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● Report No095/ 05月30

象嵌(ぞうがん)

 人間国宝の米光光政が91歳で没して30年が経過した。同氏は終戦後に需要(買い手)も無いのに刀の鍔(つば)の象嵌細工という工芸分野の復活を願ってその製作研究に努めた。その工程は、鍛鉄板の模様切り、模様付けの筋彫り、金線の埋め込み、焼成、錆付け、錆止め、3ヶ月の枯らしを経て完成へ。これらは現代ハイテクの光導波路を連想させる。それも、多モード型チャンネル導波路(三次元)、構造的には埋め込み型チャネル、その埋め込み材はニオブ酸リチウムなどで基板はガラスやシリコンなど。象嵌の鉄生地金埋め込みとは異なるが、さび止め層にあたる低屈折率のクラッド層まで有するとなるとイメージは重なってくる。もっともEO(電気光学)、AO音響光学、MO(磁気光学)、TO(熱光学)、諸効果は鍔には期待すべくもないが、芸術的資格を生み出している。工芸技術の業(わざ)が静かに工業技術の醸成に資していると聞かされたが、さもありなん。

金箔は江戸時代のナノテク

 金閣寺、仏具や蒔絵の表面を飾る金箔。
 箔が作られたのは江戸時代になってからとか。20金以上の純度がなければ延性が乏しいので、精錬技術の向上もあってのことか。越前金沢で発達を遂げ今日に至ると。その製作は分業になっており、澄屋と箔屋。 澄屋 − 5ミリ角の金板を延ばして30ミクロンに。それを2寸角に切断し(延金と言う)澄打紙に挟んで600枚重ね鹿皮に包んで3μになるまで叩く。(上澄と言う)
箔屋 − 上澄を2寸角に切断し、灰汁で処理した特殊加工紙に挟んで叩いて0.2μとする。不思議にもこんなに薄くなると粘着性を帯びるとか。当時の箔屋職人が、現代の金蒸着技術を知ったらどう感じましょうか。一方蒸着技術者は0.2μの金箔の作り方を知っているのでしょうか・・・・・・。

 

● Report No094/ 05月23

外部刺激

 別項で、マイクロ波による導電性コンパウンドの硬化について触れたが、物体に何らかの刺激を与えて物質の組成変化を期待するプロセスがいくつかある。殊にポリマーの場合、湿度(雰囲気熱)の付与以外に
・超音波による局所加熱
・磁場付与による分子配向
・レーザーによる局所加熱 ・電場付与による双極子の回転 等々
 これらのエネルギー付加による物質の変態変性を狙っての利用が増えるものと予測される。例えば従来は不可能であったテフロンや、ポリイミドの様な熱融着不可能の材料でも、捻り振動超音波エネルギーによって可能になったとの報告もある。        
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 撫でたり、叩いたり、伸ばしたり、潰したりしながら更に上記のような刺激場を与えると今まで知られていない現象が続出するかも知れない。何か人間の教育の場みたいですね。

フォトン―PHOTON(光量子)

 フォトンなる単語があった。側にエレクトロンなる単語もあった。どんな位置関係になるのか調べたら、大阪大学河田先生のレーザー加工の文献中に理解しやすい文章があった。「エレクトロンは電線・配線の中に閉じ込める必要あり、遠隔操作する為にはTV、電子顕微鏡の様に真空チャンバー(ブラウン管)が必要。
 フォトンは環境に自由。大気中、水中を自在に走る。映画やプロジェクターはブラウン管を必要とせず離れた距離に画像を大きく映し出す。
   光のメリットは「リモートアクセス、それも3次元制御にあり」と。
  エレクトロンもフォトンもそれぞれ特徴あるものの時代はエレクトロンからフォトンの世界(例、ペタビット、光ノード、光スイッチ、スーパーコンティニューム光、時間ゲート、光信号処理・・・)へとゆっくり大きく動いているのもフォトンの特質か。それは質量ゼロ、スピン1の電磁場の量子と振動数・エネルギー・質量ゼロの光の光子の二能性を有するフォトンの利用は人類の将来に関わる可能性無限の領域の様にみえる、からか・・・。

 

● Report No093 / 05月16

超分子 ロタキサン

 世は挙げてナノテク研究時代。機械的スイッチを分子レベルにしようとし、画期的コンピューター、分子素子を狙う分子エレクトロニクスが期待されています。そこで目を付けられたのがトポロジカル超分子。一筆書きができる結び目上の環状分子(ノット)、2個以上の環が鎖状に連結した形の「知恵の輪」的分子(カテナン)、ネックレス状で鎖状分子を紐とし、環状分子を飾り玉的に配列しているロタキサン。
 このロタキサンの飾り玉部には、良く知られているシクロデキストリンやクラウンエーテルなどを、鎖には長いポリエーテルで組み上げるようです。
 この飾り玉を鎖状で、位置ずらしをしたり、外したりすることで分子スイッチになります。そのための入出力には、光制御、酸化還元制御、PH制御、温度制御などいろいろ考えられる。スイッチの他、分子シャトル、分子素子−分子マシンなどの研究も鋭意進められている、とのこと。ナノテク時代の主役に躍り出る日も遠くないようです。いずれ誰かが、ロタキサン構造で飾り玉部分が貴金属構造の物を作ることでしょう。さて、どんな機能を発見するのでしょうか・・・。

燃料電池自動車

 今や花形キーワード。マイカー族としては目前の新車発表が待たれます。燃料も、新規ガソリンかメタノールかそれとも水素か。また、それによってエンジンシステムが全く変わってしまうところが開発当事者達の悩みどころ。ある種のブレークスルー技術の出現により、一挙に本舞台に躍り出て、先行技術を一蹴してしまう悪夢?を抱きつつ、関係者は大変でしょう。
 実用車の販売開始をトヨタ2003年〜、D・クライスラー2004年〜と公表しているのは、理想論と現実論の両論同時推進と見える。先日、広島大で開発されたIEA(国際エネルギー機関)の目標値に合致する、水素吸蔵合金などは、従来技術品の3倍の吸蔵量、それも100℃以下の低温とのこと。これも一例。
 単に新材料、新システムのR&Dのみならず、石油業界の変革、新規業界からのエネルギー事業参入、電気電機業界の新ビジネスチャンスなど、大きな渦が巻いている。渦で目を回してはいけない。目を凝らせば渦の中が見えてくるはず!

● Report No092 / 05月09

インクジェット方式の利用

 インクジェット機構を利用すれば特殊なインク剤をドット状、ビート状、膜状に形成してハイテク分野で幅広く使える筈と。それゆえ実用化開発が積極的に進められている。いくつか羅列してみますと。
・半田バンプ形成 − 直径60-105ミクロン粒を高速多量に形成 (米口MPM社)
・光触媒による画像形成 − 光触媒と接する金属イオンを還元してのち、無電解メッ
キによる配線パターン析出
・電子回路 − 超極小ノズルを用いて(有機高分子+金属ナノ粒子)インクによ る
子回路の形成
・積層型RP − 光硬化性レジンの吐出積み上げによる(CAD/CAM)ラピッドプロト
成型プロセス ・DNAチップ用基板 − ナノ金型技術より得る(フラッターテクノロジー社)
・ELパターン形成 − フォトリソグラフィーが使えない高分子ELのパターン形成に。そのレベルは正孔注入層(50ナノ)、発光材料(60ナノ)。(セイコーエプソン社)
 インク材料のいろいろ、三次元形成、3D塗布、超微細加工が可能となると、さあ私も何か考えてみようとそそられる技術方式ですね。

剥がせる接合

 しっかり接合した部材を、簡単に分離出来るような接合技術が、リサイクル・リユースの時代に求められている。元来、剥がれないように設計されている接着剤、取り外しに手間が掛かるボルトナット類、それでも次々と新技術が開発されつつある。
・ 自動車ヘッドランプカバーのシールには、オイル状柔軟剤を配合した粘着剤を利 用する。こうすると本体から楽に剥がせる
・180℃で溶融軟化するエポキシ封止剤なら、不良LSIのみをPCから剥がし取れるので基板全体を不良にすることがない。
・シリコウエハー・ダイシング工程の仮押さえ用粘着シートに細工して、粘着力を消す ために、光を照射して発泡させたり、加熱して硬化させたり、等々。
・設計的にはめ込み構造とする ・面状締結材(例:ベルクロ等)の積極利用

 二律背反事例の解消の活動・・・。この種の開発テーマが増えていく時代でしょうか。

● Report No091 / 05月02

ポリマーアロイ

 金属に合金がある如く、プラスチックにもポリマーアロイと称する合プラ?がある。プラスチックの改質技法(対燃性、機械特性、対化学薬品性などの向上)として広く利用されている。
・物理的に単純に混ぜたポリマーブレンド A+B
・科学的に共重合体化させた A×B = AB
・異種高分子が分子間力で寄り合った高分子錯体 A-----B
・相手の隙間にお互い潜り込んだ相互嵌入ポリマーネットワーク(IPN) A::B
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 これらを眺めてみると、人材・教育訓練・実施活動・成果などという用語と重なってくるのは変ですか。特徴に乏しい個であっても、組み合わせによって新たに個性を発揮する。組み合わせには相溶化剤、触媒、あるいは加工条件(温度、圧力など)などの仲介者、いや指導者が必要とするところまで似ている。

光で溶融

 レーザーと言えば昔はマンガの殺人光線、今はレーザーディスク。その利用較差に驚く。レーザーは原子・分子の量子的振る舞いを制御して得られる人工光。その光をレンズで絞っていくと0.2mm以下のスポットになり、莫大なエネルギーに収束する。従って手術に使える。それも切断のみならず接合にも。さればプラスチック利用は当然。溶着−文字通り溶かして接着すること。しかしレーザーは透明プラを通過してしまうので、光を吸収する添加剤を透明プラに配合してやる。接着剤そのものを光吸収型にして異種材質同志をレーザー接合できる技術も当然開発された。
 さればと、光の手綱さばきを拡げれば、乾燥、焼結、表面変性、マーク彫刻にも利用しようとするのは当然の流れ。
 そう言えば、最近、フェムト秒レーザー(フェムトは1000兆分の1)メスによって、ガラスの原子構造を切り、その部分が結晶質に変化して高屈折率になるため、光回路や光メモリーが作り出せたとの研究発表があった。レーザー光線は恐ろしいほど楽しい光線かな。

● Report No090 / 04月25

可視化 U

 感圧性接着剤、そのテープとなると身近にある粘性テープ。ところが感圧性塗料となると粘着材とはまったく関係がない。一寸調べてみると、米国NASA/ワシントン大学の開発による蛍光剤白金ポルフィリンをシリコンポリマーに配合した塗料が草分けであり、これを塗付した面に強い風を当て、紫外線照射すると、励起光により発生したルミネッセント光の強度が、酸素濃度により変化し、それをCCDで把え、画像処理してカラー表示可視化する技法。一口で言えば飛翔体の表面にどう空気が当っているかを知る技術でロケットや超音速ジェット機などには不可欠の計測技術で、今では多くの機関が携わっている分野。更には耐熱性ある酸化皮膜型技術、自己組織化膜技術など圧力のみならず、温度、歪み変形度にもからんで行く模様。
 人の目では見えないものを見えるようにする技術;即ち可視化(306)技術は光学/電子技術/科学技術の精緻な組合せの粋とも言えよう。スピードに応じて変色する自動車用感圧塗料があればスピード事故は激減するかも・・・。

朱肉

 日頃、何気なく使っている印鑑と朱肉。朱の顔料と油分に繊維を織り込んだもので生肉に似ていることから朱肉と呼ばれるとか。顔料も昔は辰砂(しんさ) と言う硫化第二水銀や硫化カドミウムの様な毒物の代表みたいなものが用いられたが、現代では赤色酸化第二鉄やモリブデンレッドが使われている。この印肉から印鑑の表面を経て紙や石版に転写するのだが、今日の超軽薄短小の時代、フォトレジストプロセスによるパターン転写が主役になっているが、サブミクロン―ナノの時代に入りマイクロコンタクトプリント(μcp)の形で出現。印は水牛の角や石材ではなく、先端技法(RIGAプロセス、EB加工など)で彫られたシリコンゴム版、朱肉の代りに、ポリマー、セラミック、金属が多彩にパターンを形成し、その線巾にも2桁ナノレベルに。第二次大戦中、ドイツスパイ文書はその句読点にマイクロ写真を組み込んでいたが、今日ではそのマイクロ写真の中のピリウド点に文章、図を組み込める程。当然顔料サイズも1桁ナノレベルで既に金、銀、カーボンなどが得られている。もっともこのサイズになると光が透過してしまうので「印」にはなりませんが、光学的、電子的にはスパー朱肉となりましょう。

● Report No089 / 04月18

リサイクル

 電気電子機器のリサイクルは技術的にも高度だ。
 水銀に汚染されたマザーボード、モ二ターの含鉛ガラスなどは厄介だ。古いHDDなどは回路基板に再利用、プラスチックは細片化、金属は磁石による分離。良く知られている事例は写真感光剤からAg(銀)の回収、電子部品製造工程から出る廃水からプラチナ、パラジウムの回収など。それではと、リサイクルしやすいように設計段階から手を打っておこうと。生分解性のあるキチンキトサン(蟹の甲羅成分)を予めポリマーに配合しておけば、リサイクル時にEMI用の無電解メッキ層の回収が容易になる。しかも、分離後ポリマーは活性汚泥の中で生分解してしまうとのこと(NEED支援テーマ)。これももし、環境に優しい金属溶解液があればOKなのですが・・・・。
 ある特定条件下でぱっと自立的に剥離、分解、分離、選択溶解など起こせる技術が重要テーマになって来そうです。
 もの作りとは別に「ものこわし技術」。

ナノ級金属

 粒ならば直径が2桁ナノ、ワイヤーならば綿径が2桁ナノなる超々微細金属が産総研で手品のような技術手法で創られた。それは、鉄ニッケルワイヤを窒化ホウ素で包んだナノワイヤー。一方北大では直径3ナノの白金ワイヤーが得られ、これ迄に無かった光学・磁気特性を示すとか。粉粒体の形のものは金、銀などが分散液の状態で既に上布されている。これらは最先端のアイトマイズ法でもナノレベルは得ることが出来ず、液状マイクロエマルジョン法、電解法、界面活性剤制御法などによって得られる方向で進められているようだ。銀は元来、殺菌抗菌性があることは周知であるが、1〜2桁ナノサイズともなると表面活性度は跳ね上がり、ほとんどの細菌は死んでしまうことから、医薬品、抗菌剤、殺菌剤として利用研究が進められている。また、〔光触媒/ナノ銀〕系で有機物分解機能まで付加した商品も発表されている。
 ナノ銀を銀塩フィルムに利用したら光感度は上がるのか下がるのか、いや他にとんでもない特質が出るのか?もし出来れば新規性の光学材となるのか?ナノテクも目で見えるようになると楽しい。寸感ならぬナノ感、少々。

● Report No088 / 04月11

燃料電池の開発レース

 社運を掛けて、自動車会社は燃料電池の開発に邁進、いや狂奔している。無理もない。燃費、排ガス問題から避けて通れないからだ。ところが技術障害が大きく立ちはだかる。エンジン出力、燃効率などはそこそこのレベルに達しつつも、問題は製造コスト。気になって、ちょっと首を突っ込んでみた。なるほど、固体高分子型燃料電池(PEFC)の心臓部たる、スタック、殊にセパレーターに苦労とか。腐食性雰囲気に耐え、不純物を溶出せず、導電性であり、微細な溝構造をつけるとなると、歯ごたえのある課題だ。材料屋、プロセス加工屋の腕のふるいどころ。名だたる、企業グループがレースの真っ最中。巨額の賞金(技術対価)が見えてるだけに、観客も興奮する。さぞや開発者達は競争のプレッシャー半分、テーマの面白さ半分で忙しいことだろう。高価な材料はダメ、複雑な加工工程はダメ、そうなると頼りはいったい・・・?

古代のFRP

 古墳・貝塚からたまに漆片が出土される程、日本人は古くから漆器を利用してきた。今日ではお椀物と言う形で生きている。熱い汁でも手でもてる、蓋付きなので冷めない、サイズに比べて軽量、美麗な絵柄模様付きで、工芸品から日常品までその利用範囲は広い。「うるし」と聞くと即天然質の塗料となるようだが、構造材料として一種のFRPならぬ、うるし強化布が国宝鑑真和上像(奈良唐招提寺蔵)に見られる乾漆像(かんしつぞう)だ。木の仏像をコア(核)にして、うるしを含浸させた布を巻きつけ、貼り付ける技法。当時としては先進技法。その利点は何だったのだろうか。工程の簡略化か、超厚肉被覆層を得るためか?
 諸兄のご意見、うけたまわれれば幸甚。

● Report No087 / 04月04

搬送

 物品の搬送と言っても、そのサイズ、形状、移動距離によって包装形態はいろいろです。電子部品ともなると、それ自身が最終製品ではなく、組立ラインで扱われるので当然自動化に対応した方式となる。チップ部品、百足型の半導体、ワイヤピン、膜物などを収めるキャリアテープ、エンボスキャリアテープが主体となっている。エンボス(凹部)空間内で部品が踊ってはならないし、蓋のテープもさっと剥がせ、静電気に弱い部分に保護措置(ESD)も施され、機械的強度はもとよりグリーン化度、さらにはリ・コース型の開発まで為されつつある。ところが昨今の少〜中量多種時代への移行に伴い、ライン方式ではコスト問題が重くのしかかることから、業界は急速にセル方式(一名の作業員が他工程を担い、数人でチームを組んで最終製品を仕上げる方式)に転換し始め出した。そうなるとキャリアテープもどんな変身を遂げてセルに対応するのだろうか。また新しい生産技術ニーズが出てきた。縁の下の力持ち的テーマこそ真の企業力につながるだけに注目していたい。

セルフヒーリングU

 293で自己修復性について、マイクロカプセル型材料の事例に触れたが、一寸調べてみるとかなり広範囲に亘って技術展開されているのが判った。
・キズがついてもその個所から錆が広がらないクロメート・メッキ
・水分膨張性樹脂を含浸せしめた不織布型遮水シート
・ベントナイト配合による2.5p迄の窄孔にシール機能もつ土壁
などなど。そう言えば、軍用機の燃料タンクに内面ゴムライニングを施して銃弾孔を即シールしてしまう技術が米軍は既に採用していたと聞いた。又、身近な例では、ボーリングレーンがメイプル(かえで)板で出来ているのも、ボール凹みがゆっくり元に戻るからだと。こう眺めてみると、インテリジェント材料がこれからの材料分野の重要な方向の一つだと感じられる。これも又調べてみると1989年に科学技術庁技術審議会から自己修復性材料が答申されている。即ち「周辺の環境情報や材料の内部情報を検知し、それに対して判断・命令し、実行すると言う一連のメカニズムを有する材料」と。人手のかからない材料は、人から見れば安心感が出る。

● Report No086 / 03月28

自然に学ぶ先端研究

 K社の洗剤アタックは沖縄深海で発見されたアルカリ環境で生きる菌微生物がつくり出す酵素の利用から得られたものとの話は良く知られている。何億年もの年月をかけて精緻に組み上げられた自然物のいろいろ−植物や動物のメカニズムが研究の対象にするのは当然のこと。殊に分子生物学の面からの機構解明はタイトルだけでも面白い。
・筍(たけのこ)の生長のメカニズム−驚異的細胞分裂スピード
・蜂の複眼−脳/視覚の機能、フェーズドアレイ
・線虫(950個細胞より成る)の分子相互作用と情報処理機構
・植物の光合成システムと同様のバイオリアクターシステム構築による人工油の創製 など  
無数にある自然物、その機能機構を発見し、解明し、利用し、或いは人工的に再現する研究はこれから人類の大いなる財産となろう。テーマの宝庫たる自然を見つめることの大切さを見つめ直そう。

ポリシラザン

 あまり聞かない化学品の名称、強いて言えばシリコーンの従兄(いとこ)?あたりか。Si / N / H 元素で環状(4員環・6員環・8員環)に組み上げられた構造で、空気中の水分や酸素と反応して石英ガラスの塗膜を形成することから、最近自動車の撥水コート剤として、或いは半導体の層間絶縁膜として注目されている。シリカガラスの薄層が簡単に得られるとなると用途は広い。
 防汚性建材、光学(低屈折率)層形成、耐熱電線、防止剤、接着剤、防食塗料、導電性ガラス、パターン材料などなど。こうなってくると原体合成屋も頑張り出し、いろいろ化学バリエーションを付けての開発品を発表し出し、それを知って応用屋、利用屋たちは更なる市場可能性を推し広げ出す。単純に元素の異なる光触媒(TiO2 二酸化チタン)は今脚光の真っ只中、このSiO2もシリコンウェーハーだけでなく土民の手に扱われる用途が目前にあり。でも(光触媒/シラザン)特許は2000年に2件公開になっていました。

● Report No085 / 03月21

三種の神器

 本来の意味は、皇位の印として伝えられている宝物は、八咫鏡(やたのかがみ)、草薙の剣(天叢雲剣とも言う)、八尺瓊曲玉(やさかにのまがたま)の三種を指すが、現代になって三種の代表的な必需品のことを指すようになった。昭和30年代にはテレビ、電気洗濯機、冷蔵庫が文化生活の神器であった。
 今、電子工業界では半導体不況の対応として、微細対応銅(Cu)配線、低誘電率膜(Low-k)材料、300ミリウェーハーが神器になるとの確信から、その先端に位置しようと各社懸命の体制作りに入りつつあるところ。別の産業種でのそれぞれの神器は何だろう。それを知るには専門家の作った技術ロードマップを調べることか?多様化の時代、三種では収まり切れないで、10種にも20種にもなってしまうかも。そうなると神器とは言えず単なる道具か。神様も戸惑うところ。

植物の再利用

 昔、農家では自分の敷地の外に捨てるものが無かった。稲藁は堆肥に、生ゴミは家畜の餌にと言った具合に、全てが自然のサイクルの中に組み込まれていた。昨今は地球温暖化、環境汚染等の視点から産業レベルの対応技術開発が活発になされつつあり、その工夫の程に感心するばかり。
・籾がら + バインダーレジン → パーティクルボード
・やし繊維に竹薄片シートをラミネートした高透湿性ボード
・ビール粕、ビート粕、籾がら等に大豆油絞り粕を加えて蒸留し酢液を得、自然農薬として用いる
・紙パルプ + 酵母粕 + バインダー → 生分解性ボード
・紙片 + 澱粉液 + 炭粉 → 電磁液遮蔽板
 このように、時代が進むほど、その対応の仕方に昔の智恵がより多く必要になって来るのが判ります。人も物も自然に回帰するのが本筋の様ですね。

● Report No084 / 03月14

水素ガス貯蔵タンク

燃料電池の自動車の開発が熾烈を極めている。 水素ガス方式ではドイツのダイムラーが先頭のようだ。問題は車に搭載のガスタンクだ。圧縮水素タンクでは軽量ものでは耐圧性に問題あり。液化水素タンクでは漏洩の心配が大きいと。一方吸蔵合金の研究も進んでいるようだが、最近CNT(カーボンナノチューブ)の水素吸蔵特性とも研究が進んでいるとのこと。また一方NEDOのスーパーメタルプロジェクトでは各種金属の結晶粒を微細化によるスーパー金属の研究が進められており、鋼で従来の2倍の強度が得られていると言う。よって素人アイデアでウルトラ水素貯蔵タンクはいかが。
 スーパー鉄による更なる歪み熱間絞り加工タンクと、
 その外側からFWによるCFRPの補強層の形成、
 そのタンク内にはCNT/ 金属複合吸収剤と圧縮水素体の混合剤
良いところ取りのつまみ喰い方式。たぶん非論理個所も多々ありましょう。でも先ずはエイヤッの発想ありきの心意気で参りましょう。

薄皮饅頭

文字通り皮の厚さの薄いもの。主役の中身の練り餡を表面から包み保護しているもの。この構造のものを光(主として紫外線)を利用して薄皮形成を為し、もの作りの工程で役立っている事例は多い。
・絶縁用エポキシを導線コイル含浸し、光照射で表層に皮を張らせれば直ちに次なるレジン硬化炉に入れてもエポキシは流下しないで済む。
・光硬化性レジンを含む薬剤の小球分散液に光照射をすれば超ミニ生卵的カプセルが生成される。
・カーボンファイバー強化プラスチックのフィラメントワインディング工程に於いて、回転中のマンドレルに光照射で表面に薄皮が張れば、含浸レジンが未ゲル化であっても、回転を止め、台から外して硬化炉に移せる高能率生産が可能となる。
・香料や農薬等に光硬化性レジンを配合し、多孔質粒体に含浸せしめた半湿状粒体に流動床下で光照射すれば除放性カプセルが得られる。
省エネかつ高効率の光薄皮プロセスの利用はこれから続出しよう。

 

● Report No083 / 03月07

炭疽菌殺菌装置

「三菱重工はこの4月に米国郵便局向けに炭疽菌殺菌装置を販売する」との記事があった。昨2001年9月11日の同時多発テロの6ヶ月後に早くもこの様な先端技術機器を開発−生産−上市出来るとは驚きだ。テロ事件以前に開発計画がありようもない。同社は偶々、EB(電子線)型殺菌技術を持っていたが、菌テロ情報を受けて速やかに炭疽菌に絞って開発したとの事。 昨今の研究開発に於いては企業内の情報一元管理、それも自社プラットフォーム、コア技術、ベース技術の認識と革新プロセスの組み込みは必須で、上述の例は電気、電子、化学、バイオに渡る領域で、企画部内の迅速な行動による立ち上がりがもたらした効果と見える。かの吉田松陰ですら、あの時代“飛耳聴目”即ち、多くの情報を集めそれに基づいて行動しようと説いている。“重工”と名は重いが、動きは敏捷であった事例。拍手を送りたい。

低誘電率材料3話

・ポリイミドに数百ナノサイズの空気穴を散りばめた多孔質構造のシートは、その穴の体積率が50%位になるとテフロン並の誘電率に下がり、ブロードバンド向け高周波基板材料になると言う(日東電工)。
・半導体素子の構造上、シリコン酸化膜の上に更にシリコン窒化膜で覆ってやると(電子層成長法によって0.4ナノ厚さと言う極限薄膜)酸化膜は不純物の拡散から守られて寿命が10倍にも延びると言う。超高速動作の時代、耐久性ある素子は重要だ(広島大学)。
・有機材料は得てして高誘電体なれど、分子設計技術を駆使して無機の窒化ホウ素をベンゼンに類似した電子構造に配列したボラジン骨格の高分子が発見された。それは誘電率1.87、耐熱性465℃で、デザインルール0.08μm(2005年)以降の次世代高速ULSIに使えると言う(三菱電機)。
               ―――――――――――――――――――――――――
この種の材料とプロセス開発レースは専門家ならずともワクワクする程面白いと思うのは小生のみか?