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● Report No057 / 08月31日

剥がす

 新軽簿短小の動きがの代表例にシリコンウェハーの薄板化がある。LSIの高集積化、BGA・CSPなど先進的パッケージ形態、更なるスタックド化、などに伴う物の動向。現在の150〜200μ厚を、30〜50μ厚に目指す物。薄くなるほどその取り扱いは難しくなり、研削後チップサイズへの細片化、仮押さえ具としての粘着テープからの剥離の工程で"剥がし"が難しい。剥がし易くするため、粘着層の粘着力低下を図る工夫がいろいろ出されている。
 ・熱による発泡化
 ・熱による結晶化による非粘着化
 ・光による架橋反応による非粘着化
 関連特許を眺めただけでも、優に「3桁」件程ある、重要分野なのですね。  見かけは薄くとも、その価値は厚いと知った。

レーザー光で造るトンネル

 プラスチックの射出成型はペレットの熱融−キャビティーへの充填−冷却の順で、折角ドロドロにしたプラスチックを型から取り外すために、冷却−固化の宿命がある。生産効率のため、金型には冷却機構が組み込まれている。そのため、多くの加工工数、費用、製作日数等の問題が多かった。一方、最近進歩がめざましい、ラピッド・プロトタイピング(RP)において、金属粉末を炭酸ガスレーザー光照射による粉末どうしの接合、積層、焼結技術(Selective Laser Sintering...SLS)が開発され、これを応用して、金型の表面に沿って内部に冷却トンネル・ネットを形成することができるようになったと。RPの技法で小量産のプラ成型はあるが、大量生産用金型技術はこれからの注目点。このトンネルも掘った物でなく、金属粒という土砂を積み上げていったらトンネルが形成されていたと、とらえるべきか。昔の空想マンガの文字通りの感、ここにあり。

 

● Report No056 / 08月24日

Pre-○○○

 Pre-preg(プリプレグ)、予め繊維束にレジンを含浸させたもの、Pre-form(プリフォーム)、予め予備成型したもの、Pre-mount(プリマウント)、予め部品等を搭載してある基盤・・・etc、などは製造工程を画期的に効率化するための手法で、「予め○○○しておく」というコンセプト。戦後、日本の造船業に飛躍をもたらした「ブロック建造」は予め、区画部分を組み立てておき、そのあと一挙に接合してしまう物。また、今日では家庭用電気用鋼板も、鋼板工場で予めの塗装(Pre-coat)しておき、電器組立ラインからは、繁雑な塗装ラインを追放してしまう状況。さすれば、自動車のボディも如何かと思われるが、絶縁性の塗膜が付いていると、スポット溶接、シーム溶接が難しく、その箇所の防錆、防腐食問題も派生してくる。また、ファスナー類の多用もコストアップとなる。そうなると、構造用接着剤のPre-coatが考えられ、その硬化には電磁加熱システムか・・・。 使い捨て(実際にはリサイクル型)カメラも「予めレンズ装着型の感光フィルム」とすると、Pre-の範囲は一層広がる。
 婚約者で定義すると、どうなるのかな?

複合型レンズ

 ガラスレンズの成型に於いて、精密に整えられた金型の表面が、正確にガラス表面に転号されないと、レンズ特性は当然発揮されるはずもない。そのため、低温成型ガラスの開発、成型物の金型表面での急激な温度変化を避けるための金型表面層に断熱層の形成、型締めの工程の工夫など、量産レンズ技術には問題点が多々存在していた。不正確な転号とは、隙間の存在を意味するので、そこに光学材料を注入固化せしめればと、一種のIn-Mold-Coatingのコンセプトに基づき、光硬化性レジンを注入or滴下し、反対面より光照射すれば・・・、の技法が花盛り中。とはいうもののさらなる工夫を加味しなければ、と。
 ・滴下レジンを均一に押し広げるためのエアー吹き
 ・レジン膜原を一定にするための金型シール機構の工夫
 ・ガラス成型品に予めポリマー膜を予備形成しておく工夫
 ・備忘を防ぐため、レンズを光軸中心に回転させてやる工夫
 ・脱型のため、爪の部位形成の工夫、などなど
 「足りないときは足してやる」、それが開発でしょう。

 

● Report No055 / 08月10日

向きを変える

 "風向き"という単語があるならば"光向き"もありましょう。向日葵(ひまわり)が太陽光に向く(実際には若い時のみの性向)様に、光ファイバーの先端部が向きを自由自在に首振りしたら面白い。但し、その機構はスマートでなければ美しくない。思いつくままに羅列しますと・・・。
 (1)物理的な外力による
    マイクロマシン、熱バイメタル、形状記憶材、膨張性機構に接して(液圧、気圧、固体変態)
 (2)光ファイバー自身の機能化
    ・クラッド層にマイクロヒーターの組み込み(三次元印刷)
    ・クラッド層に金属エージング
    ・クラッド層に形状記憶ポリマー形成
 (3)刺激応答性高分子ゲル層の形成
    ・導電性ポリマーの利用
    ・誘電体の電歪現象の利用
    ・イオン導電性ポリマーの利用
    ・感温体ポリマーの利用
    ・電場応答変形材料(カルボン酸膜など)の利用
 さあ、第4の手法も考えてみましょう。

知的所有権市場(C&EN誌2001.4.2号より)

 知的財産(IP)をお金にするには、今までは自分で発明し、製造し、販売するのが常であったが、これからはIPの移転という方式により効率化を計ろうと。その仲介機構が求められ、殊に化学の分野では活発に市場取引が為され、始まった、と。化学技術の市場価格ランキングがパテント&ライセンス交換術報(2001.1.1付)によると、下記のようになる。
 無形資産価値(単位:百万ドル)
 酸化チタン    ・・・ 254.6
 黒鉛電極     ・・・ 113.4
 ウッドポリマー材 ・・・ 106.2
 高機能ポリマー  ・・・ 100.9
 腐食抑制剤    ・・・ 75.6
 塗料       ・・・ 52.4
 香料化合物    ・・・ 44.1
 アクリル     ・・・ 43.6
 吸収剤、吸着剤  ・・・ 42.6
 潤滑剤      ・・・ 36.2
 酸化チタンが筆頭にあるのは少々意外ですね。

 

● Report No054 / 08月03日

感熱性ポリマー

 温度の変を敏感に受け止めるポリマーが次々と開発されている。その利用範囲には驚かされます。
 (例)熱可塑性の曇天現象を示すポリマーは、感熱素子、表示材料、細胞培養培地、光パターン形成、感熱性画像形成など・・・。
 (例)熱可塑性の粘着現象を示すポリマーは、物体の一時的固定剤の機能を用いて、植物播種のシステム化、シリコンウェハーの研磨時の固定チップの搬送用ベルトなど・・・。
 これらは、いずれも用途に適合するように分子設計・合成ができるので、商業的に融通性は高い。さあ、新たな用途アイデアを出してみましょう。(近々、続報あり)

蜘蛛の糸

  子ども時代、母からインドの"カンダタの蜘蛛の糸"の話しを繰り返し聞かされた。地獄で苦しんでいるカンダタの前に、天井の天国から垂らされた一本の細い糸を夢中でよじ登り、途中でふと下を見ると、ぞろぞろ大勢がしがみついて登ってくるではありませんか。糸の切れることを恐れたカンダタは自分の下のところで糸を切ったところ、お釈迦様はカンダタの上で糸を切られた、と。
 蜘蛛の器官から吐き出された蛋白質溶液が、空中で糸になるメカニズムは解明されていないようだ。空中に出た瞬間に空気酸化か?、蛋白質構造の変質(アミノ酸配列)か?
 カンダタにはこの神秘の生体高分子の謎を知る由もなし。

 

● Report No053 / 07月27日

遅刻

 (自)遅れる(他)遅らせる。野球でのdelayed steal、時限爆弾、遅延電子回路など意味ある遅刻は多い。粘着剤の分野でも、一足遅れて粘着機能を発揮するdelayed tack技術も実用化されている。面白そうで、これから発展しそうな遅刻技術を2件ご紹介。
 (1)瓢箪(ヒョウタン)の口から、紫外線硬化性エポキシ樹脂を注入するとき、紫外線を照射すると、瓢箪内部で硬化が始まり、やがて硬化物が得られるもの、すなわち暗所で反応する光硬化なる技術。
 (2)蛍光色素で修飾したポリスチレン微粒子アレーにマイクロレーザーの照射による電磁波進行速度の遅延化技術。
 高速ばかりが能ではない。遅らすことも重要。ほかに先を越されること無いよう、さあ急いで「遅刻研究」しましょう。

セットメーカーと部材メーカー

 部材料メーカーは、セットメーカー(部品メーカー含む)との立場の違いからR&D、特性に関する姿勢はおのずから異なる。セットメーカーにすれば、重要部材は自我単独としたい、もし共同でやるなら、網目状に権利押さえしたいのが本音。YX(次)YXX(次々)まで展塗して手を打ちたいと。自我単独が無理(技術的に時間的に)と思われるとき、好んで中堅メーカーと組む感じ。その場合、要求として、それを優先テーマとさせ、技術アイデアを要求し、応用パテントにも手を打たせ、試作のみならず試作量産の検討まで求める。共願の結果、実質的にはセットメーカーに権利行使権が移るようになり、共同開発とは言いながら、いつのまにか主−従の立場になってしまう。
 これに対して部材メーカーとすれば、独立性確保のためにも、それにかかわる材料・加工技術・利用の技術出願が予めなされている事がセーフガードの一つとなろう。そのためには結局、優れた人材の育成確保に尽きると思いますが・・・。

 

● Report No052 / 07月20日

フェムト(10 -15乗)秒レーザー

  ピコ秒(10 -12乗)より短いフェムト秒レーザー照射は、物質内部の所定個所のみ非線形光学現象を誘起させることがわかってきました。(バックナンバーの「バターでポリエチレンを接着する」をご覧ください)バターでポリエチレンを誘導加熱接着することを述べましたが、これも表層を加熱することなしに内部組成の変化をもたらす技術です。従って今まで、多層加工組み立ての複雑なプロセスを経ても、難しいとされていたフォトニック結晶や多層光メモリー、バイオ細胞加工、ナノマシンの形成などが可能とみて、各方面で鋭意研究が進められている。隔靴掻痒(カクカソウヨウ・・・靴の上から足のかゆみを掻く)では何らかゆみは治まらないが、フェムト秒レーザー手(テ)ならば簡単。光のスーパー孫の手。この技術は殊に三次元・機能層形成に威力を発揮しそうだ。

革新的化学技術のいろいろ

   21世紀は化学の世紀といわれる。それは電子・光学・ライフサイエンス・エネルギーなどの分野で核心をもたらすのは化学技術と見られているから。それだけに書店では半導体(プロセス技術・有機EL・新規性半導体など)カーボンナノチューブ、光触媒、導電ポリマー、光通信材料、ゲノム解析、DNA解析、ES細胞、クローン技術など先端科学技術が中核となっている。ちょっと情報検索しても、膨大な技術情報量には驚かされる。一人の研究員もしくはひとつの研究チームが進めている、そのテーマがその後、商業的に結実するのは低い確率であろう。ニーズ(トレンド)に乗ってのテーマか、技術革新的ブレークスルーしての新しいシーズ潮流を生み出すか、この時代5〜10年尺度で結果ははっきりしよう。

 

● Report No051 / 07月13日

宇宙の終わりは...

 時には宇宙に想いを馳せてみましょう。地球も50億光年も生きてくると、この光はと気になるが、後50億年は保つらしい。生命の存在する星はこの大宇宙には何十万個以上あるようで、地球より高度な文明星は当然多く存在するだろうし、過去にも存在していただろうし、それらの星の政治、経済、科学の状況はどうなのか、興味津々。宇宙そのものの終末論も三通りあるようでおもしろいので、ちょっとご紹介。
 (1)物質の基の原子さえ破壊され、ブラックホールすらなく、素粒子(電子、中性子など)が漂う死の世界
 (2)終末近くに一つの巨大なブラックホールに集約され、やがてそれさえ消え去り、トンネル効果によって無の世界になる
 (3)英国・ホーキング博士が称える論で、時間が一方向にのみ進むものではなく、逆にも進む(虚の時間)もので、誕生と終わりが同じ時である、と(難しすぎてわからない)
 今の自分の身体構成原子が素粒子となって、宇宙の終末を眺められるのかな。その時、魂はどうなっているのかな?生命の基のアミノ酸が宇宙から降ってきたのは事実らしいので。

ドレープ性(Drape)

 ドレープ−辞典によれば、動詞では“優美にたらし掛ける”。名詞では掛け布、カーテン、タレ具合、とある。ひらひらするものをピンとさせるのに、昔は布地の洗張りに籤(ひご−竹の細い棒)を張ったりしたもの。障子、団扇、凧なども紙をピンとさせたもの。産業資材でもドレープ性のあるものは多い。布類、ヤーン、コームシート、プラスチックフィルム、金属箔などなど…。これらにはろいろな技術手法で緊張を与えている。剛性シートをラミネートする、光硬化性レジンをコーティングする、再剥離性粘着剤で一時仮止めする、熱昇華物質を含浸する、凍結させる、真空チャックで吸引固定するなど様々な工夫が凝らされている。
 何も物品に限らず、精神面でもドレープ性は存在するもので、
  だらだらするな、シャントせよ!
  ふにゃふにゃするな、ピンとせよ!
 とか良く言われたもの。でも精神の心張り棒を見つけるのは大変ですよね。

● Report No050 / 07月06日

デジタルペーパー

  デジタル時代。紙までもがデジタル化の方向へ。これは電子的にに書き込みと消去ができる紙(フィルムベースが主)で、パソコンで言えばディスプレイとプリンタの機能合体したような物。すなわち、持ち歩きもできるし、デジタル情報として修正、加筆、検索もできる。技術方式としては、マイクロカプセル電気泳動方式、ツイストボール方式、トナーディスプレイ方式、サーマルリライタブル方式、液晶方式などが開発されつつある。今のところパソコンの市場急拡大、競争激化から、各社は主要テーマとして扱っていないようだが、その想定される利便性からも早晩、中核テーマの一つとなろう。綴込み型よし、巻物型よし、朝の出勤時に乗り物中で読むも、読み終わってもクズカゴぽいせず、明日また別情報に切り替えて楽しもうと。 そうなると、電子機器メーカー、製紙会社、化学会社等と絡んでくるので既に水面下での競り合いは進んでいよう。私のような古い人間はデジタルペーパー本を書棚に並べて落ち着くというようなトンチンカンな行動になりましょう。

ポリマー用調味料

 ポリマー合成時の調味料ではなく、ポリマーへの添加剤のことに触れたい。料理の 美味しさも調味料によるところ大で、ポリマーも自身の化学構造式だけでは十分に機 能発揮とは行かない。成型加工時にいろいろな調味料が配合され、独特の味が出てく る。
たとえば、軽量化には   中空ガラス粒
      高強度には   ホイスカー
      酸化防止には  酸化亜鉛
      難燃性には   ブロム化合物、酸化アンチモン
      電導性付与には 銀、金、カーボン
      着色には    マイカ粉、蓄光顔料
      抗菌抗カビには 銀、ワサビエキス
 顧客の多様なニーズに対応するために、同一ポリマーであっても調味料(配合表)と 調理法(加工プロセス)次第で、懐石料理にもなるし、中国宮廷料理、フランストュー ルダルジャン料理とも様変わりする。だから料理は面白い。

 

● Report No049 / 06月29日

バターでポリエチレンを接着する

  家庭のIHレンジシステムの如く、電磁誘導場で磁性材を温度上昇させる現象を工業界でもいろいろ利用されては。鉄材はキロヘルツの周波数領域で熱くなる。が、酸化鉄・・・たとえば磁性粉(γ-Fe2O3)となると、3〜8メガヘルツで熱くなる。それも瞬時に200℃以上になるので、バターに磁性粉を練り混み、そのペーストを接着剤とすると、ポリエチレンなどは容易に接着(接触表面のみの融着)できる。磁性粉の箇所のみ昇温する・・・即ち離れた場所でも、そこだけ加熱できるとなるとその利用はいろいろ想定できる。殊に人体内部での応用はいろいろと・・・。
(例)・熱感応性マイクロカプセルに封入した薬剤の放出(DDS)
   ・疾患部に注入して、癌組織の局所破壊、など。
  Fe2O3はFDA(米医薬品局)でも安全物質とされているものの粉末/ペーストなので、より使いやすい有機系のIH感応剤もいずれ出現しよう。最近研究が進んでいる有機磁性材料(例:テトラシアノエチレン化合物など)はIH場でどう感応するのかな?この材料は溶媒に溶けるので、塗付、印刷などもできるのであれもこれもと想いは広がる。

導電性ガラス

  金や銀などの導電性の微粉末をポリマーに配合して導電回路、電極などを形成する技術は広く利用されている。その粉末量が一定量以上になると、急激に導電性は向上するが、反面、強度、接着性は低下する。もし、導電性微粉末として低融点合金を用いると、成型温度によっては粒子同志の接触〜変形〜融着〜融合〜固化の変態状況で、金・銀などの場合と異なる結果が出るようだ。即ち、金属配合量が多くても、成型温度によっては(融点より高い場合は・・・)元の粒子サイズより大となるため、生成粒子同志の接触確率からか導電性は低下する。ポリマー成分の代わりに、熱軟化性のガラス(粉末)を持ちうれば、導電性ガラスが得られよう。もちろん、低融点合金粉・ガラス粉末・ポリマーの三元系も考えられ、その用途は広いと思われる。ブロック、シート、膜、粒子などいろいろな形状を想定してみるのも楽しい

● Report No048 / 06月22日

ゾル−ゲル・ゾロゾロ

  ハイテク材料を得るプロセスにゾルーゲル(Sol-Gel)法がある。これらによって得られた薄膜が次々と実用化に入りつつある。
・フォトクロミックガラス
・酸化チタンを担体とするシリカエアロゲル
・フィールドエミッションディスプレー用緑色発光膜
・骨と親和するヒドロキシアパタイト膜をチタン棒に形成
・450℃で溶融すると消色する色付ガラス
・LCD用ガラスにシリカ膜の形成、 等枚挙にいとまがない程。
 更には有機系物質とのハイブリッド化による利用例も多岐に有り花盛りの状況。  屈折率が低い(1.01〜)特徴を生かしたテーマアイデアをこのあたりで触ってみましょうか。
 原料面、プロセス面で融通性(Availabilities)が広い。Sol-Gelはハイテクに欠かせない技法です。

寸法と個数

  メートル(m)を基とした時、千倍毎にキロ(K,10の3乗)、メガ(M,10の6乗,大量)、ギガ(G,10の9乗,巨人)、テラ(T,10の12乗,怪物)となり、小さい方はセンチメートル(cm)、ミリメートル(mm)、マイクロメートル(μm,10のマイナス6乗)、ナノメートル(nm,10のマイナス9乗,こびと)、ピコメートル(pm,10のマイナス12乗,キツツキ)と。寸法に限らず、重量、濃度などについてもこれらの呼称が用いられ、今や環境汚染物質のニュースを通じて、ナノ、ピコが身近になっている。一方、ナノテク時代と言っても、寸法の世界ではピコメートル(pm)表示の文献は見あたらない。大のほうは地球から太陽までの距離を1天文単位(A.U)とし、海王星までは32AUとなるも、宇宙規模になるとAUでも小さすぎて不便なので、光年が用いられている。マイナス乗の素粒子の世界と、プラス乗の宇宙の世界、意外に似ているのに驚き。神秘なるかな!

 

● Report No047 / 06月15日

  世は挙げてIT時代。情報機器(FAX、DVD、CD、LCDなど)の部品部材に表示、記録、記憶のための色粉いや高機能色素が不可欠。
・感熱紙で、熱で溶けた色素を発色させる耐油性の顕色材
・鮮明なカラーを引き出すEL用電荷輸送剤、FAX用電荷移動剤
・カーボンブラックなのに低伝導性昇温抑制剤
・CD-R用近赤外線吸収色素
・インクジェット用高分散性の超微細(20ナノ)顔料、
・インクジェット用高分散性のマイクロカプセル化顔料
・DVD-R用含金属アゾ系色素 などなど
有機、無機、その複合化など各社は腕によりをかけて“色の道”に邁進中。 日本画の世界では昔ながらの自然の染料、顔料が用いられ、醸し出された独特の色合いを、ハイテク機器が忠実に写し、記録しているなんて面白い。

バイオ・ケミカル・チップ

 最近、新聞、専門誌に、ガン肝炎検査にDNAチップ、レディーメイドDNAチップ、DNA電気化学チップなどの記事が躍る。文字の如くこの種のチップはLSIチップの如く微細加工(溝、空洞など)の産物で、石英、ガラス、ポリマーなどから製作される。また微細電極も付けられるだけでなく、ヒーター、レンズ、カバーなども付き、溝を通して化学薬剤やDNA液がマイクロポンプ、インクジェット、マイクロピペットなどで注入、付着される。目的は超微量の試料で、化学・生化学的分析・培養・反応・分離・合成などやってしまおうと言う狙い。
 既に上市されているチップをみると
  3,400種DNA配列チップ   6.5万円/枚
  ラットのDNAチップ      10万円/2枚セット
  ガンDNAチップ        20万円/5回分
  酵母遺伝子チップ      5万円/枚
 いかにもハイテク、高付加価値、更にライフサイエンスがらみとなると参入ベンチャーも急増。いよいよパテントレース本番に。

 

● Report No046 / 06月08日

自己組織化(Self-alignment)へのささやかな提案

   バラバラの微小物質が規則正しく「自然に」整列してくれれば、ハイテク技術品を得るに超便利です。環境条件の整え方次第で直系14mmの孔を24mm間隔で規則正しく並べたポリマーも得られているし、金のナノ粒子をÅ(オングストローム)オーダーで並べることも出来ることが判った。
 また、0.4nm間隔で配列されている4種類の塩基から構成されているDNA、その分子溶液は1平方センチ以上に渡って均一な自己組織化構造を示すと言う。一方、ミクロン―ミリ―センチメートル領域では、たとえば光導波路形成に於いても研究が進められている。液状の光硬化性レジンに一端から光ファイバーからの光照射により、次々と光硬化が進み、硬化物の屈折率は増えるので、自ずからコア層が自然形成の物の導波路となり、さらに路が延びて行くと言う具合。
 ここで、液状の光硬化性組織物に結晶化剤を用いてゼリー化(羊羹状)したのち、光照射の工程に入るとすると…。モジュールの単純化、製作の簡便性が大幅に改善されると思います。

最大の発明

  「2000年間で最大の発明は何か?」なる本がある。ミレニアム到来を期して、J.ブロックマン氏なる出版企画の鬼才が各界の偉人たちにアンケートを求めたもの。常識的には、印刷機械、遺伝子配列の決定、コンピュータ、TVなど近代のハイテク機器が入ってくるのは当然ながら、一見へそ曲がりと思われるものもあり、人によってこれだけ物事の捉え方が変わるものかと妙に感心した。
 いくつかをご紹介したいと思います。
それは乾草だ ― どこでも馬を飼えるのは乾草のお陰だ。
それは眼鏡だ ― 40歳以下の人間に支配されるのを防いだ。
それは消しゴムだ ― デリートキー、修正液、憲法の修正条項など、
               誤りを訂正できる仕組みの全て。
それは蒸留法だ ― 蒸留酒を飲むことで人間に生ずる変成は素晴らしい。
それは籠だ ― “かご”があっての採取社会が可能になった。
それは水道だ ― 水が人間の方にやってくるから。
 さあ、あなたなら何と思われますか?

 

● Report No045 / 06月01日

ナノテクに挑む工場

 三鷹光学なる工場がナノテクに挑んでいるTV番組があった。天文台勤務を退いて望遠鏡製作に入り、数々の人工衛星搭載を果たし、時代はナノテク時代に入り、最先端のナノ計測器に注力。大企業から次世代ディスプレー開発用にと依頼され、20ナノ解像度を要求される。それを自らの目標値を10ナノと設定して世界最先端を担う。そして、レーザー光とレンズの組み合わせで見事にクリアする。職人的研究者、いや研究者的職人の気質の勝利だろう。面白いのは天文学―天体望遠鏡は何百何千光年の距離を相手にしているのに、その逆のナノ寸法(極々微小距離)を開発テーマにしたところ。自己の蓄積保有技術(人材を含む)を新たな商品に向けてそのエネルギーを付加価値/利益に転換する姿勢には学ぶところが多かった。

或る見落とし

 将棋の終盤戦での見落としや、野球での絶好調の見送りは、悔いを残す結果となる。昭和50年代、今で言うところのクリーンテクノロジーとしてのUV硬化レジンシステムの研究(と言ってもアングラテーマに近いものであったが)、エポキシ・パテ剤に触れていたことがあった。
  [エポキシオリゴマー/触媒オニウム塩/無機系充填剤]配合系で撫でられていたが、当時主力のアクリル系配合物に比べて欠点も多く、社内の注目には至らなかった。が、たまたま手元にあった軟質ポリマー微小ビーズ(何かの染料着色したもの)を配合したところ、驚くほど早く厚く硬化し、かつ脆性さも改善されていたが、車ボディーパテに試用したところ、容易に剥奪したので放棄してしまった次第(染料が増感剤機能を持っていたとは…)。実はこのところに重要な鍵が潜んでいた訳だ。
 最近、この種の技術コンセプトが浮上して注目されているとのこと。将棋の故升田九段、高野山の決戦に破れて曰く、“錯覚はだめ、よく見るよろし”と。