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● Report No.349 / 05月17日

『マイクロ・ナノバブル』

バブル(泡)は浴槽のブクブクから、バケツサイズのシャボン玉までサイズいろいろ。汝バブルよ、おまえもか"とナノ時代に沿うようナノサイズバブルを求めて開発が進行中。プラスチック・セラミック・ガラスなどの多孔質性膜に加圧空気を透過させると水泡が出来るが、ミクロの泡にする迄には至らない。

1990年代、大成氏(徳山高専教授)の独自のマイクロバブル発生桟橋によって、海の養殖(かき・ホタテ・真珠)への利用展開で生物の生長促進効果が証明され、これ嚆矢に次々と他の産業への応用が広がって行き、洗浄・燃焼・分離などの材能も解明され始めた。又、AISTでは過飽和溶解した気体に超音波を印加し、キャビテーションを生じさせるとナノ級の泡が生ずるのを見つけた。

ナノバブルの特性についての論文等眺めてみると、普通の泡は、膨れてやがて弾けて消えてしまうが、マイクロバブル(50ミクロン以下)は水中で急速に負圧によって縮みやがて消滅して(溶けて)しまう。その寿命は比較的短いが、界面活性剤や表面帯電の状態では安定バブルとなるので生物細胞にとって有用かも、と。マイクロバブルがナノバブルに縮小、やがて圧壊(あっかい)する際フリーラジカルが発生するので生理活性剤・殺菌剤としての可能性大と。

こうなると、企業たちは見過ごすことはない。温泉宿の浴槽への利用は当然。長野県阿智村は「光マイクロバブル材づくり」運動で、昼神温泉の再生と復興を、山口県長門市の俵山温泉でも浴槽に装着しての新しい温泉味"を。

上述のフリーラジカルそのあとの―OH基は、PH上昇を招き、PH10程度に至ると、一肌感覚で2〜3℃熱く感じ、血行促進され、冷え性を防ぎ、それらが安眠に落ち着くのは、入浴効果としては最高のもの。

一方、薬品・電材・化学・食品・化粧品産業たちも大注目、特許が続々と公表されよう。消滅型ナノバブルを求めて、雨後の筍の如く発生、その拡がりはジャイアントバブル、弾ける心配ないバブルか……。

● Report No.348 / 05月02日

『 WPC(木質・プラスチック複合性)』

木質材料のセルロースはブドウ糖が鎖状につながった高分子なれど、プラスチックの様に射出成型や押し出し成型は出来ない。最近のリサイクル時代、廃棄木材や間伐材などを有用化せんと、木材を一旦粉末化、それに少量のプラスチックをバインダーとする複合材料を得んとの一石多鳥型政策開発が世界的に始まる。それはVOC発生が無い、人に優しい建材に、耐水・寸法安定性に富むのみならず、手ざわり、風合い、切削加工性、塗装性も良く、挙句は再溶融成型性が有ること。

このプラ成分添加方式とは変わって、愛地球博で見たのはスチーム処理した木質片は熱間接着性を発現するので、加熱加圧下での流動性を利用した成型法もあった。木片の粉末化には、必要以上の微細化は消費エネルギーも増え、セルロースフィブリルも破壊されるので、面白くない。フィブリルが長い竹繊維を上手に利用しようとの開発も一方では進められている模様。ポリマーの成型プロセスのいろいろをWPCにからめて眺めるのも楽しい。いくつか勝手に並べて発展途上国へ?

・少量のポリマーと反応助剤を含む自硬性スラリーを木質系ファイバープリフォーム布を強化材とするRTMプロセスによるFRP。

・同上コンセプトによるWPC型押し出し成型品   ―WPC型日干しパネル。

・天然硬化性無材剤添加型注型(キャスト)品   ―スーパー日干し煉瓦。

貧資源国では、これからは有るもの数えてないもの数えるな"の精神で、日本では固有に入手できる間伐材と稲わらと土。そして太陽エネルギー。思えば縄文・弥生時代はこの材料で成り立っていた。これに少量のプラスチックが付加されれば……、と。

● Report No.347 / 04月13日

『親水性化』

窓ガラスや浴室タイルの表面に付着している水分は滴(粒)か膜か、前者は撥水状態、後者は親水状態を指している。この様に固体表面の液体に対する濡れ性は、何に基因して生じているのだろう、の研究の結果、物理と化学の両領域に亘ることが判ってくると、それに関わってくる利用領域の広さは無限とも言える。

ペイント・メッキ・接着・防水防湿・吸湿・風合い・汚れの付着などに直接的に影響を与えるとなるとっ高性能値と低コスト性を求めて研究開発が各方面で極めて盛んに。それも水を撥くのか(撥水性)水膜を作れるのか(親水性)で、殊に一般的材料は利用に際して親水性である方が便利である故か、親水性化技術を求めての開発が進められつつあり、物理的手法ではプラズマ・真空紫外線・電子線・レーザーなどの照射、化学的手法では光触媒コーティング・親水性ポリマーコーティング、表面層のグラフト化・プライマーコート・カップリング処理・陽極酸化・化成処理など多様。

・超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)をO2ガス中でプラズマ処理して親水化。

・超高分子量ポリエチレン(UHMWPE)をγ線照射後MMA浴によるグラフト親水化。

・未処理ポリプロピレンの表面に光硬化性レジスト膜の露光―水洗によるパターン形成は蛋白質の選択的付着素子。

・マイクロケミカルチップのシリコーン(PDMS)表面を親水性にする為Ar−O2混合ガスを用いた大気圧プラズマ照射。

・マイクロ・コンタクト・プリント用シリコーンゴム版の表面を、パターン剤が均質に付着する様親水化させる為、酸素プラズマ処理に加えてアミノ官能基を有するアルコキシシラン更にはOH官能性ポリマーをグラフトし、第一級パターンを得る。(特許3496831)

・酸化チタン系光触媒のチャネル域(疎水性PDMS)UV照射による親水化を利用したON−OFF光制御型微小流体バルヴ(AIST)

親水性表面であることは、生体―医療の分野では必須要件であること言を待たない。後日、眺めてみたいところ。

● Report No.346 / 03月30日

『ナノホールアレイ』

アルミの陽極酸化によって得られるナノ級の孔径をもつ高アスペクト比のホール(孔)アレーの利用研究が多方面で精力的に展開されつつある。別項No.335でも一寸触れましたが、「もう少し俯瞰を」との結果改めて利用範囲の拡がりには驚いた次第。ナノホールならばサイズ上充填するにはナノ粒でなければならないし、或いは液体/溶液状での処理となる。

ナノ級の材料となると、無機系・有機系・分子系・バイオ系等と分類され、次々と出現・発表される新ナノ粒を、とりあえずは一度はこのナノホールに詰め込んでみたくなる。以下、氷山の一角をご紹介。(研究機関名省略)

    ・有機色素 → 色調
     PTFE・MoS2 → 表面摩擦係数低下
    CNT・コバルト → 電界放出素子
    磁性粉 → 高密度記録垂直磁化層
    酸化物半導体 →電界発光素子
    ・吸着・濾過の分野でも
    ダイヤモンド・窒化アルミ → 水素ガス拱択透過性
     鉄 → 排ガス浄化
     酸化鉄 → 金分散液のナノ分級
     銀 → ヘテロ触媒
     金/磁性酸化鉄 → 生体分子スクリーニング
     金 → DNAナノアレー
    ・鋳型としての利用でも

孔に磁性ナノカーボン充填し、ニッケル・鉄を電着し、アルミナを除去すれば長さ300ナノの芯にNi-Feを抱えたナノカーボンが得られる。

    これ程のナノ孔アレーが容易に得られるのはアルミの陽極酸化処理のみ。それだけに、ナノ時代、これを型・担体としてフルに利用することは極めて重要。レースは早くも第2コーナーを回っているところか。ゴールには商品山積み。騎手にはハッキリ見えている。

    ● Report No.345 / 03月15日

    『セルフヒーリング性バイオマテリアル』

    マテリアルも多種多様あるだけに、その冠詞もインテリジェント・ナノ・エコなどいろいろ付く。 ファンクショナル(機能性)を超えてインテリジェント(知的)材料とは、自律性たる自己診断性/自己修復性/自己崩壊性/環境応答性/学習機能等を発揮するもの。 よってそれらは高度に進化した複合材料がその姿。身近には正倉院校倉造の湿度変化に対応した木材の膨張収縮型知能壁材。 今日的多様な材料を組合せれば、更にはそれらに環境条件(温度・応力・電磁波など)を付加すれば、あたかも知的と見える動き・変化を示す、となるとありがたいこと。 外界環境からの刺激に感知する能力/それに対応しての変態する能力/自己組織の治癒(セルフヒーリング)能力など、研究開発が多様に展開されつつあるのは楽しい。

    ・自己組織化能を有する刺激応答性ブロックポリマー(大阪大学)

    ・光反応による光の制御(東京農工大)

    ・電解型ポリマーアクチュエータ(AIST関西))

     究極のインテリジェント材は生物組織と見ると、生物に模倣(バイオミメティック)せんとしての研究も盛んで、眺めるだに楽しい。

    ・セルフヒーリングは再修繕が可能で修繕開始には外部干渉が必要。

    ・出血には、構造内に収められた媒体からのアクシロンが必要とされるので、中空ファイバーか2相成分系カプセル方式を。

    ・血液細胞には、ダメージの範囲内にナノ粒を沈着させた人工細胞を。

    ・導管/欠陥には損傷箇所のみ固化するリペア用硬化性レジン。

    ・骨格には強化用ショートファイバーの骨への付着・沈着・再吸収を経て再生する型のファイバ・フィブリル材。

     何億年にも亘って継承発達してきた生物組織は独自の自己治癒性(セルフヒーリング)を内在しているだけに、このメカニズムを参考にするだけでもどれ程素晴らしいことか、と。

    ● Report No.344 / 03月01日

    『スーパーゲル』

    香水を、光エネルギーで固体(ゲル)に出来ないものかとトライしたのは35年前。それ以来、ゲルに関わる材料とプロセスは何となく楽しいテーマ。

    天ぷら油のゲル化はヒドロキシステアリン酸を利用した低分子物理ゲル。ノルボルネンゴムにナフテン油を10倍以上吸収させて成型したゴルフボールは全く飛ばない代物(弾まないゴム)。水を瞬時に固めるヒドロゲル化剤。水に浮かんだ油のみを拱択的にゲル化させるロジン系ゲル剤。オイルゲル化剤もアミノ酸系・環状ジペプチド誘導体・シクロヘキサン誘導体など。吸油性ポリマーはポリ長鎖アクリルアマイド系等々。

    身近にゲル品は寒天・コンニャク・プリン・豆腐など多々あれど、ハイテク時代の注目はスーパーゲル即ち独特の機能を有する物質で、高強度・低摩擦・電解質型・生体に感応する環境対応性・DDS機能型等々。これらの基材としてはポリマー系が中心となり、3次元架橋構造の網目に溶媒を吸収して膨潤したスタイルのものが多い。 ほんの一端をつまんで眺めました。文字通りスーパーハイテクでした。

    ・刺激応答性ハイドロゲル(AIST他) ― 温度・光・PH・濃度等の変化によって膨張/収縮の体積変化を利用する生体適合性のマイクロマシン・MEMS技術へ。

    ・環動ゲル(東大) ― PEG(ポリエチレングリコール)にCD(シクロデキストリン)が包摂されたポリロタキサンは、ゲル架橋点が自動で動く高分子ゲル。その構造特徴から、高伸張性(最大24倍)・高膨潤性(8200倍)などから、その用途はレンズ・電池・塗料・ダンパー剤等と広い。

    ・生分解性の弾性ゲル(原子力機構) ― CMでん粉に水を加えてペーストにし、γ線照射してのち、酸処理すれば、高強度が得られるので、DDS・化粧品・汚物処理材の基材として有用。

    ・発色制御ゲル(名古屋大) ― シリカ球コロイド結晶にNIPAを組合せると、可視光を反射し、白色光下ではオパールの輝きを呈す。バイオセンサーへの利用可。