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● Report No070 / 11月29日

PTC百面相

 Positive Temperature Coefficient(正温度特性)を利用して、いろいろな面白いものが考えられます。例えば、カーボンインキをプラスチックフィルムにプリントすれば局所加熱のシートが得られ、スイッチ機能と発熱機能を動じに持つために、育菌保湿材、メーンブレーンスイッチなどなど。また、そのフィルムをエンボス成型にかければ、スイッチ電極をもつフェーズコンタクトになろうし、カーボン層の上に遠赤外線幅射型セラミック層を形成すれば、FIR放射フィルム・・・・・・。健康器具等も容易に可能となろう。また、熱発泡型マイクロカプセル塗付紙に発熱性カーボン文字印刷板を接触させれば盲人用プリントも出来そうだし、カーボン層の上に表示素子を印刷すればテープ状湿度測定具も得られよう。かようにPTC現象を持った材料を基盤に付すと全体として新しいものが生まれてくるのは面白い。
  「PTCを子にすれば、親の基盤は百面相」

μCPとInk-Jet

 μCP(マイクロコンタクトプリント)はフォトレジストで作成したパターン上でPDMS(シリコンゴム)のスタンプを形成し、機能性インク(SAM)を基盤にスタンプするプロセス技術、Ink-Jetは文字通りインク材を細孔ノズルから吹き出してパターンを形成するもの。まずインクジェットが印刷分野で先行。更なる超細密度の有機ELどっとプリントも視野に入ってきたようだ。一方、1994年にDr. WhitesidesによりμCPが発表されて以来、ミクロン〜ナノ領域のパターニング形成技術として徐々にインクジェットと競争関係に入るように見える。μCVPの場合、基盤が金、銅などの場合、インク材としてメルカプト化合物を用いると簡便なレジスト膜が得られるし、また端末フルオロ基のカップリング剤を用いると親/疎水性面パターンが得られるため、高能率でマイクロ凸構造形成が可能となった。近くはITOコートした電子ペーパー(E.INK Co)や、燃料電池電極としてのナノカーボンチューブパターン形成も現れた。また、SAM膜がVUV(真空紫外線)では励起分解するので、露光レジストとしての扱いが可能となり、ウェットプロセスによるパターン転写 ― 例えば無電解メッキパターン形成も容易となってきた。さあ、吹き付け方式かスタンプ方式か、利用部位とインク材質によって勝ったり負けたり。版の必要性有無の違いがどう出るか注目レースの一つだ。

 

● Report No069 / 11月22日

木の精油

 檜の風呂桶、杉の木カンナ屑入れ日本酒、などは無意識に木の精に触れようとしている日本人の常で、今では木片の水蒸気、蒸留でフィトンチッドの液体化を商業的にするようになった。台湾檜、青森ヒバなど、殊に間伐材の有効利用を図っての事業化とか。その効果も身体的には自律神経機能の正常化、皮膚炎用、アレルギー予防回復、消臭などであったが、近年はエスカレートして
・ヒバオイルを水溶性化変性加工して生鮮青果物の鮮度保持材
・銀杏の葉のエキスを冷え症用に
・トド松のエキスをダニ防除剤に
・ヒバ油を防虫、白蟻防除に
・ブナの芽から皮膚細胞の保全剤に
・柿の葉から血管拡張剤 などなど、次々と出現。
 これらの効能も「自然」に教えられたもので氷山の一角だ。最近、抗生物質でも効かないMRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)に効く、スーパー・ウルトラテルペン油が発見されたとのこと。まさに魔法の一滴。自然から素直に学ぼう。

PTC分子束

 面状発熱体は文字通りシート状だ。大は道路、屋根の融雪剤から鏡台の曇り防止、化学分析機器の局所加熱に至るまで、用途は広い。発熱材たるニッケル合金抵抗体などをポリマーシートやシリコンゴムなどで覆い、端部に電極をつけて作る。一方、発熱回路を組まずとも出来る[ポリマー/導電性粉体]系シートは、通電発熱させると徐々に湿度上昇し、ポリエチレンの場合約80℃前後のところで、それ以上昇らなくなる。これはPTC(Positive Temperature Coefficient- 正温度特性)と言い、特定の温度に適した時、急激に電気抵抗が上昇する特性である。このメカニズムは温度上昇に伴い、ポリエチレン分子の束がゆるくなり、隙間が出来、その間に連なっていた導電粒子同士の連続性が失われてしまうものだ。この現象は、実験するまで昔は判らなかったらしい。導電性粉末としてカーボン、金属ファイバーチップなど多用されている。「付いた子(炭素粒)を熱さで離す分子束」。温度センサー機能を自然に、自動的に身につけている材料も、一種のハイテク材ですね。

 

● Report No068 / 11月15日

有機EL素子の封止

 液晶ディスプレイ(LCD)時代に彗星の如く登場した有機ELディスプレイ。2002年にはフルカラーが出て市場は急速に膨らむと市場関係者は見ている。これは薄型、軽量、低消費電力、高速応答性、広視野角なる特徴を持つとなるとノートPCや車載機器にはうってつけだ。しかしながら技術的には研究の余地が多々ある。特に発光素子の耐久時間、外部からの水分・湿気に損なわれ致命傷となる点などだ。よって各社素子の封止技術の開発に注力しつつある状況。ここにいくつかをご紹介(社名略す)。
カバー方式   ・カバー内部に酸素吸収材の形成
          ・カバー内部に撥水性ワックス充填
          ・カバー内部を蛇腹構造とし補水剤配合粘着コート
          ・カバー内部に吸着粒配合のシリコンゲルのポッティング
          ・カバー内部に吸着剤を担持させた多孔質金属を磁力固定
          ・カバー内部に水分を吸収してO2を発生させる薬剤を収納
          ・カバーシール部にCr膜形成しYAGレーザーにてガラス融着
CVD方式等  ・有機CVD(ポリパラキシリレン)+Al蒸着
          ・撥水性フッ素コート+金属粉入りコート剤
          ・カバーガラス面にPVDによる吸湿性BaO膜の形成
 同じ山頂を目指しながらかくも多様な登坂ルートの開拓。どのルートが楽に山頂に着けるのか興味津々だ。飛び入り歓迎してくれるかな?傘(カバー方式)をさすか合羽(CVD方式)を着るか、いや別の雨具はあるかなあー?

森林浴

山の修験者が厳しい業に耐えられるのも精神力以外に意外にも殺菌力と覚醒作用のある山独特の空気−フィトンチッドのお陰と言われる。ロシア語でフィトンは植物、チッドは生物を殺す能力を指すとか。この樹木から揮散した浮遊物は、当然さほど分子量は高くない。鉱物性揮発油、例えばガソリンの如く植物からも蒸発、揮散、昇華して来る。それを植物精油と言う。油絵の薄め液、テレピン油を想像する方もおられよう。この精油は香りを放ち、成分的にはピネン、酢酸ボニール、リモネン、テルピネオール、オキシドールなどで、化学構造的にはイソプレンが2個ついたモノテルペン、3個ついたセスキテルペンなどだ。ひとくちにテルペンと言っても数十種あるくらい、樹の種類によって変わり、樹木から出たテルペン類は空中で部分酸化する際に現れるマイナスイオン物質の作用が身体によいとされている。それが今日言うところのアロマテロピー効果で、精神安定、リラックス、消臭、皮膚殺菌などその効用は広い。味もない文章ですが香りだけ感じでいただければ幸甚。

 

● Report No067 / 11月08日

 焼物に使う釉薬(うわぐすり)の話を聞きました。
 灰にも火に融けやすい灰と融けにくい灰があるとか。その理由は前者は石灰分(CaO)を多く含み、後者は珪酸(SiO2)と酸化カリウム(K2O)を多く含んでいるからと。一つの草木でも灰になったときの、板幹、実では成分が違い、更に伐採時期や土壌によっても異なると。稲本科の植物はSiO2が多く、葦科はCaOに富むと。これらの灰を釉薬の配合原料にするには「水を加えて、篩(ふるい)に通して不純物を除き、上澄みを捨て、水を加えて」の何回もの繰り返しの後、袋に入れ水分を絞り、吊して乾燥。さらに、袋から取り出して天日乾燥する。これに陶土や骨灰を配合して完成である。あの天目茶碗の青黒、高麗の青磁、仁清のクリーム色など、天然の灰を秘めたる行程で生成、配合の粋を経て、器の表面を飾る釉薬は死せる灰が次の世で示した最高のパフォーマンス。近代セラミック光学の装飾の方々はご存じとは思いますが、工業品か工芸品か、その境界は・・・と気になります。

異方導電性接着剤

 マイクロカプセル化した導電性銀(金)フィラーを接着剤に分散させて、異方導電性の機能を付与した接着剤である。液状もあるし、フィルム状にしたものもある。ファインピッチの接続に不可欠な材料になっており、電気電子機器の部品の組立に欠かせない。基板電極部のみカプセルは、その表面の0.01μの絶縁層が破れて道導電ビーズに変身するというもの。これとは別に樹脂のマイクロボールにメッキした方式もある。さて回路もより細かになってきて10〜20μピッチとなると、マイクロカプセル方式では難しくなる。そうなると、超微細導電ボールを何らかの方法で電極部に位置させる(ポジショニング)方法が探られ始まっている。マイクロマシンの世界では、3μのビーズを重層させ接着させる技法も開発されている。商業的には超高速化しなければデバイス実装などには使えない。また一方で、SAM−μコンタクトプリント技法で微細電極形成も進んでいる。素子だけでなく電極も接合材も微細になってどんどん人手の作業領域から遠のいていく

 

● Report No066 / 11月01日

角(つの)

角(つの)というと、花嫁の角隠しという、おめでたい物もあるが、角を折る、角を出す、角つき合うとか、とかく角(かど)立つ意味の語句が多い。この角も大は、トルコカッパドキア地方における茸状尖塔上の、奇岩の角(つの)の林立だ。これは火山灰堆積の凝灰岩の雨水浸食による自然造形物だ。小の角は金米糖か。前者は地球的エッチングにより生成した物であり、後者は積層成長型により形成されたもの。更に小さな、いや微細な角の形成に最近の2例をご紹介しますと・・・。
(1)面発光レーザーの活性領域は通常レーザーに比べると非常に薄いのでレーザー発振が難しいが、発振機の光損失を小さく保つことで超微小角柱群(実際にはミクロンサイズの円柱群)が得られる。これはエッチングプロセスの一種か。
(2)金属酸化物の角に、さらに角を2個以上生やした角で10ミクロン角の面積に何千個もの群落を形成する方法は一種の積層(?)成長法か。
「角(かど)立てないで、角(つの)建てて」の時節かな・・・。

フッ素

 周期律表第17族のフッ素と言えば、昔は虫歯予防、その後はフライパン、クーラーの冷媒、近頃ではオゾン層破壊―地域温暖化、それに基づくモントリオール議定書による代替フロン全廃問題……。一見悪役に見えるフッ素(F)も最新化学では不可欠の元素。耐薬品性、耐熱性、撥水性、生理活性などの機能により、広く利用され世界的には拡大の一途だ。例をあげるならば半導体装置工程で用いられるクリーニング、エッチング剤、医薬農薬の中間体としての化合物(制癌剤)、電池用電解質、光学用の新種レンズ、ポリマー用発泡剤等々。現化学辞典によれば、F2は特異臭のある気体、猛毒、強い腐蝕性を持つ刺激物、と可愛げのない記述。ところが同辞典には38項に渡って記載のあるほど重要物である。ハロゲン元素四兄弟(F、塩素、臭素、決素)の中でもClと並んでその動きは活発だ。ハロゲンは樹で言えば“葉っぱ”にあたる。根、幹、枝にはなり得ない宿命を持つ。単独では暴れん坊の不良児で、愛称のよい樹枝に付くとその特異性をいかんなく発揮する。俗世にも当てはまるようだ。

 

● Report No065 / 10月26日

挑戦

技術開発の世界では、一般に専門家たちが“それは無理”とか“それは駄目”と言われているものほど、成功するとその見返り成果は大きい。人は得意とする自己の領域においては他を表向き肯定しつつも心底では否定的心情になることから、ビッグチャレンジを目の当たりにするとうらやましい気持ちで驚きつつもそれは無理だと断じてしまう。故にもし解決・完成すると普通ではないから「超」がつくことになる。現在では超がつかないと注目されない。注目されなければ付加価値もつけにくい。そこで企業、国家間でしのぎを削るようになる。かつての国家プロジェクト・超SLI研究、第五世代コンピュータなどもいつの間にか生活に入り込み、いまやナノテク競争で総力戦の様相を呈している。無理・駄目の単語を消却して邁進するしかない。“こうしたら駄目だった”との研究も立派なリポートだ。

光の手綱を捌く(二)

 有機EL(発光素子)の電荷輸送層として有機半導体の薄膜が広く利用されているが、分子構造にさらに量方性付与と言う細工を施すと液晶のような分子配向性をもつ物質になるとか。この種の物質がどの様な分野で利用され得るのかが近刊専門誌にありましたのでちょっとご紹介します。
1.高速の光応答型光センサー
フラーレン(C70)を分光増感色素として組み合わせると数マイクロ秒以下の応答速度を出すと言う。
2.電子写真感光体
  感光体層の表面を絶縁性フィルムでカバーすることにより流動性材料でも形成は可能となる。
3.液晶材料を用いた有機EL素子
  液晶分子フェニルナフタレンの配向に伴って配合されている発光色素クマリンまで配向し、備光発光することから、液晶材料そのものを光らせることが出来ることが確認された。

 このレベルの研究となると単に馬(光)の手綱を捌くどころか馬(光)そのものですね。

 

● Report No064 / 10月18日

蛍光(2)

青色ダイオード素子の開発者の海外流出と特許権ロイヤリティ訴訟が話題になっている。昔、陶師柿ヱ門が独自の柿赤色を出そうと上薬配合に心血を注いだ如く、新しい発光剤(材)の工夫は今昔を問わない。フォトニクスの分野では赤色の蓄光型蛍光体が開発され(九州大学)、これで三原色が揃ったとか。その結果、今まで単なるカラーマーカー的表示材としての利用に限られていたものが、ハイテク型表示器への変身ができると言う。上述の蛍光体はマンガンイオン含有ゲルマン酸塩化合物なるものだと。一方、自動車の外板塗料にも蓄光型の開発が進められており、アルミナ・ストロンチウムを基にした物は発光時間も6時間に達すると言う。
 ビル壁、路面表示、電柱などに用いられると街頭が不要になる。まるでCG世界のような色具合だろう。しかし、一晩中明るいのは困る。そうなるとスイッチ型蓄光材の出現もありうるかもしれない。

光の手綱を捌く(一)

光の時代、それは波であり粒であり超々高速であり、多色で透明である。直進性があり、また熱に左右されない優れものだ。反面、コントロールし難い厄介ものだとも言える。光の手綱をポリマーで造ろうとの研究が盛んだ。ちょっと覗いてみよう。
1. 高分子(20〜30%)と液晶(70〜80%)配合した複合体は光散乱性LCDや、液晶に少量のモノマーを入れ高分子化させた高分子安定化LCDの研究。
2. 線香花火のような、放射状に分子鎖を段階的に延ばす球形構造の三次元構造体デンドリマーの非線形光学特性の研究
3. 有機EL、とりわけポリマーEL材料、殊に色素含有ポリマー、マルチカラー素子などがディスプレーのみならず照明材として期待されている。
4. コリステリック液晶。画像記録能において新しい方式とされる中分子液晶という新領域材料が注目されている。
5. フィルムの上に積層して形成される光学量方性薄膜型ディスコチック液晶も面白い。
6. 液晶ゲル。環境に優しい柔軟な材料として非共有結合型物質(ソフトマテリアル)としての利用範囲は広大。

機能が目で見えるポリマー研究は楽しいことでしょう。それだけに他との峻別の厳しさにも直面することになると思います。

● Report No063 / 10月11日

蛍光(1)

「蛍雪時代」誌と、当時普及しだした蛍光灯の下での勉強は高校時代の思い出だ。蛍の光はルシフェリンなる物質が酵素の作用での酸化による発光現象だと言われている。富山湾のホタルイカも有機系物質による自発光の機能を持っている。ちなみに洗濯用洗剤の黄ばみカバー用の蛍光染料スケルベンも有機系だ。蛍光灯はフィラメントから放射熱電子が蛍光管に封入されたHg粒子に衝突し、紫外線を発生させ、これが管内面にコートされた蛍光物質を刺激して発光する仕組みらしい。エネルギー変換効率25%の蛍光灯も昆虫ホタルの97%の足元にも及ばない。最近セラミック系発光材が表示器分野で盛んに利用されており、太陽光でエネルギー励起をなし(蓄光)徐々に光を放出する仕組み。超高効率蛍光灯や、高輝度、長時間光放出の蓄光プレートの下で学問に勤しむ環境は目前にあり・・・と希う。それは地球温暖化対策にも効果的だろう。

超伝導

1980年代、高温超伝導物質の発見を機に、各国でフィーバーが興り、日本でも超伝導工学研究所が発足、官民挙げての期待分野となった。その後、一面トップ級のニュースがないので気にしていなかったが、地球温暖化、エネルギー問題で気になって記事検索してみた(H13 7〜8月分)。
・超伝導工学研究所の特許出願はのべ400件
・超伝導現象が目で見えた(東工大)
・米国 2004から超伝導線材の量産に入る
・米国 1000馬力モーターの試作完成、5000馬力を計画中
・金属系超伝導物質(2ホウ化Mg)(青山学院大学発見)
・超伝導電線の新製造法開発 テープ塗布焼成方法(フジクラ/中部電力)
地味な開発活動をコツコツと積み上げて、材料面ではリーダー的地位にある日本の研究陣。電線と次世代素子と期待されているSFQ(磁束量子回路)などの2005年からの実用化を目指して懸命の努力をしている姿が浮かび上がった。MRIやリニアモーターで満足せずに、「核融合技術と超伝導とスーパー素子」が揃うと幸せ倍増と期待するところです。頑張れ関係者!

 

● Report No062 / 10月04日

CFRP(EB成型)

 構造材料として代表的なCFRP(カーボンファイバー強化プラスチック)のマトリックスレジンの硬化にはオートクレーブが用いられているが、雰囲気熱/熱伝導/重合反応では、超肉厚もの高品位製造は難しい。そこで、先進各国ではプリプレグにEB(電子線)照射する研究が盛んだ。日本ではホウ素系、光カチオン重合型触媒を用いて、光/熱・硬化技術も出現している。EBエネルギーによって、秒〜分単位で、50〜150ミリ厚の硬化物が得られてあり、特に航空宇宙分野では重要プロセスになりそうだ。当然、兵器への転用が可能なことから、最高レベルのジェット戦闘機の材料として、密かに注目されている。それは、カーボン繊維の三次元繊維を用いた耐熱性プリプレグは、飛行機の運動特性を飛躍的に高めるからだ。
 色は黒くとも、(白い)平和に利用されることを願うばかり。

光学活性体

 文字から受けるイメージは、新規の光学素子に関わる物と感じられますが、実はキラル化合物と称する有機化合物の一種。人の右手と左手のように対象構造を持つ物を指し、分子式は同じなのに、光学的には左手型(L)と右手型(D)とあります。そして元来、人の身体構成の生体高分子自体が光学活性体であることより、薬としての効き目はL+Dではなく、LかDかと言うことが解明されてきており、世界の新薬の半分以上がこの光学活性体型とのこと。ところで、L or Dのみの合成、あるいはL+DからのL or Dの分離などの技術はかなりのハイテクに属するも、幸い日本企業群が中間体の供給に主導的立場にあるとか。
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 右手で投げれば大リーグボール、左手ではデッドボールは天地の開き。ところが、打者によっては左手の方が有効ということもある。こんなところにも技術とチャンスが存在するのもおもしろい。更には医薬品のみならず、農業、光学、高分子の分野での可能性も想定したいところです。キラリと光るキラル化合物は今や光燦々(サンサン)。

 

● Report No061 / 09月28日

プリン状・ゼリー状

食品にはプリン・ゼリー状態のものが多々ある。生卵の白身、ゆで卵のプリプリ、ジャム、昆布のぬめり、蒟蒻、豆腐などなど。当然何れも天然高分子、それもゲル。今では何万トンも生産されている超吸水性アクリルポリマー(SAP)はその利用は拡大の一途。このゲルもゾル状態への転移が温度やpHで可逆的に起こるものも多く、化学には共有結合・クローン力結合・水素結合・配位結合などのなせる技から来ている。この転移の時に応力が発生するのでそれを利用しようと研究が進められている。DDS(薬剤放出システム)、人工筋肉、ケミカルバルブなど。言うなれば、熱、電場、磁場などの物理条件や化学反応(光異性化、酵素反応、錯体形成)を引き金とする駆動を利用するもの。例えば電気刺激で伸張・収縮する静電現象で多孔性の膜が開いたり閉じたりする流体コントロールバルブや形状記憶ゲルによる人工弁など。ふにゃふにゃしたものは誠に人体に類似・適合しているものならば、自然界のふにゃ物を参考にヒントに「画期的ふにゃ物」を案出しましょう。

小型部品の移動・搬送

小型部品の生産・移動・搬送・保管において、その収納器たるトレー、函(箱)のみならず、常に次工程のための収納方式でなければならないと、エンボステープパッケージングが生まれた。大量生産方式−自動化−ロボット類の数々は偉力を発揮した。が時代は市場ニーズの多様化に伴い、大量生産方式は所謂“大男総身に智恵のまわりかね”で小回りが利かない。そこで業界は急速にセル生産方式に移行し始めた。少量・中量生産方式だからと言って非自動化としたところ生産コストに響く。そこで各社は高効率のセル方式の考案にしのぎを削ることになる。新規性のトレー・箱・テープ・その移動方法など、ここにまた市場ニーズが存在する。さあ材料屋、プロセス屋さんたち、知恵を出そう。

 

● Report No060 / 09月21日

マイクロ障壁

FPDの生産技術、殊に最近注目されていますPDP(プラズマ・ディスプレー・パネル)の最重要部品としての脊面基板のバリアリブ(障壁)形成方法には、プレス成型、スクリーン印刷、感光性ペーストの技法が開発され、実用化されています。が、ここにもソフトリソグラフ・プロセスが新たに現れました(ソフト・リソについては、SAM、ナノパターン、サブミクロン転号、或るソフトリソ技術などにて既報)。と言うのは、ガラスフリット/UV硬化レジンペーストをPDMSの雛型に充填し、UV硬化後、基板に被せ転写(転層)する、一種のマイクロトランスファーモールドなのです。
 PDPとは別に、電気泳動型ディスプレーとしての電子ペーパーの着色粒子用構造障壁への利用もしかり、ソフトリソグラフィーは極めて実用的と感じられていましただけに、この開発者の頭脳には技術障壁がなかったのでしょう。

シール機構付部品

ある部品(部材)にシール機構(ガスケッティング)を付与する場合、液状シール剤(主に硬化性シリコーンゴム)を用いてガスケットビードの形成を図る方法が一般的である。実践方法には4通りある。
・FIPG (Form in Place Gasket)
  液状Siを吐出装置等によって、ガスケットビードを形成させる(湿気硬化性Si)。嫌気硬化組成物の場合は、スクリーン印刷が可能となる。
・CIPG (Cured in Place Gasket)
  FIPGと同様に形成したシール剤ビードを熱・光エネルギー等によって硬化させた後に、面接合して用いる方法。HDDのケースへの適用が始まった。
・MIPG (Mold in Place Gasket)
  ビード形成用の型を用いて駆体とともに一体成型する方式で、よく知られている。Hy・MOLDはこの一種である。また、精密部品に適している。
・IIPG (Injection in Place Gasket)
  実用レベルには未だないが、フランジ隙間にガスケット剤を注入する方式である。完成すれば利用範囲は広い。

● Report No059 / 09月14日

有機磁性材

磁石と言えば金属、セラミックが普通。でも渡り鳥や回遊魚の脳の部分の地球磁場に感応するセンサーはどうも有機系かも。超々微弱磁力 を検出するNMR(核磁気共鳴吸収装置)による物質の微細構造の解明などから、これらの作用秩序が判ってくるだろう。そこで人工的に有機磁性材を創生利用しようと研究が進められている。テトラシアノエチレン化合物などのほかに、
・蛋白質に鉄酸化物を結合させ、外部から磁石でその分子の移動を計ったり、磁力のレベルを変えて振動を起こさせ、発生する熱でガン細胞を殺そうとするもの。
・ポルフィリンにアルカリ金属を結合させたり、磁性金属の微粉子をポリマーで被覆するカプセル化や、架橋構造を有するポリマーとその中にコロイド状磁性剤を含有させたり
 など。 人の体内にある鉄の総量は3〜4グラムでその65%はヘモグロビンとして赤血球中にあり、残りの大部分は骨髄、肝臓などに貯蔵されている。それも蛋白質と結合した有機磁性材の形で。磁気治療器の効き目どころはここにある訳。納得。

微粒子の配列

ハイテク時代に入って気づいたことに、球状微粒子の配列に関する技術情報が多いのに改めて驚かされる。
・半導体素子実装における電極とのBCA(ボール・グリッド・アレー)
・液晶パネルのガラスクリアランス保持のためのスペーサービーズ配布
・異方導電膜形成のためのミクロン級金メッキ粒子の配列
・電極間に粒子分散溶液で満たして得られる3次元ビーズ配列法
・電子ビームやイオンビームにより基板上に帯電像を描き、逆帯電の微粒子を静電気力で帯電像上に配列させる集積画像形成方法
・小粒ボール型LSIとその連結アレー素子
・マイクロ光バイパススイッチにおいて、光ファイバーからの可動ミラーアクチュエーターと組み合わせたボールレンズの配列
・マイクロレーザーの電磁波閉じこめのための、蛍光色素修飾ポリスチレンマイクロビーズ(ナノ級)の整列

・SAM(自己組織化膜)ならぬSAMビーズ(Self-Assembly-Micro-Beads)は小粒でもピリピリ辛い目立つ存在になりつつある様だ。

 

● Report No058 / 09月07日

カーボンナノチューブ(Carbon Nano Tube)その2

カーボンナノチューブ(CNT)のパターニングの動向を眺めてみると、やっぱりなるほどと思われる技術が多々ある。
・金属膜上に設けられたパターン化絶縁層にCNTを散布して金属膜上のみに付着させる ・パターン化粘着シートにより、選択的付着剥離する
・パターン化粘着シートをマスキング材として用いる
・CNTをレジスト剤に配合して感光 − 現像して得る
・CNT生成生長装置内で選択的合金パターン上に直接形成することによりフロック加工層の形成
・パターン化した低融点金属が溶融し、その上に堆積したCNTは基板に良く付着する
 一方当方たちは次なるプロセスを案じております。
1.基板上に蒸着合金層を形成し、
2.ソフトリソグラフ方式でPDMS版によりSAMパターンを合金層に形成せしめ
3.現像液によるパターニングおよびSAM層の除去を為し
4.CNTの選択的付着工程 へと。

細菌のオモシロニュースを少々

・IH(電磁誘導加熱)米炊飯器で底面に取り付けた金属リングから30〜100kHzの超音波を加えて、水の吸収効率を高め、甘み、粘りを引き出す。超音波が隠し味とは。(三菱電機)
・Mg(マグネシウム)とCu(銅)の小片を隣接埋め込んだ歯ブラシや石鹸が出現。水中で電池形成され、それが洗剤効果を発揮するとか。皮膚、粘膜に優しく、環境無汚染なので旅に便利。KIOSKも喜ぶ。
・コンピュータウイルスを人工培養して、対処法を立てようとするコンセプト。一旦CD−Rに書き込んで、人工環境に複写することでしっかり対策が探せるという。ネット(本宅)から切り離した別宅で調理するので、たとえ暴れても本宅には影響を及ぼさないとのこと。(東京理科大学)
・機能性樹脂を体内で生成する新しい最近を発見し、更にそれを効率的に培養する技術で得られるのはポリエステル系樹脂だと。それもフッ化系やシアノ化系のポリエステルになると異方導電性や加電下で厚さが変化する性質など期待できる。2005年には実用化レベルへとのこと。(キャノン)
・赤血球(直径8μ)より小さい牛の立体彫刻(ラピッドプロト)を得た。液体レジンに2方向から赤外線レーザーを集中させるとその部分のみ硬化する現象を発見し、それを実証したもの。(大阪大学)