配位子なる有機化化合物をまわりにし、中核に位置する金属原子(Mn,Fe,Pt,Cuなど)との組合せの分子機能は・・・・・・  

     パイ(Π)電子作用による   − 導電性
     可変原子価による       − 触媒、DDS機能
    原子相互作用による      − 生体分子センサー
    光・熱・電場作用による     − クロミズム
    光を吸収して           − 太陽電池、光記録材
    光電磁場との相互作用で    − NLO材料
 こんな程度の文字キーワードが頭にあるところで、新聞記事2例(東大)が自然と目に付いた次第。
  ・光を照射すると磁化が消え、20分程経ると瞬時に磁化回復する光感応型磁性材、発見と。
  ・DNAの2重螺旋を構成している橋かけ用水素を銅イオンに置き換えた結果、銅イオンをナノ間隔で並べられたと。それらはナノワイヤ、それも、DNAベース。ワイヤー自体が生命体か・・・・・・。 新しいターミネーター種になれるか。

 

● Report No138/ 04月03日

抽出

 物体から特定の物質のみを効率的に引き出す技法に溶媒抽出法がある。広く利用されている工業技法で、日常的にも茶やコーヒーの漉れ方は湯による抽出と言える。動物繊維から脂肪分を、植物繊維から糊剤を取り除いたり、希少メタル(金、バナジウム、プラチナ、パラジウム、コバルト等)を回収したり、フィルムから可塑剤を抽出して二次電池用セパレータを作ったり、汚染土壌から炭化水素やダイオキシンを除去したり、石炭から油分のみ抽出して液体化したりと極めて有用なプロセス技術。
 面白いと言うか少々妙と言うか、日本では食品分野で水或はエタノールのみが抽出溶媒に可と規制されている。一方独国のアセトン抽出の「いちょう葉エキス」が厚生省で認可となった。食品では駄目なものが薬ではOKと。縦割行政/医薬と食品の境界線の重複/技術の進歩/国情の違い等々が絡んで厄介な事柄。しかしものは考えよう、厄介と言う拘束条件があるから、その中で、技術で壁を越そうとする努力が払われる側面もある。
  例えば、溶媒が水and/or エタノールに制限されているなら、これに物理条件を掛けるのは自由でしょう。調べれば多分いろいろありましょう。

さっと剥がす

 シリコンウェハーのダイシング工程で、粘着剤で固定するものの、チップの取上げにはUV照射によって粘着力を消滅させたり、予め配合してある熱発泡性マイクロカプセルを膨張させたりといろいろ工夫。か様に一度接着させたものをさっと剥がせれば便利です。従って研究開発の良いテーマに。
 ・光によって架橋ポリマー化するが、剥がしたい時には加熱すると再可溶化する接着剤(大阪府立大学)
 ・電圧(10-50DCV、1mA以下)を2-3秒付加すれば剥離可能な金属接着用エポキシ系接着剤(エレクトロ・モティフ社)
  上述例とは別に、逆の事例として、電流を流すと潜在性アミンが放出されて硬化するエポキシレジンシステムが20年以上前にありました。
 ・ 通電発熱(PTC効果によって一定以上の温度上昇は無い)によるホットメルト型接着剤の融解剥離方法。

  "がっちり接着、だけどさっと剥がせる"こんな二律相反 −理想と言うか、勝手と言うか− だからテーマになるのです。さあ、手前勝手の事例を探してみましょう。

● Report No137/ 03月27日

タイルの貼付け

 シャトルの空中分解事故は耐熱タイルの損傷に原因がある様だ。大気圏突入時の超高温(1500℃以上)に耐える高純度ガラスファイバータイル(30p角、2.5〜12.5p厚)の接着層迄熱が伝わって来たり、地球との何回もの往復によるヒートサイクル
 ・サーマルショックによる固定力の低下も心配。万一タイルに部分損傷がある時は、局所温度上昇を防ぐ為、周辺に熱伝播するフレーム構造との事。こう見ると接着
 ・固定剤は脇役ではない準主役ですね。
 ・溶鉱炉内壁の耐火煉瓦の接合・積み上げ
 ・電子部品の表面実装(SMT)に於けるBGAのCPUから発生する熱をヒートシンクに効率的に伝える接着剤。
 ・発熱チップの基板との隙間を埋めるアンダーフィル剤。 そういえば昔、ダム建設工事現場で、岩石の超大型擂鉢型破砕機の内側鋳鉄タイルの裏込め剤に、鉄粉をたっぷり練り込んだエポキシ樹脂を圧入ガンで充填する工事を請負った事がありました。これが若しうまく行かないと巨大なダム工事が全てストップしてしまうからと大プレッシャーありました。


アレイ(ARRAY)


 辞書には、アレイは軍の勢揃いとある。北京天安門前の広場にどうしてあの様に整然と並べるのかと思ったら、丁度一人一枚分の石畳の寸法になっているとの事。ハイテク分野では兵士の代りに素子レベルの微細もののアレーが多い。最近の面白ものいくつか・・・。
 ・MEMSで作成した、宇宙空間で衛星の姿勢制御用直径1ミリロケットの100個アレーシート。(宇宙科学研究所)
 ・Al基板上に50ナノ間隔で並んだ直径150ナノ穴に金、銀を埋め込んだ微量物質検出用バイオセンサー(KAST)
 ・高分子有機ELをロールで基板に転写し発光アレー形成(SMK)
 ・ SAMプロセスによってAg膜上のフォトレジスト膜を通してAg蒸着させて作成した3ミクロン径のAgリングアレー(ハーバード大)

そう言えばBGA(ボール・グリッド・アレー)は基板上に半田ボールが整列していて、人の目でも見えるハイテクアレー例。

 

● Report No136/ 03月20日

内燃機関

 ハイブリッド車、内燃電池車の開発ニュースが今、最も熱くなっているが、今までのレシプロエンジンについての構成技術の歴史を、元エンジン技師から聞くことができた。今では当たり前の構造であっても開発当時はハイテク最先端で、それが100〜150年も続いているとなると改めて驚嘆に値する。代表的5技術を下記しますと。
技術 開発年次 ポイント・状況
円筒気筒とピストン 1705年

・実用蒸気機関の幕開け
・イギリス炭で実用化
・ワットの蒸気機関発明の70年前

クランクシャフトと
コネクティングロッド
1780年 ・フランス人ピカードの特許権
・イギリス人ワットはこの特許に妨げられ四苦八苦
・1794年オープンになる
キノコ弁   ・ワットの蒸気機関(1755年)に採用されていた
・スリーブ弁、ピストン弁より先に採用
電気点火 1831年 ・英 ファラデー発見
・ルノワールエンジンに採用(1860年)
ピストンリング 1855年 ・ラムズボトム氏の発案
・ルノワールエンジンに採用(1860年)

ロジスティック

 軍事用語から発した「補給」のことで、輜重(シチョウ)、兵站(ヘイタン)がそれにあたります。戦争での生命線で、今日では企業の原材料調達、生産、在庫管理に至る物的流通の管理活動を指すようになって、単に我々は「物流」と呼びます。具体的には、登山の設営隊などがこれにあたり、後方支援部隊と言えます。生産設備の据付や、修理部品の取り扱いなども販売前線部隊の支援という意味では兵站となりましょう。「価値実現のためのサービス」がロジスティック・サービスです。今日、超軽簿短小の電子・光学関連の部品部材や、先端化学品などの物流は世界的ネット形成された専門業者の存在によって、昔ほどの苦労は少ない反面、[少量〜中量ロット/多品種/短納期]の兵站条件にどう対応するかの大問題に直面しています。結局、企業競争は総力戦になるのでは?

 

● Report No135/ 03月13日

微量元素

海洋深層水がブームだ。何が良いのか、飲んでも美味しくはない。ミネラルウォーターでも価格は2〜3倍はする。その秘密は微量元素。文部科学省海洋開発センターが主催する深層水利用研究会でも発足時の最大テーマは微量元素分析だった。これは単に無機質の微量分析なら殊はさほど難しくはない。有機物と結合していたり、半結合であったり千変万化の物質状態は複雑だ。生物は何億年もこの溶液中で生まれ、今日まで続いていることを考えるとき、DNAにまでしっかりとこの微量元素環境溶液がインプットされているととらえるのは当然のこと。細胞と生物の作用目メカニズムに絶対不可欠な元素例を専門書から少々ご紹介。

元素 機能 欠乏症 過剰症
鉛(Pb) 鉄代謝造血 貧血、成長阻害 鉛中毒
砒素(As) 亜鉛代謝 生育阻害、生殖能低下
クロム(Cr) 糖、脂肪、タンパク質の代謝 動脈効果、寿命短縮 クロム中毒、癌
マンガン(Mn) 酸素の補因子 生殖能低下 中枢神経障害

世間的に悪役の様でも、それは過剰のケースであって、欠乏のケースにはなかなか気が回らないもの。今のところ欠乏症の必須性が認められないものは水銀(Hg)、カドミウム(Cd)くらいのもの。水俣病とイタイイタイ病は過剰症でした。

シネマ

昔、最初のワイドスクリーン映画「聖衣」を見たときの感激、又帝国劇場での三面連結シネラマの驚きを経て大阪万博の各パビリオンのマルチスクリーンのものの数々。1980年代米国テーマパークでのMOVE&RIDE即ち映像と座席の運動を複合させたもので、いわゆる不移動型振動座席付映画で、冒険を安全体験させてくれるので、どこでも人気一番。これらの体験の後、機会あって航空宇宙研究所のヘリコプターシュミレーション用全天ドーム体験。パイロット座席からの俯瞰で高層ビル群に上空から進入。あまりのスリルに思わず目をつむり、恐怖から逃れる始末。子供の頃夢見た茶の間で大画面映画もだんだん現実になりつつあり、ハードではプラズマディスプレー(PD)、液晶表示(LCD)、リアプロジェクターに加えて、Digital-VHSやHDD半導体メモリーも組み込まれたりゾロゾロ出現したりしそう。そのうちホーム型MOVE&RIDEも通販で出て来るだろう。若し、その椅子(チェア)で小津安二郎もののしっとりドラマを見たらどんな椅子の動きになるのでしょうか・・・。

 

● Report No134/ 03月06日

粒の時代

 粒といっても素粒子ではなく、ポリマーや金属、セラミック系の細粒のこと。ITの分野への利用と言う観点から眺めてみると・・・
ポリマー系 PS−COOH 抗体タンパクの固定
PS−金メッキ 電極、BGAスペーサー
アクリル−COOH 電磁体内包
ポリイミド 絶縁用
複合粒子 (メカノヒュージョンプロセス)
二酸化チタン−アクリル
金属系 銅−共晶ハンダ バンプ
ニッケル−アルミコート
セラミック シリカ 光学品

これら粒も、1粒のみではあまりにも小さすぎる、いや少なすぎるので、整列させ、必要ならば積み上げて使いたい。それにはパターン化や集積化のプロセス技術が必須となる。バイオ、エレクトロニクス、オプト、マイクロマシン等、ハイテク分野の主役材料と注目するのは当然でしょう。

結ばれ方

原子、分子を人と見立てたとき、人の群れあいの中の人一人の結びつきはいろいろ。
  ・イオン結合はさしずめ − 頬ずり的か
  ・ハイドロフォビック結合は − 握手
  ・ファンデルヴァールス結合は − お辞儀
  ・水素(ハイドロゲン)結合は − 抱擁
  ・金属結合は − 押し合いへしあい
  ・共有結合は − 釣りバカ映画の"合体"
 ところが塩酸の様に、半身合体、半身抱擁と単純ではない。これら上述の結合も一様ではない。結合エネルギー、人と人との間隔や相互角度などの要素も加わる。更には群(むれ)の環境条件 − 電場、PH、温度などにも振り回される。こう見ると原子、分子も人間社会並みに楽ではありませんね。だから千変万化なのでしょう。