● Report No.345 / 03月15日
『セルフヒーリング性バイオマテリアル』
マテリアルも多種多様あるだけに、その冠詞もインテリジェント・ナノ・エコなどいろいろ付く。
ファンクショナル(機能性)を超えてインテリジェント(知的)材料とは、自律性たる自己診断性/自己修復性/自己崩壊性/環境応答性/学習機能等を発揮するもの。
よってそれらは高度に進化した複合材料がその姿。身近には正倉院校倉造の湿度変化に対応した木材の膨張収縮型知能壁材。
今日的多様な材料を組合せれば、更にはそれらに環境条件(温度・応力・電磁波など)を付加すれば、あたかも知的と見える動き・変化を示す、となるとありがたいこと。
外界環境からの刺激に感知する能力/それに対応しての変態する能力/自己組織の治癒(セルフヒーリング)能力など、研究開発が多様に展開されつつあるのは楽しい。
・自己組織化能を有する刺激応答性ブロックポリマー(大阪大学)
・光反応による光の制御(東京農工大)
・電解型ポリマーアクチュエータ(AIST関西))
究極のインテリジェント材は生物組織と見ると、生物に模倣(バイオミメティック)せんとしての研究も盛んで、眺めるだに楽しい。
・セルフヒーリングは再修繕が可能で修繕開始には外部干渉が必要。
・出血には、構造内に収められた媒体からのアクシロンが必要とされるので、中空ファイバーか2相成分系カプセル方式を。
・血液細胞には、ダメージの範囲内にナノ粒を沈着させた人工細胞を。
・導管/欠陥には損傷箇所のみ固化するリペア用硬化性レジン。
・骨格には強化用ショートファイバーの骨への付着・沈着・再吸収を経て再生する型のファイバ・フィブリル材。
何億年にも亘って継承発達してきた生物組織は独自の自己治癒性(セルフヒーリング)を内在しているだけに、このメカニズムを参考にするだけでもどれ程素晴らしいことか、と。
● Report No.344 / 03月01日
『スーパーゲル』
香水を、光エネルギーで固体(ゲル)に出来ないものかとトライしたのは35年前。それ以来、ゲルに関わる材料とプロセスは何となく楽しいテーマ。
天ぷら油のゲル化はヒドロキシステアリン酸を利用した低分子物理ゲル。ノルボルネンゴムにナフテン油を10倍以上吸収させて成型したゴルフボールは全く飛ばない代物(弾まないゴム)。水を瞬時に固めるヒドロゲル化剤。水に浮かんだ油のみを拱択的にゲル化させるロジン系ゲル剤。オイルゲル化剤もアミノ酸系・環状ジペプチド誘導体・シクロヘキサン誘導体など。吸油性ポリマーはポリ長鎖アクリルアマイド系等々。
身近にゲル品は寒天・コンニャク・プリン・豆腐など多々あれど、ハイテク時代の注目はスーパーゲル即ち独特の機能を有する物質で、高強度・低摩擦・電解質型・生体に感応する環境対応性・DDS機能型等々。これらの基材としてはポリマー系が中心となり、3次元架橋構造の網目に溶媒を吸収して膨潤したスタイルのものが多い。
ほんの一端をつまんで眺めました。文字通りスーパーハイテクでした。
・刺激応答性ハイドロゲル(AIST他) ― 温度・光・PH・濃度等の変化によって膨張/収縮の体積変化を利用する生体適合性のマイクロマシン・MEMS技術へ。
・環動ゲル(東大) ― PEG(ポリエチレングリコール)にCD(シクロデキストリン)が包摂されたポリロタキサンは、ゲル架橋点が自動で動く高分子ゲル。その構造特徴から、高伸張性(最大24倍)・高膨潤性(8200倍)などから、その用途はレンズ・電池・塗料・ダンパー剤等と広い。
・生分解性の弾性ゲル(原子力機構) ― CMでん粉に水を加えてペーストにし、γ線照射してのち、酸処理すれば、高強度が得られるので、DDS・化粧品・汚物処理材の基材として有用。
・発色制御ゲル(名古屋大) ― シリカ球コロイド結晶にNIPAを組合せると、可視光を反射し、白色光下ではオパールの輝きを呈す。バイオセンサーへの利用可。